昨日から今日にかけて安倍政権の閣僚と安倍首相自身が、靖国神社に参拝しました。安倍首相は、参拝ではありませんが、ただ行かなかっただけでの話です。このニュースについても、マスコミをとおして、事実上の既成事実化を狙ったものであることが、菅官房長官の記者会見で、明らかになりました。「計画通り」ということです。国民の反応を窺うということでしょうか?
安倍首相:靖国神社に真榊奉納 毎日新聞 2013年04月21日 19時55分
http://mainichi.jp/select/news/20130422k0000m010019000c.html
麻生副総理ら、靖国参拝…首相は真榊料奉納(2013年4月21日20時24分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130421-OYT1T00525.htm
麻生氏ら2閣僚、靖国参拝=安倍首相は真榊奉納 (2013/04/21-20:28)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_date2&k=2013042100228
麻生副総理ら閣僚3人 靖国神社に参拝 4月21日 20時52分http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130421/k10014077091000.html
…古屋国家公安委員長は記者団に対し、「国務大臣、古屋圭司として参拝した。玉串料は自費で出した。国のために命を捧げた英霊に対して哀悼の誠を捧げるのは、私の国会議員という立場からして当然のことだ」と述べ…(引用ここまで)
麻生、古屋氏が靖国参拝 閣僚計3人、首相は供物 2013年4月21日 20時55分
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013042101001349.html
首相、靖国神社に供え物奉納 参拝は見送る方針 2013/4/22 0:56
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2100R_R20C13A4PE8000/
靖国神社:麻生副総理が参拝 毎日新聞 2013年04月21日 21時15分(最終更新 04月21日 21時25分)
http://mainichi.jp/select/news/20130422k0000m010036000c.html
各マスコミの報道の仕方は、ワンパターンです。こうした報道の仕方がl繰り返されることで、国民にどのような印象を与えていくか、そこが問題です。
閣僚の参拝と安倍首相の事実上の参拝は、事前に、以下のように報道されていました。しかし、こうした動きに対して、マスコミは、憲法の問題から、諸外国との関係から、何も追及すらしていませんでした。こうした状況を踏まえて、今回の参拝となったのは明らかです。
安倍首相、靖国例大祭に真榊奉納へ 第1次内閣を踏襲 2013年3月29日17時26分
http://www.asahi.com/politics/update/0329/TKY201303290092.html
4月21~23日に行われる靖国神社の春季例大祭で安倍晋三首相が、神前にささげる供え物「真榊(まさかき)」を奉納することがわかった。菅義偉官房長官が29日の記者会見で「(奉納の意向を神社側に伝えたとする毎日新聞の)報道の通りではないか」と認めた。
首相は2007年の第1次安倍内閣でも、参拝を見送る一方で「内閣総理大臣」の肩書で真榊を奉納。国内向けに自らの信条を表した。政府高官は29日、奉納について「第1次内閣でもやっている」と述べ、当時の形を踏襲する可能性を示唆した。
前回の首相就任時に奉納した真榊は、サカキの鉢植え1基。高さ2メートル近くあり、本殿に上がる木製階段の両脇にほかの真榊とともに並べられた。費用は5万円だったという。
最近では麻生太郎元首相も、首相在任時に「内閣総理大臣」の肩書で秋と春の例大祭に真榊を奉納した。(引用ここまで)
首相、靖国春季例大祭に真榊奉納へ 2013.3.29 22:16
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130329/plc13032922170021-n1.htm
…参拝に関しては「首相は『(先の)自分の内閣の時に参拝できなかったことは痛恨の極み』と言っている。さまざまな状況を見て適切に判断するだろう」と述べるにとどめた。 真榊は、神事の際に祭壇の左右に立てられる祭具。第1次安倍内閣の下で、首相は平成19年4月の春季例大祭に「内閣総理大臣」名で真榊を奉納し、参拝は見送った。菅氏は閣僚や副大臣らに参拝自粛を求めない考えも示した。(引用ここまで)
安部首相の言い分や、「東京裁判史観」発言、今日の国会における村山談話見直し発言、憲法改悪に向けた手続きなど、一連の動きを一体のものとして捉えるのであれば、一つひとつの動きが、それなりに計算されながら行われていることは明らかです。早速、以下のような反応がありました。
韓国外相、訪日当面見送り 安倍首相の靖国供物奉納に反発 2013/4/22 10:53
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM2202E_S3A420C1EB1000/?dg=1
…韓国外務省は同日、安倍首相の供え物奉納や閣僚の参拝を非難する論評を発表。「歴史を忘却した時代錯誤的な行為だ」と指摘、「正しい歴史認識を基に責任ある行動を取るよう強く求める」と強調…(引用ここまで)
韓国外相、訪日中止 首相の靖国奉納に抗議か 2013年4月22日 11時22分
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013042201001480.html
…靖国神社に供物を奉納したことなどに対する抗議だと報じた。同ニュースによると、外務省当局者は「このような雰囲気の中で会談しても生産的な議論は難しい」と述べた。 日韓の新政権発足後、外相会談は一度も開かれておらず、歴史問題を理由にした今回の会談中止で、日韓関係は当面冷却期間が続くことが確実になった。…(引用ここまで)
靖国神社副総理参拝:韓国外相が訪日取りやめ 毎日新聞 2013年04月22日 10時52分(最終更新 04月22日 12時22分)http://mainichi.jp/select/news/20130422k0000e010124000c.html
…当局者は「内閣のナンバー2である麻生副総理まで参拝したのは無責任だ。日韓関係を改善させようという考えがあるなら、相手国に対する配慮がもう少しあってもいいのではないか」と語った。 韓国は当初、5月の日中韓首脳会談に合わせて今月末に3カ国の外相会談を開くことで調整していた。しかし、中国が日程に難色を示して首脳会談が先送りになったため、尹外相が個別に日中両国を訪問することを計画していた。尹外相は当初の予定通り24日に訪中する。
尹外相が訪日すれば、日韓両国で新政権が発足して以降、初の外相会談となるはずだった。両国は、緊迫する北朝鮮情勢への対応を協議するとともに、昨年8月の李明博(イ・ミョンバク)韓国大統領(当時)による島根県・竹島(韓国名・独島)への上陸を機に悪化した関係改善の糸口を探ろうとしていた。(引用ここまで)
しかし、こうした反応を見越した政権の対応がなされました。以下の記者会見です。全くスリカエです!相変わらず答えになっていません。しかも、マスコミの突っ込みもありません。どうなっているのでしょうか?
官房長官 外交に影響及ぼすべきでない 4月22日 12時13分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130422/k10014088571000.htm
…菅官房長官は午前の記者会見で「私人として参拝されたものと理解している。閣僚が私人の立場で参拝することは閣僚個人の私的な行動に関する事柄であり、政府として答えることは差し控えたい」と述べ…ユン・ビョンセ外相の日本訪問を取りやめたことを明らかにしたことに関連し、「それぞれの国にはそれぞれの立場があり、そうしたことの影響をあまりそれぞれの外交に及ぼすべきではない」と述べ…「真榊(まさかき)」と呼ばれる鉢植えの供え物を奉納したことについて、「私人としての行動だと思うので、政府見解を申し上げるべき事柄ではない。政府として春の例大祭に真榊を奉納することを決定したことはなく、公費で支出したとは承知していない。総理大臣の肩書きをつけるのはその地位にある個人を示すものであって、公人として真榊を納めたということではない」と述べ(引用ここまで)
さて一連の動きを一覧してみました。そこで、以下のことを気づきました。そのポイントです。
1.「私人」「私費」とは言え、「公人」としての「役職」を書いて、参拝しているのです。安倍首相の場合は直接参拝はしていませんが、誰が、どのように「私費」を届けたか、どのようなルートで靖国神社に打診したのか、経過に、「公人」ぶりは、全くなかったのか?明らかにすべきです。しかも、彼らの「私費」は、「一般人」のそれとは、性格が大きく異なるものです。消費税増税の際の政党助成金、国会議員「歳費」問題が、そのことを示しています。ご都合主義も甚だしい限りです。
2.次は、神道の儀式である「春季例大祭」にあたっての行動であることです。これは、「役職」を書いているということは、憲法20条第3項 「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」と矛盾していることです。本当に「私人」を強調するのであれば、単純に「個人名」を書くべきです。しかし、そのようなことはしていません。
春季例大祭http://www.yasukuni.or.jp/schedule/shunki.html
真榊http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9C%9F%E6%A6%8A
神饌http://www.jinjahoncho.or.jp/iroha/matsuri/index7.html
御幣http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%A1%E5%B9%A3
玉串http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8E%89%E4%B8%B2
しかも、「春季例大祭」には、「天皇陛下のお遣いである勅使が参向になり、天皇陛下よりの供え物(御幣物)が献じられ、御祭文が奏上されます」とあるように、これは天皇の国事行為か、公的行為か、天皇家の祭祀の一つか、何一つ明らかにしていません。マスコミも追及すらしていません。
こうして、既成事実化しながら、印象操作によって、問題ないかのようなムードを醸成しているのです。それに反して、中韓の抗議!国内問題に干渉するな!となることは明らかです。以下の反応が、このことを示しています。
朝日将軍の執務室http://asahisyougun.iza.ne.jp/blog/entry/3055874/
事実上の敵国である中共や韓国との外交関係を考慮する必要は無い。国のために命を捧げた英霊に哀悼の誠を捧げるのは国会議員、内閣閣僚、内閣総理大臣としては当然である。
3.さて、こうした行動と反応を見て、思うことは、安倍首相の小笠原訪問、日の丸君が代口パク問題の時にも記事を書きましたが、大東亜戦争肯定論者=靖国信奉者たちの身勝手さについてです。極めて不道徳ぶりには怒り・呆れます!
以下、ポイントのみを述べてみます。
(1)かれらの行為は、本来の神道論から、大きくかけ離れて、神道を、自分たちの専売特許であるかのようにゴマカシテいることです。
神道とは 日本文化における神道の役割(過去・現在・未来)
http://www.shinto.org/wordjp/?page_id=2
(2)神道はもともと、「天下泰平、五穀豊穣」「命の大切」などを祈ってきたのではないのか?
(3)「国のために命を捧げる」論は、神道の考え方と根本的に異なるのではないか?しかも、他国・他民族を抑圧し、命や財産を奪うことは、神道の考え方と相容れないのではないのか?
(4)しかも「国のために命を捧げ」ない人たちに対しては「哀悼の誠」を捧げないのは、不平等であり、神道の考え方とは異なるのではないのか?
(5)「英才・英断・英雄/育英・俊英」という言葉に象徴されるように、「英霊」とは、「すぐれている。すぐれた」「霊」ということですが、死者の「霊」を差別化するというのは、神道の考え方でしょうか?「死者(屍)に鞭を撃つ」行為ではないのでしょうか?
靖国神社というのは、今 大河ドラマ「八重の桜」に登場している会津の侍たち、あの白虎隊の若者たちは「英霊」なのでしょうか?
ところで、あの「大東亜戦争」に反対し、獄中で、或いは警察で「非業な死」を遂げた「愛国者」たちは、「英霊」とは、言わないのでしょうか?勿論彼らは断ると思いますが、また抜け出したくても抜けられない「植民地の兵士、朝鮮人兵士」の「英霊」も、いるようです。身勝手なものです。あ、そう言えば、あの戦犯で処刑された人たちも、こっそり「英霊」になっていたようです。呆れます!
(6)「靖国神社」は、元々は「東京招魂社」でした。さらに、「招魂」の起源は、直近で言えば、1862年、福羽美静らが京都霊山において、安政の大獄以来の弾圧に斃れた志士たちの霊を祭ったことが起源と言います。(大江志乃夫『靖国神社』岩波新書84年3月刊)
(7)こうした「魂を招いて、霊を慰める、霊を鎮める」必要があったのは、菅原道真に代表されるように非業の死を遂げた人間の霊(怨霊)が暴れまわることを防ぐと言う意味もあったはずです。
(8)しかも、神道には「タマフリ・フリタマ(振魂)・タマシヅメ(鎮魂)などの観念はあるものの、「招魂」と言う言葉は、用いられなかったようだ」(村上重良『慰霊と招魂 靖国の思想』岩波新書74年9月刊)という見解もあります。
(9)ということは、「国のために命を捧げた英霊の怨霊を鎮める」必要性、すなわち、教育勅語によって死に追いやったという感情の裏返し、「後ろめたさ」、「怨霊」に対する「畏れ」が、ここにあるということです。それこそが、「靖国神社の本質」と言えます。
(10)それを、「英霊」とゴマカシ、次なる「英霊」づくりに利用する、という、神道の本来の考え方とは相容れない思想が、ここに浮き彫りになってきます。
(11)しかも、こうした神道捻じ曲げ論は、他民族の信仰すら否定しているのですから、八百万の神々と矛盾するものです。そもそも天皇自身が、靖国神社の「英霊=神々」に「供え物(御幣物)」をするという行為そのものが、神々の対等平等性を示していないでしょうか?ゴマカシがあるように思います。
以上、大まかにまとめてみました。どうでしょうか?今後さらに検討を加えていきたいと思います。
結論は、安倍政権をはじめとした日米軍事同盟深化派=靖国神社信奉者たちの、ゴマカシは、人間の信仰心すら捻じ曲げ、ウソをつき、政治的に利用しようとする邪悪なこころであり、不道徳の極地と言えます。
因みに、愛国者の邪論は、無神論です。しかし、信仰心を持っている方々を尊敬しておりますし、神社の祭礼には、参加もします。それは人々の共同体があるからです。中世の「一味同心」は、ムラの鎮守で行われたものです。こうした民衆の信仰心と生活の知恵、これこそが日本の伝統文化と歴史を創造してきたと言えます。
そうした視点にたったとき、安倍政権の思想は断じて認めることはできません。