【社説②】:丘珠滑走路延長 具体性ある構想が必要
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:丘珠滑走路延長 具体性ある構想が必要
札幌市は札幌丘珠空港の滑走路について、2032年にも1500メートルから1800メートルに延長する方針案をまとめた。周辺住民の理解を得た上で、今秋にも空港を管理する国に要請する。
滑走路延長で夏季限定の小型ジェット機が通年就航できる。現行の1日最大30便が約70便に増え、年間旅客数はコロナ禍前の4倍に当たる100万人になるという。
道内では北海道エアポート(HAP)が新千歳など7空港を一括運営する。この枠組みに丘珠は入っていない。増便増客も今は皮算用に過ぎないのではないか。
丘珠の活性化を考えるには滑走路延長ありきではなく、新千歳との役割分担を明確にし、詳細な需要予測に基づいた将来構想をまとめることが欠かせない。
丘珠空港は市中心部から約6キロにある。市内経済界の一部に、好立地を生かした滑走路延長を求める声がかねてあった。
札幌市と道が1995年に当時の1400メートルを2千メートルにする案を示したが、事故や騒音を懸念する住民の猛反発で、1500メートルにとどまった。今回の延長案でも同様の不安は残るだろう。
2010年には全日空系の航空会社が道内路線を新千歳に移管したことで、道内のローカル拠点空港としての位置付けが崩れた。
現在は北海道エアシステムがプロペラ機で函館や利尻など道内を中心に6路線、フジドリームエアラインズ(FDA、静岡市)が小型ジェット機で静岡、長野県の松本の2路線を運航している。
市の方針案によると、延長後は道外を10路線へ拡充し、道内は1増の6路線にする想定だ。
だがコロナ禍で航空事業者の経営は厳しさを増す。計画通りに路線や旅客数が増えるか疑問だ。
新千歳とすみ分ける観点から道内便拡充に注力してもよい。
道は札幌市と連携し、JRやバス路線網も含めた総合交通体系の議論を深めることを急ぐべきだ。
市の方針案では、滑走路延長に伴う総事業費は最大350億円を見込む。
丘珠の利用拡大にはアクセス強化も長年の課題だ。空港と市中心部の往来はバスとタクシーに限られるが、市営地下鉄東豊線の延伸には巨額の財源が必要になる。
30年冬季五輪・パラリンピック招致を目指す札幌市は、各種のインフラ整備を目指す考えだ。財政負担に見合う需要があるかをそれぞれ見極め、「選択と集中」による重点化が必要である。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年05月20日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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