【それでもバカとは戦え・11.12】:公共の電波で垂れ流される星占い…「いかがわしさを軽視する社会」がカルト暴走を許容した
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【それでもバカとは戦え・11.12】:公共の電波で垂れ流される星占い…「いかがわしさを軽視する社会」がカルト暴走を許容した
独立行政法人国民生活センターの資料によると、全国の消費生活センターなどには、占いサイトやアプリに関する相談が年間1000件以上寄せられており、2019年度以降、増加しているとのこと。
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公共の電波で伝えるものでは…
相談事例を見ると〈「必ず宝くじの高額当選に導く」と言われたがいつまで経っても結果が出ない〉〈無料鑑定で三つの「徳」を授けてもらえると言われたが、無料鑑定期間を過ぎても最後の一つを授かることができず、高額なお金を支払ってしまった〉などとばかばかしいものが並んでいたが笑ってはいられない。
人間は疲れたり追い込まれると判断能力が低下する。こうした人間の一部はカルトのターゲットになり、法外な値段の印鑑や壺を買ってしまったりする。
アメリカの犯罪学者ジョージ・ケリングが考案した「割れ窓理論」というものがある。割れた窓を放置しておくと、誰も地域の環境に注意を払っていないというサインになり、犯罪が増加する。ニューヨークでは、この理論に基づき、徹底的に地下鉄の落書きを消した結果、凶悪犯罪が激減した。
オウム真理教や統一教会(現・世界平和統一家庭連合)のようなカルトが暴走する背景にも、いかがわしいものを許容・軽視する社会の空気があると思う。日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日といったキー局が朝の情報番組で垂れ流す星座占いがある。
各局のウェブサイトで目についたものを適当に拾ってみた。みずがめ座「段取り不足が今日のネック。なんとかなる」、おうし座「行動範囲を広げるとチャンスも同時に拡大。理想のタイプの人にも出会えます」、おひつじ座「問題解決のヒントをGET 困ったら友達に相談しよう ミントティーを飲む」……。
占いなんて迷信だなどと、子供じみたことを言いたいのではない。理性や合理により、神や仏、人知を超えたものを裁断することの愚かさを知るのが大人でもある。しかし12分の1の国民にミントティーを薦めるのは、そういう次元の話ではない。これは人間の尊厳に対する侮蔑である。公共の電波をつかってこんなものを垂れ流して恥を知らないのか。
「嫌なら見なければいい」「娯楽なんだから目くじらを立てるな」「法的に問題があるわけではない」──。こうした訳知りふうの意見こそが、割れた窓の亀裂を広げるのだ。
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「それでもバカとは戦え」(日刊現代・講談社 1430円)
近著に「日本人は豚になる」「ナショナリズムを理解できないバカ」など。著書40冊以上。購読者参加型メルマガ「適菜収のメールマガジン」も始動。詳細は適菜収のメールマガジンへ。
元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース 政治・社会 【社会ニュース・連載「それでもバカとは戦え」】 2022年11月12日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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