【社説①】:飲酒運転 根絶への取り組みを緩めるな
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:飲酒運転 根絶への取り組みを緩めるな
飲酒運転やそれに伴う事故は、当事者はもちろん、家族ら周囲にも計り知れない損失を与える。根絶へ向けた取り組みを緩めてはならない。
岩手県二戸市で今月、酒気帯び運転容疑で検挙された市職員が懲戒免職処分になった。福井県でも6月、警察官が酒に酔った状態で車を運転したとして懲戒処分を受け、依願退職している。
飲酒運転に伴う厳しい代償を、改めて自覚する必要がある。
人口減少が進む地方では特に、車が生活の手段として不可欠な存在であることから飲酒運転が起きやすい環境にある。
幹線道路沿いには駐車場を備えた飲食店も多く、「1、2杯くらいなら」と酒に手を出す人は少なくない。冠婚葬祭の場に車で来て、出された酒を断り切れずに飲んでしまうケースも後を絶たない。
こうした時は、タクシーや運転代行サービスを利用したり、帰路で運転する人を事前に決めておいたりすることが鉄則だ。
ただ、運転代行の車両台数は、コロナ禍による利用減で、減少傾向にある。2019年に2万3720台あったのが、昨年は1万7265台と3割近く減った。
タクシーや代行車がつかまらないからといって、飲酒運転が増えることがあってはならない。本人はもちろん、同行者や飲食店も注意喚起すべきだ。
福岡県は、飲酒運転を目撃した時の警察への通報を条例で義務化した。昨年の通報は2050件と過去最多で、検挙数の約1割は通報が端緒だったという。
千葉県は、車で来た客に酒を提供し、県の再発防止命令に従わない飲食店に、5万円以下の過料を科すことや店名の公表を可能とする独自の条例を定めた。他の自治体も参考にすべきではないか。
全国の飲酒運転による死亡事故数は、12年の258件から昨年は120件と半減している。
飲酒運転の車に追突され、幼児3人が死亡した06年の事故を機に、酒を提供した店の責任者らや同乗者も刑事罰の対象とする厳罰化が進んだ効果だろう。
それでも、飲酒運転による事故は絶えない。昨年は約2100件発生している。根絶には粘り強い取り組みが必要だ。
アルコールは少量でも脳の機能を 麻痺 させ、飲酒運転の死亡事故率は飲酒していない場合の約7倍に上る。酒を飲まない人も、その危険性を理解し、社会全体で「飲酒運転は絶対に許さない」という意識を改めて共有したい。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年08月21日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます