【社説②・11.21】:G20首脳会議 国際協調 喫緊の課題だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・11.21】:G20首脳会議 国際協調 喫緊の課題だ
日米欧といった先進国や中ロ、新興国による20カ国・地域首脳会議(G20サミット)がブラジルで開かれた。
首脳宣言はロシアのウクライナ侵攻を巡って「人的被害や食料、エネルギー安全保障などへの悪影響」を指摘したが、昨年に続いてロシアを名指しした批判は避けた。
パレスチナ自治区ガザでのイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘に関しても、停戦を支持しつつ民間人虐殺を続けるイスラエルを非難しなかった。
ロシアとイスラエルの蛮行は国際法に反している。世界秩序の安定を重視してきたG20が明確な姿勢を打ち出せないようでは、存在意義が問われよう。
今回の首脳会議は総じて具体的な成果が乏しかったと言わざるを得ない。米国第一主義を掲げるトランプ前大統領の返り咲きが決まり、世界の分断はいっそう深まりかねない時だ。
各国は国際協調の維持に向けた取り組みを急ぐ必要がある。
G20は参加国の国内総生産(GDP)合計が世界の8割以上を占め、影響力の大きい多国間枠組みだ。首脳会議は2008年の金融危機を機に毎年開催し、世界の課題に協力して取り組むことを確認してきた。
ただ、近年は自国第一主義の台頭や欧米とロシアの対立で足並みの乱れが目立つ。今回、議長国ブラジルは討議を踏まえず初日に首脳宣言を公表した。昨年に続く異例の対応は、ロシアなどの反発で集約できなくなる事態を回避したためだろう。
深刻なのは、保護主義に反対せず「多角的貿易体制を確保する」との文言にとどまったことだ。反保護主義はG20の原点であり、後退は明らかだ。
トランプ氏の復権により、保護主義への懸念が世界的に強まっている。それにもかかわらず当たり障りのない合意しか打ち出せないようでは、G20は形骸化するばかりである。
他方、宣言は温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」の目標達成に向けて結束を強調した。協定から再び離脱を唱えているトランプ氏をけん制した形だ。
世界経済や気候変動への対応は各国の協力が欠かせない。ただ、トランプ氏だけでなく中ロもBRICSや上海協力機構を通じて国際秩序に挑戦し、分断を深める姿勢を見せる。
こうした時こそ民主主義などの普遍的な価値観を重視する国の幅広い連携が不可欠だ。石破茂首相は「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持」を呼びかけた。言葉だけでなく実行に移すことが求められる。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月21日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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