《社説①・12.20》:ホンダと日産 問われる統合の相乗効果
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・12.20》:ホンダと日産 問われる統合の相乗効果
ホンダと日産自動車が、経営統合に向けた協議を始めた。
日産と企業連合を組む三菱自動車も合流する見通しだ。実現すれば販売台数で世界3位の巨大グループが誕生し、国内の自動車業界はトヨタグループと二つの勢力に集約される。
日本経済を引っ張ってきた業界の将来を左右する動きだ。部品の供給など関連する企業の裾野は広く、地域への影響も大きい。
世界の自動車業界はいま、脱炭素に伴う電気自動車(EV)へのシフトや自動運転技術の進展によって、「100年に1度」と言われる変革期を迎えている。
米テスラ、中国・比亜迪(BYD)などの新興メーカーがEVで台頭する一方、日本勢は出遅れが目立つ。単独での生き残りは厳しさを増しており、結集して対抗する方向に傾いたようだ。
ただ、ホンダと日産にはそれぞれ独自に積み上げた技術があり社風も違う。その壁を乗り越え、互いの強みを生かして相乗効果を発揮できるかが成否を握る。
両社は今年3月、EVの中核部品や車載ソフトの分野で経営資源を共有する戦略提携を検討すると発表。それが統合協議にまで発展した形だ。背景には、日産の経営悪化があったとみられる。
日産は米国や中国での販売不振が深刻で、2024年9月中間期の純利益は前年同期から9割も減少した。11月に、26年度までに世界で9千人を削減するリストラ策を明らかにしていた。
この状況に注目したのがEVに参入した台湾の鴻海精密工業だ。買収の検討を始めたため、ホンダは日産を奪われると戦略の大幅な再考を迫られると考え、統合協議に踏み込んだ―。業界内で指摘される「事情」である。
鴻海は、米アップルのiPhone(アイフォーン)の受託生産などで成長した企業だ。自動運転に使う車載ソフトが車の性能を左右する重要な要素となるなど、業界で進む大きな変化を反映した展開と言えるだろう。
帝国データバンクによると、ホンダと日産に部品などを納入するサプライチェーン(供給網)に入っている企業数は、長野県内を含め延べ約3万5千社に上る。
統合が実現すれば、生産コストの削減を狙って製造部品の共通化が進むことが想定される。供給網の再編が進み、下請けにも大きな影響が及ぶ可能性がある。
多くの下請け企業が協議の行方を注視している。両社は責任をもって丁寧に向き合ってほしい。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月20日 09:31:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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