《社説②・11.23》:ガザ攻撃で逮捕状 戦争犯罪止める圧力を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・11.23》:ガザ攻撃で逮捕状 戦争犯罪止める圧力を
1年以上にわたって続くガザ地区での殺りくと破壊を正当化できる余地はない。イスラエルと米国は、国際社会の強い批判に向き合わなければならない。
国際刑事裁判所(ICC)がイスラエルのネタニヤフ首相とガラント前国防相に逮捕状を出した。住民への組織的な攻撃や、飢餓を意図的に引き起こす行為を、戦争犯罪や人道に対する罪に問う十分な根拠があるとしている。
ICCは、国際法に反する重大な犯罪行為について、国家でなく個人の刑事責任を追及する独立した司法機関だ。設立条約であるローマ規程の締約国は、日本を含む124カ国に上る。
締約国はネタニヤフ氏らが入国した場合に拘束する義務を負う。ICCに加わっていないイスラエルや米国で逮捕されることはないが、外交活動に大きな制約が及ぶのは避けられず、事実上の外交制裁の意味を持つ。
イスラエルは猛反発している。ネタニヤフ氏は「反ユダヤ主義の措置だ」とし、われわれを止めることはできないと述べた。後ろ盾の米政府も、ICCの決定を根本的に拒絶すると表明した。
イスラエルに肩入れする米政府が、ICCに加盟する欧州各国や日本に対し、ネタニヤフ氏らを逮捕しないよう圧力をかける懸念がある。ICCの存立を揺るがしかねない不当な要求を、日本政府は受け入れてはならない。
国連の安全保障理事会では、即時停戦を求める決議案がまたも否決された。日本を含む10カ国が提案し、理事国15カ国のうち14カ国が賛成したが、常任理事国の米国が拒否権を行使した。
ガザをめぐる決議が、米国の拒否権で葬られたのは5回目だ。これまでは棄権していた英国が賛成に回り、イスラエルと米国の孤立は一段と鮮明になった。
ガザの死者は、身元が確認できた人だけで4万4千人に上る。イスラエル軍が包囲し、集中攻撃が続く北部では、40日間以上にわたって支援物資が届かず、住民が餓死の危機に瀕している。
中部や南部でも、昼夜を問わず空爆が続き、住民が避難した学校や、軍が指定した「人道地区」への攻撃も相次ぐ。疲れ果て、自ら命を絶つ人も多いという。
ガザの人々を極限の状況に置き去りにするわけにいかない。各国は、イスラエルと米国に対して強い行動を取る必要がある。日本政府は何より、イスラエルと経済や軍事面で関係を強化する姿勢を見直さなくてはならない。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月23日 09:30:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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