【社説②・12.17】:PFASと水道 早急な規制強化が必要
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・12.17】:PFASと水道 早急な規制強化が必要
発がん性が指摘される有機フッ素化合物(PFAS(ピーファス))が全国で検出されている問題で、環境省と国土交通省は先月、全国の水道事業者による調査結果を公表した。本年度に富山県を除く332事業者で検出され、うち7事業者が北海道内だった。
国が定めた安全性の目安となる「暫定目標値」はPFASの代表物質PFOA(ピーフォア)とPFOS(ピーフォス)の合計で水道水1リットル当たり50ナノグラム(ナノは10億分の1)だが、いずれもこれを下回った。
ただし安心はできない。全国約3700の事業者のうち、1300余りは2020年度以降、検査を行っていない。
石破茂首相は国会で検査と公表を義務付ける考えを示した。暫定目標値を、より厳しい規制である水道法上の「水質基準」に格上げする方針も示した。
早急に実行し、水道水の安全と安心を確保するため万全を尽くしてもらいたい。
PFASと呼ばれる物質は1万種類以上ある。用途は広く、泡消火剤や界面活性剤、半導体製造などで使われてきた。
だが一部物質が健康に影響を及ぼすことが分かり、中でも毒性が強いPFOAとPFOSは国際的に廃絶対象となった。
やっかいなのは、自然界ではほぼ分解されず、影響が長く続くことだ。岡山県吉備中央町では暫定目標値の28倍を検出したと昨年発表した。水源を切り替えるなどし、現在は目標値を下回っているが、町は長期的に住民の健康調査を行う。
基準の検討も必要だ。米環境保護局(EPA)は今年、PFOAとPFOSの規制値をそれぞれ1リットル当たり4ナノグラムと厳格化した。日本も参考にすべきだ。
PFASは全国の河川や地下水からも検出されている。
苫小牧市の安平川では今年7月、暫定目標値を超えた。10月のモニタリングでは下回ったが汚染源は特定されていない。
ラピダス(東京)の次世代半導体製造工場は安平川を水源とする道の工業用水を使用する。規制対象のPFASは持ち込まず、規制外の物質も浄化装置で除去した上で、千歳市の終末処理場を経て千歳川に流す。
市は千歳川などでPFASを含む水質調査を行っている。
ただ、市とラピダスが結んだ工場排水の水質に関する協定では、PFASを測定項目に入れていない。下水道法で規制項目ではないからだというが、工場内できちんと除去されているか確認する必要があろう。
千歳川下流では江別市が取水している。道を含め、関係者は隙のない対応を取るべきだ。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月17日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます