今朝のNHKニュースは、沖縄の米軍基地返還計画のデタラメさを改めて余すことなく証明してくれました。夜のニュース9は、違憲「統治行為論」問題について、さらに深めていました。
「司法権の独立揺るがす」資料見つかる 4月8日 5時14分http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130408/k10013746941000.html
砂川事件の元被告「憤り感じる」 4月8日 6時34分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130408/k10013747161000.html
今回のニュースで明らかになったことは何か、以下のように考えてみました。
1.「司法は米駐留軍違憲の伊達判決以来一貫して『統治行為論』を盾に自衛隊と九条に関する裁判では憲法判断を避けつづけている」最大の理由がアメリカの国家主権を無視した、ということは日本国民の国民主権を無視した干渉であったことです。
『戦争をしない国 日本』への思い 片桐直樹さん(映画『戦争をしない国 日本』監督)
http://www.jicl.jp/hitokoto/backnumber/20061016.html
2.こうした肝心要の「司法の独立」をないがしろにした国家の運営が、60年安保をとおして現在まで続いていることです。憲法の番人である最高裁判所が自らの責務を放棄しているという事実の重みは、計り知れないものがあると思います。司法の信頼が揺らぐか、回復するか、それはひとえに憲法遵守あるのみです。
憲法第81条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
憲法第98条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
○2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
憲法第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
3.しかもこうした不当な国家主権侵害を、あれこれの「脅威」論・「抑止力」論を口実に正当化し、憲法改悪勢力を補完・補強してきたことです。このことは、今日のNHKの世論調査の虚構ぶりが雄弁に語っています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130408/k10013766601000.html
4.「アメリカから押し付けられた憲法」論に固執する安倍首相は、今回の国家主権干渉という事実について、何も語っていません。マスコミも質問すらしていません。ここに、国民の知る権利を徹底的に保障しなければならないマスコミのあり方が問われているのです。別の言い方をすれば、第4の権力としてのマスコミの国民に報せる義務・責任・責務問題の本質があると言えます。
5.こうした日米両政府と司法の独立放棄が、日本国民の生活向上の妨げになってきたことを、改めて告発していかなければなりません。特に米軍基地の存在、日米軍事同盟が、日本国の最高法規の上位に位置している事実を国民的に暴いていかなければなりません。
6.憲法に保障された国民の諸権利を具体化するために、国民はどのような行動を取らねばならないのか、その責任の重さは、ひとえに自分の双肩にかかっていると言えます。今回の不当な国家主権と国民侵害に対して、日本国民は、あらゆる権利を行使する責任があると思います。
憲法第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
憲法第97七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
その他の新聞の報道は、現段階においては、以下のとおりです。
砂川事件 米軍駐留「違憲」 伊達判決 2013年4月8日 朝刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013040802000120.html
「砂川事件」違憲判決、「60年安保改定遅れに影響」 2013/4/8 2:00
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO53711330Y3A400C1CC1000/
違憲破棄「全員一致願う」 砂川事件 最高裁長官、米に伝達 2013.4.8 07:18 [日米関係]
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130408/trl13040807190000-n1.htm
安保改定遅れに影響 伊達判決 2013年4月8日 09時37分
http://article.okinawatimes.co.jp/article/2013-04-08_47758
これらの事実は、毎日・読売は検索できず、朝日は、今日の段階で記事にもしていませんでした。日米軍事同盟深化派の朝日の1面は「ミサイル破壊命令 政権北朝鮮予告ないまま」がトップでした!
次に赤旗をみてみます。
“米軍駐留は9条違反”の伊達判決 安保改定遅らせた2013年4月8日(月)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-04-08/2013040801_01_1.html
政府が恐れた安保違憲判決 日米で血眼になり「判決破棄」
安保の正当性に深刻な疑問 改定交渉の「空白」埋める解禁文書 2013年4月8日(月)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-04-08/2013040802_03_1.html
今回の記事は、実はすでに赤旗と前衛に掲載されていました。以下掲載しておきます。
59年の砂川事件・伊達判決 米軍違憲判決後の米の圧力 最高裁にまで手をのばす2008年4月30日(水)「しんぶん赤旗」
砂川事件・伊達判決に関する米政府の解禁文書(抜粋)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-04-30/2008043004_01_0.html
「砂川闘争半世紀―米政府秘密文書が語る事件の内実」 新原昭治(国際問題研究者) 『前衛』(2009年7月号)
伊達判決に秘かに干渉した駐日アメリカ大使
私は昨年四月、アメリカの国立公文書館で、伊達判決に関連した十数通のアメリカ政府の解禁秘密電報を見つけましたが、そこには、マッカーサー大使が、伊達判決をくつがえそうとして、秘かに日本の裁判に干渉をおこなっていた事実がワシントンヘの極秘報告電報として記録されていました。その全容を見ておきましょう。
最も注目されるものの一つが、判決の翌朝(五九年三月三一日朝)、マッカーサー大使が藤山外相に会って協議した報告電報です。
「今朝八時に藤山〔外相〕と会い、米軍の駐留と基地を日本国憲法違反とした東京地裁判決について話し合った。私は、日本政府が迅速な行動をとり東京地裁判決を正すことの重要性を強調した」と述べています。
その上で、日本政府には、東京高裁に上告するやり方と、最高裁に直接、跳躍上告する方法と二つあるはずだが、自分としては「日本政府が直接、最高裁に上告することが非常に重要だと感じている」と強調。そうしないなら、東京高裁への上告で論議の時間を長引かせ「左翼勢力や中立主義者らを益する」として、跳躍上告を勧める理由としたのです。
上訴の方法をめぐり一致した見解を持てないでいた日本政府首脳にとって、同大使の勧告が決定的な重みをもったことは疑いないことです。大使からこの要請を受けた藤山外相自身が、即座にその場で「全面的に同意する」と回答し、「今朝九時に開催される閣議でこの行為を承認するように勧めたい」と、生臭い心づもりを打ち明けていたのです。
藤山外相へのこの秘かな勧告とともに、最高裁に跳躍上告がなされた段階での四月二四日の田中耕太郎最高裁長官とマッカーサー大使の密談に関する報告電報も、人々を驚かせました。
この日東京のアメリカ大使館からワシントンの国務省宛てに発信された秘密外交電報には、最高裁がどのような時間的段取りで伊達判決の処理をおこなおうとしているかを克明に記した上で、この問題でマッカーサー大使が田中最高裁長官と「内密の話し合い」をして最高裁での伊達判決審議をめぐる日程上の見とおしについて話し合ったこと、とくに田中長官が大使に「本件には優先権が与えられているが、日本の手続きでは審議が始まったあと、決定に到達するまでに少なくとも数力月かかる」と説明したことを報告しています。
このころ、アメリカ政府は、伊達判決を覆そうとする日本政府や最高裁の動きとの関係で、日程上のことに神経質になっていました。安保条約改定の日米交渉はこの時点でいよいよ最終段階に近づいており、両政府は一九五九年半ばごろ新安保条約の調印にこぎつけたいと意図していたのです。ところが、東京地裁の伊達判決が彼らにとって手痛い打撃となり、これをそのままにして米軍基地存続に加え米軍と自衛隊の軍事共同作戦体制の大幅拡大をねらう日米安保条約改定をおこなったら、日本国民から強い批判を受けるだろうと恐れたのです。新日米安保条約の調印以前になんとしてでも「伊達判決を片づけろ」というのが、日米両政府にとっての「至上命令」になったのです。
さて、伊達判決から二昼夜を経過した四月一日夜、マッカーサー大使は伊達判決の衝撃がどんなに大きかったかをふりかえって、国務省宛てに次のように報告しています。
「日本における米軍の駐留は憲法違反と断定した東京地裁の伊達判決は、政府内部でもまったく予想されておらず、日本国内に当初どきっとさせるような衝撃をひろげた。」
「すべての新聞かひきつづき、伊達判決についての詳細な論評や世界のすべての主な首都からの反応を含めて、大きな扱いを続けている。」
伊達判決による驚愕と落胆ぶりに関する秘密報告電報は、在日アメリカ大使館自身の驚きぶりには触れていませんが、マッカーサー大使が最高裁での伊達判決の破棄に強く期待した次の電文は、日本国憲法第九条にそった伊達判決が、いかに日米軍事同盟にとって痛打であったかを余すところなく証明しています。
「最高裁の最終判決が伊達判決を明快な論法でくつがえすなら、大衆的論議や法律的論議の全般的反応は、米日防衛取り決めのための具体的な罰則規定を含めて、自衛のため適切な措置をとる権利を日本が持っていることを、健全なやり方で明らかにするものとなろう。」
この電報には、同判決の痛手から立ち直るには日本の国家主権に干渉してでも可能なことをすべてやろうと判断した在日米大使館の立場がにじみ出ています。
[憲法九条と根本的矛盾への国民的認識の広がり]
これとはまったく逆の意味で、伊達判決の「米軍駐留は憲法違反」という明快な歴史的審判は、不当な弾圧に抗し、苦しみに耐えながらたたかってきた砂川事件の被告たちをはじめ、砂川闘争に参加しあるいは支持し共感した全国の多くの人々にとって、鮮烈な衝撃的ニュースとなり、憲法第九条と日米安保条約の根本的矛盾への国民的認識を一挙にひろげました。…(引用ここまで)
最後に、以上の記事に関連した記事を掲載しておきます。
「米軍違憲」伊達判決の破棄を最高裁に介入した米国政府 解禁文書で判明 2008-04-30 16:43:09
http://blog.goo.ne.jp/e-hori/e/caa88761895d8bc4e6e7a33a0e9d05f9
砂川事件最高裁判決の「仕掛け人」 2008年5月26日