参議院選挙を前に、参議院で一票の格差是正問題がまとまらなかったことを受けて、各紙が「与野党」を批判しています。しかし、マスコミは、「与野党」を批判する前に、国民にどのような情報を提供してきたか、検証すべきです。「与野党」が党利党略に陥っているのは、国会における議論が国民の前に明らかにされていないからです。各党の主張の違いを国民の前に明らかにすること、どの政党が、もっとも国民目線の改革案を提示しているか、ハッキリさせることです。
そうすれば、ゴマカシが効かなくなり、最も合理的で、国民の一票がムダにならず、国民の声が政党に国会に反映されるようになるでしょう。しかも国会における議論も公平に国民に提供していくのです。公約に基づいて、どのように活動しているか、このことが政治不信を軽減させ、政治を面白くさせていくことでしょう。
全国紙の社説を検証してみました。ポイントは以下のとおりです。
愛国者の邪論
どうすれば、一票の格差が解消し、抜本改革ができるか、別々の問題ではなく、一緒の問題だと思います。政党のエゴとして捉える報道がある限り、この問題は解決しないのではないでしょうか?
1.一票もムダにしない選挙制度というのであれば、現在では死票のない比例制度の導入しかない。
2.ただし、政党要件を緩和することで、多用な意見を国会と参政権に具体化できるようにする。
2.定数削減は、議員を通して国民の声が国会に届かなくなるので民主主義に反する。ダメ議員を当選させないようにすればすむことで、国民のために働かない議院を厳しくチェックすることこそが本来のやり方。しかし、ここを曖昧にして、議員一般・与野党一般をダメにしている。政治不信を煽る本質がある。事実上政権温存装置と言える。
この問題については、以下記事にしてありますので、ご覧ください。
消費税増税・議員削減のまえにやることはたくさんあるのに… 2012-01-11 10:56:46
http://blog.goo.ne.jp/aikokusyanozyaron/d/20120111
「身を削る」場を意図的にすり替えるマスコミに、喝! 2012-01-15 10:16:45
http://blog.goo.ne.jp/aikokusyanozyaron/d/20120115
国会議員削減で国会と国民のパイプが削られる!喜ぶのは?苦しむのは? 2012-01-19 09:36:51
http://blog.goo.ne.jp/aikokusyanozyaron/d/20120119
増税のための「身を切れ」論を支持する国民が「米びつ」の政党交付金に怒らないのは何故か 2012-01-29 23:34:53
http://blog.goo.ne.jp/aikokusyanozyaron/d/20120129
「身を切る」論のウソを知りながら、ウソヲ垂れ流し、国民の身を切るとんでもないマスコミを斬る!2012-02-15 22:18:33
http://blog.goo.ne.jp/aikokusyanozyaron/d/20120215
3.「身を切る」論は、政党助成金の廃止しかない。そもそも政党助成金設立の趣旨そのものが間違っていたことは、その後の使途で明白。マスコミもこの政党助成金を広告収入にしていることを具体的に明らかにして、廃止論を主張すべき。同時に政治とカネをめぐっては政治活動に相応しい使途かどうかをチェックする機関・制度を設けるしかない。
4.衆参の在り方は、すでに諦める。あるとすれば、参議院に全国区を復活させ、独自候補の当然を保障するしかない。しかし、これは、人気投票的になるので、問題があって廃止したはず。
近代の政治は政党政治であることは常識中の常識であり、多党化と政党の雲散霧消が政党政治と国民生活にどのような影響を与えてきたか、常に検証する必要がある。こうした政治の在り方を決めるのは、主権者である国民の判断に委ねるべき。
5.マスコミの情報提供の在り方が、不道徳議員を跋扈させている。国民が政治を、国政を身近なものと感じられるようになるためには、情報提供の在り方をこそ、検討しなければならない。参政権の根本中の根本であることを国民自身が自覚し、国民のためのマスコミ・メディアづくりをすべき。
全国紙の社説のポイントをまとめ、要約してみました。
1.0増5減策は破綻していることを社説が認めているにもかかわらず、一票の格差是正の鍵であると固執している。
朝日 これで一時しのぎの格差是正は実現する見通しだ。
毎日 是正が実現しても複数の選挙区ですでに格差は2倍を超したとの試算もある。安穏と次期衆院選を迎えられる状態ではない。
読売 17都県42選挙区の区割りを改定することで、10年国勢調査に基づく選挙区間の人口格差は、2倍未満に縮小される。 最高裁が廃止すべきだとした「1人別枠方式」は、区割り法に残っている。是正には不十分との指摘もあるが、「違憲状態」とされた以上、緊急的な措置を講じないわけにいかない。
