【社説】:ガーシー氏懲罰 国会議員の職責果たせ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:ガーシー氏懲罰 国会議員の職責果たせ
国会は「国権の最高機関」であり、唯一の立法機関だ。議員自ら職責を否定することはあってはならない。
NHK党のガーシー(本名・東谷義和)参院議員が正当な理由なく国会欠席を続けているとして、参院は「議場での陳謝」を科す懲罰を与野党の賛成多数で可決した。
除名、登院停止に次いで3番目に重い懲罰である。同氏が応じなければ、与野党は再び懲罰を検討し、除名とすることも視野に入れているという。除名されれば議員の身分を失う。
ユーチューバーとして知られていたガーシー氏は昨年7月の参院選で初当選した。擁立したN党は「芸能界の悪事を暴露する」などと訴えて話題を集める戦略を展開し、1議席を獲得した。
だが当選後もアラブ首長国連邦(UAE)などに滞在し、一度も登院していない。さまざまな課題を議論し、議案などの採決に加わるのが議員の役割であり、それを放棄するのは言語道断だ。
懲罰を巡っては立憲民主党から即時除名を求める声もあった。だが議員の身分に関わる問題であり、不当な排除にならないよう慎重さは求められる。いったんは態度を改める機会を与える今回の決定は妥当だろう。
ガーシー氏は議員本来の仕事をするべきだ。言いたいことがあるなら、国会で堂々と主張すればいい。そのための議席ではないか。
一方でガーシー氏は、動画投稿サイトで著名人を脅迫するなどした疑いがあるとして警視庁から任意の事情聴取を求められている。同氏は国会欠席の理由に不当逮捕される恐れを挙げていた。
国会議員には国会会期中に逮捕されない不逮捕特権がある。不当というなら、なおさらすぐにでも帰国して説明するのが議員の責務だろう。捜査から逃げていると見られても仕方ない。
身勝手な態度を続けながら、本人には多額の議員歳費が支払われている。これでは国民の理解は得られない。 参院本会議ではN党の浜田聡政調会長が本人の代わりに懲罰に反対する弁明を行い「参院選で海外から議員活動をすると公言して当選した」と述べた。具体性も伴わず、筋の通らない言い逃れである。
ガーシー氏は懲罰の決定を受け、帰国して陳謝に応じる方向で検討すると周辺に伝えたというが、実際に帰国するかは不透明だ。N党は有権者の負託に応え、公党としての責任を果たすべきだ。
元稿:京都新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2021年02月23日 16:33:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。