【社説・11.25】:有事想定 日米動き急 現実味増す住民の犠牲
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.25】:有事想定 日米動き急 現実味増す住民の犠牲
台湾有事を想定した動きが、日米双方で急速に進んでいる。ミサイル攻撃やハイブリッド戦を想定した取り組みが目立つ。
2023年12月、米海軍協会発行の月刊誌「プリシーディング」に、沖縄に駐留する第3海兵遠征軍幹部の論文が掲載された。
中国が沖縄を攻撃する事態になった場合のシミュレーションに基づいて、同論文は指摘する。
「多くの航空機が駐機場で破壊され、一部の海兵隊員は家族の避難に集中し、戦闘態勢を取れなかった」
その上で、米軍家族を本国に撤収させることや、司令部などの施設を地下化すべきだと提言している。
航空自衛隊トップの内倉浩昭航空幕僚長は21日の記者会見で、ミサイル攻撃を想定し隊員を緊急に避難させる「人員退避壕(ごう)」を那覇基地などに整備していると明らかにした。
着弾したミサイルなどの破片から隊員を保護するのが目的だ。既に那覇基地には数カ所設置済みだという。
米兵の家族を本国へ帰国させ、那覇基地に自衛隊用の退避壕を造るという話を聞けば、「県民はどうなるのか」と多くの人が反射的に思うはずだ。
それだけにとどまらない。
台湾有事の際、米軍はミサイル部隊を南西諸島とフィリピンに展開させ、軍事拠点を設ける方針であると、共同通信が24日報じた。有事が起きれば広大なエリアが「戦域化」する恐れがある。
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報道によると、南西諸島とフィリピンを結ぶ「第1列島線」に沿ってミサイル網を設け、2方向から中国艦艇などの展開を阻止する構想だという。
日比、米比は軍事協力を緊密化しており、3カ国が連携しながら中国に対抗する戦略を進めていたことになる。
一方、元陸上幕僚長の岩田清文氏は19年1月、東京で開かれた国際シンポジウムで、ハイブリッド戦を想定し「島内反対派が流すデマ等により民意が誘導されやすい状態になる」として警察との緊密な連携が重要だと指摘した。
ハイブリッド戦とは、非正規軍やサイバー攻撃を駆使した新しい戦争のことを指す。
この間の日米の動きを見ていると、強い疑問を抱く。
米軍や自衛隊は一連の取り組みを「抑止力の強化」だと説明するが、住民視点でみれば「軍人の発想」というほかない。
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米軍統治下の1955年7月、米国民政府は非常事態を想定した琉球民間防衛計画を作成した。
民間防衛計画は米軍への大規模な敵対行動に対しては戒厳令を布告するとし、民衆の統制に万全を期すことなどをうたっている。
沖縄は戦後、韓国や台湾と共に共産主義に対峙(たいじ)する最前線として巨大な軍事負担を強いられた。
安保体制の構造的な歪(ひず)みに頬かぶりしたまま、台湾有事を念頭に軍事要塞(ようさい)化が進む。一体、日本にとって沖縄とは何なのか。
元稿:沖縄タイムス社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月25日 04:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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