【角谷浩一氏&プチ鹿島氏 ②】:野党のふりした隠れ自民議員増で野党への不信感大きくなる可能性も
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【角谷浩一氏&プチ鹿島氏 ②】:野党のふりした隠れ自民議員増で野党への不信感大きくなる可能性も
防衛増税や旧統一教会、閣僚のドミノ辞任…。岸田文雄首相は昨年の多くの宿題を2023年に持ち越し、新年を迎えた。今年の永田町はどんな動きになるのだろう。政治ジャーナリスト角谷浩一氏、新聞読みの名手、プチ鹿島氏による新春永田町展望の後半編では、野党の新しい「顔」の話題も飛び出した。【取材、構成=中山知子】
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角谷氏 野党では、立憲民主党の「ポスト泉健太代表」に、野田佳彦元首相(65)の名前が出ています。
プチ氏 去年のあの追悼演説の影響ですか
角谷氏 それがいいという人もいますよね。野党の総理経験者の中では、野田さんはまだ若い。今の立民の中枢も野田政権の人。そして、政権を担った経験がある人を前面に出すことが、泉さんよりは安定しているという評価にはなってくると思う。
プチ氏 野田さんは、そもそもなぜ立憲民主党にいるんだろう、自民党にいてもおかしくないという人。もしそういう代表が立民に誕生したら自民党との関係はどうなりますか。
角谷氏 選挙区がぶつかるから、現段階ではいっしょになることはありませんが、極めて協力的になることはあるかもしれない。消費税増税の3党合意を最後まで守ろうとしたのは野田さん。野田代表となら話ができると自民党が思うことは、あるんじゃないかと思います。
プチ氏 国民民主党の玉木雄一郎代表の入閣情報はどう読めばいいんでしょう。
角谷氏 今は、つぶそうとするためでしょう。自民党に今、ウエルカムの雰囲気はまったくないし、野党だから予算に賛成して喜ばれても、もし自民党に入ったら賛成するのは当たり前。今までの売りは何も通用しなくなる。それでも水面下の折衝は続くでしょう。
プチ氏 野党の支持率は変わりませんね。
角谷氏 野党再編は今年、起こり得ると思う。春の統一選挙後、一気に野党再編は動くと思う。この統一地方選も、いつもどおりという感じではないと思う。昨年末の茨城県議選で、自民党は現職が10人落ちて幹事長まで落選したが、野党はまったく増えていない。自民党で出ないで無所属で出て当選し、自民党会派に入るから、議会上は問題はない。でも自民党の名前を使ったら勝てないというのは、肌感覚としてあったと思う。これが今年の統一地方選にも、どう影響するのでしょうか。また、旧統一教会に世話になった地方議会が多くあるらしく、その人たちが、「縁を切る」といわれて推薦しない、応援しないよとなった場合、無所属で出てその後自民党に入るなら、議会は会派制なので結局、主流派になったりする。野党のふりをして自民党とほとんど変わらない人がいると、こんなことばっかり起きる可能性がある。有権者はがっかり感が増えますよね。野党への不信は与党より大きくなるかもしれません。
プチ氏 今年中に自民党安倍派の後継者は決まりますか。
角谷氏 後継者次第で、へたをすれば4派に割れるともいわれる。萩生田光一さん、世耕弘成さん、西村康稔さん、福田派の系図で言えば福田達夫さんもいる。自分が総裁候補と思っている人がいちばん多いのが安倍派です。「党人派」という意味では萩生田さんかもしれないが、旧統一教会の問題がありますからね。
プチ氏 なぜそこまで評価が高いのでしょうか。
角谷氏 派閥の大先輩でもある、森喜朗さんの思いもあるでしょう。ああいう党人派タイプは自民党にも少なくなってきていて、重用されるようになっている。ただみんな帯に短したすきに長し。結局どんぐりの背比べ。党内より派閥内で戦い、エネルギーを使ってしまっている。
ところで、今年は札幌五輪の行方が決まります、札幌の市長選が終われば一気に動くと思っています。
プチ氏 あれも、税金の話でもありますよね。
角谷氏 五輪汚職の公判が開かれているのにまたやるのかと。IOCなどは喜ぶかもしれませんが、すごいお金をかけたんじゃなくて、とてつもないお金がどこかにいっちゃうという「ブラックボックス」をつくっている。小池百合子都知事があれだけ嫌ったのに、小池さんも黙っている。
プチ氏 東京五輪は何の検証もされていない。森さんが本当に政治力があるのなら、もう1度、組織委員会を再結集して全部調べさせてという政治力は働かせないのでしょうか。再検証しないといけませんね。
角谷氏 日本は、昨年のW杯もそうでしたし、今年はWBCも絶対に盛り上がる。そういうのが分かっていながら(不正を)やる人たちは、ほんとうにアスリートに失礼です。
プチ氏 再発防止うんぬんといわれますが「呼ばない」「やらない」はいちばんの防止策ですよね。
角谷氏 もし札幌に決まってもまた「お金が足りない」とかが始まるかもしれない。体裁は整っているように見えて裏ではいろんなことがあって…ということが続けば、政治がいいか悪いかではなく、超法規をつくり続けているようなことが問題になるかもしれません。(おわり)
◆角谷浩一(かくたに・こういち)
1961年(昭36)4月3日、神奈川県生まれ。日大卒。テレビ朝日報道局などを経て現職。永田町や霞ケ関に幅広い人脈を持つ。中央政策研究所主任研究員。TBS系「ゴゴスマ」コメンテーターなどメディア活動のほか映画評論家の顔も持ち、年間300本を見る。
◆プチ鹿島(かしま)
1970年(昭45)5月23日生まれ。長野県出身。時事ネタと新聞読み比べ(14紙を購読)で知られ、政治、文化、スポーツなど幅広い分野から社会を読み解く。コラム連載は月間17本で、メディア出演多数。監督したドキュメンタリー映画「劇場版 センキョナンデス」が2月18日に公開。
元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・政局・岸田政権】 2023年01月03日 08:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。