【社説②・01.25】:フジテレビ問題 事態を悪化させた認識の甘さ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・01.25】:フジテレビ問題 事態を悪化させた認識の甘さ
日本を代表する人気タレントが引退に追い込まれ、企業は相次ぎCMを差し止めた。放送界には激震が走っている。
トラブルを起こしたタレントはもちろん、問題を軽視し、事態を悪化させたフジテレビ経営陣の責任は重い。
タレントの中居正広氏と女性の間にトラブルがあり、それにフジの社員が関与したと週刊誌が報じた。中居氏はトラブルがあったことを認めて謝罪したが、騒動は収まらず、芸能界を引退した。
中居氏は「全責任は私個人にある」としている。それだけ深刻なトラブルなのだろう。
フジは社員の関与を否定し、記者会見を開いた。しかし、テレビの映像撮影を認めず、港浩一社長は女性のプライバシー保護などを理由に多くの質問への回答を避けたため、厳しい批判を浴びた。
港社長は問題発生の直後に事態を把握したと言うが、中居氏の出演番組を終了させるなどの措置を取らなかった。中居氏への配慮があったとすれば許されない。その姿勢が女性の人権を軽視する印象を与えていると認識すべきだ。
フジは1980年代、バラエティー路線やトレンディードラマを強化して人気を集めた。番組スタッフとタレントの懇親会なども盛んに行われ、その雰囲気は今も残っているとされる。
一方、社会ではコンプライアンスを重視する意識が強まり、テレビ局やタレントも例外ではなくなった。フジは、そうした時代の変化に鈍感だったのではないか。
対応でミスを重ねた結果、フジは経営が揺らぎかねない状況に陥っている。フジを傘下に持つ「フジ・メディア・ホールディングス」の株式を保有する米ファンドから厳しく批判された。
視聴者の反発を恐れたスポンサー企業のCM差し止めは、すでに80社前後に上る。村上総務相も「放送に対する国民の信頼を損ないかねない」と懸念を示した。
他の放送局にも同じような問題があるのではないかと疑っている視聴者は少なくないだろう。問題はすでにフジ1社にとどまらず、テレビ界全体に波及している。
フジは、独立性の高い第三者委員会を設置し、事実関係などを調査することを決めた。27日には改めて記者会見を開くという。遅きに失したと言わざるを得ない。
社員の関与は本当になかったのか、女性軽視の風潮があったのではないかなど、解明すべき点は多い。これ以上、対応を誤ることがあってはならない。
元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月25日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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