【産経抄】:2人の握手が向かう先
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【産経抄】:2人の握手が向かう先
ブッシュ(息子)米政権(2001年1月から2期)に招かれた海外首脳は、どこで応接されたかで大統領との距離を測ったという。テキサス州クロフォードの私邸、キャンプデービッド、ホワイトハウスの夕食会―の順である。
▼小泉純一郎元首相は全てに招かれている。中でもワシントン郊外の大統領山荘、キャンプデービッドでの交歓をご記憶の方は多かろう。ブッシュ氏から革のジャンパーと野球のボールを贈られ、上機嫌でキャッチボールしたのは01年6月末だった。
▼「ペリー来航以来、最良の日米関係」という首相周辺の言葉が小泉政権時の記事にある。古くは対立するエジプトとイスラエルの首脳会談も同山荘で行われ、平和条約につながった。険悪な両者の壁を溶かし、近い両者の距離をさらに縮める。友好の磁場がそこにはあるらしい。
▼岸田文雄首相と尹錫悦韓国大統領も、この山荘を舞台に改めて握手した。防衛面や経済安全保障など、中長期の協力を推し進めることで一致を見た、日米韓首脳会談である。中国と北朝鮮という脅威に対し、3カ国が結束の隙を見せてはならない。
▼北は核・ミサイル開発に前のめりで、中国は東・南シナ海での挑発をやめない。日韓の歩み寄りをバイデン大統領は勇断とみた。この握手はしかし、関係の永続を保証したものとは言い難く、「尹政権下」との条件付きか。日本が大きく譲った上での対応であることも忘れまい。
▼日米韓の安保協力は「新たな高み」に引き上げられ、日韓も世界を視野に入れた新たな関係を築く責任を背負っている。「友情は成長の遅い植物だ」と言ったのは、初代米大統領のワシントンである。気の遠くなるような時間がかかるだろう。やむを得まい。
元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【産経抄】 2023年08月20日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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