日経 0増5減は緊急避難であり、問題をはらんでいる。最高裁が求めた、都道府県にまず1議席ずつ割り振る1人別枠方式の廃止に、きちんとこたえていないからだ。…しかし別枠方式を廃止して、人口比例で議席を配分すれば定数が1に減る鳥取などには手をつけなかった。高裁段階では0増5減では不十分との指摘も出ており、最高裁が同様の判断を示す可能性もある。
産経 格差是正に向けた衆院の「0増5減」という最低限の措置はとられた…小手先の格差是正を重ねるやり方をどう改めるのか。都道府県別の定数配分のやり方をこれからも続けるのか。
東京 「一票の不平等」解消には程遠い。…〇増五減をしても、一〇年の国勢調査後の人口移動で格差はすでに二倍を超えたとの試算もある。二倍近い格差を残したままで平等か、という議論もある。…一票の不平等は参院でより顕著だ。昨年「四増四減」の是正をしたが格差は依然四・七五倍ある。 弥縫(びほう)策を繰り返してはいつまでも不平等はなくならない。より踏み込んで、法の下の平等を追求するのは国会の責務ではないのか。
2.何故、一票の格差が生まれるか、何故「0増5減」案が破綻するか、曖昧であり、小選挙区制に原因を求める意見もあるが、政党のエゴに、その原因を求めている意見もある。中選挙区制か比例制度に転換する視点は東京のみである。
朝日 自民党は公明党の議席維持に配慮した複雑きわまる制度を唱え、野党の一部は極端な定数削減を言い募る。 要は、自分たちが有利になる制度を主張するばかり。有権者の意思をいかに適切に国会の議席に反映させるかという真摯な姿勢はまったく見えない。 一方で、司法からの「違憲」あるいは「違憲状態」の判断に対し、「立法権への侵害だ」という反発がまかり通る。 党利党略がさまざまに絡み、自らの身を切る改革は難しいのだろう。
毎日 中小政党への配慮や方法をめぐり議論が暗礁に乗り上げてしまったためだ。…「1票の格差」問題とは別に、政界には小選挙区制自体の見直しを主張する声もある…さまざまな糸がもつれあい、選挙制度改革は身動きが取れなくなっているのだ。 すでに6度の選挙が実施された小選挙区制の功罪を点検すべき時期に来ているのは確かだ。だが、2大政党と多党制のいずれを志向するかなど、選挙制度は政治のあり方に直結する。現行制度を基本としてさらに踏み込んだ格差是正や定数削減を行い、小選挙区制の検証を並行して進めていくのが現実的ではないか。…「1票の格差」は参院も衆院以上に深刻で、「1人区」の存否も含めた抜本改革を迫られている。衆院と似た原理で議員が選ばれ、広範な権限を持つ現在の参院のあり方が果たして妥当か。
読売 筋が通らないのは、野党第1党の民主党の対応である。 民主党は昨年11月、0増5減の先行実施に同意し、衆院選挙制度改革法に賛成した。ところが、政権交代後、その法律を実施するための区割り法には反対した。参院民主党は、法案の採決も拒んだ。衆院での再可決に持ち込めば、参院選を前に、「与党の強引な国会運営」をアピールできるといった思惑も働いたとされる。 こんな“ご都合主義”に国民から共感を得られるはずがない。東京都議選の惨敗も、独りよがりな国会対応と無縁ではあるまい。
日経 国会は最高裁判決を待たずに、別枠方式を完全に解消する、より踏み込んだ1票の格差の是正案を取りまとめなければなるまい。
産経 なし
東京 衆院小選挙区は限りなく格差一倍に近づくよう区割りをするか、それが困難なら死票の多い小選挙区から、比例代表制などに移行するのも選択肢だろう。
3.「抜本改革」とは何かについて曖昧である。中には参院の在り方、衆参の在り方や「ねじれ」問題などにスリカエている。
朝日 「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」 憲法41条には、こうある。だが、その名に恥じない働きをしていると胸を張れる議員は、どれだけいるのか。 衆院小選挙区の一票の格差を是正し、選挙制度の抜本的な見直しをする。司法から抜本的な改革を求められているのは、参院も同じだ。また、衆院と同様、選挙区と比例区を組み合わせた選挙制度が参院の独自性を失わせ、一方で「衆参ねじれ」となれば政争の主戦場になることの弊害が指摘されてきた。 衆院と参院の役割分担は何か、その特性を生かすためにそれぞれどういう選挙制度にしたらいいのか。制度改革にあたっては、こうした視点からの衆参一体の検討が不可欠だ。
6回の衆院選をへて、政権交代は2度実現した。一方、最近の3回の選挙では、得票率の差以上に議席数が大きく開くという小選挙区制の特性が如実にあらわれた。 いまの制度の点検を含め、衆院と参院の役割分担も念頭においた選挙制度の抜本改革をセットで考える
毎日 「1票の格差」は参院も衆院以上に深刻で、「1人区」の存否も含めた抜本改革を迫られている。衆院と似た原理で議員が選ばれ、広範な権限を持つ現在の参院のあり方が果たして妥当か。衆参両院の機能分担に関する議論も持ったなしだ。
読売 「0増5減」の先にある衆院選挙制度の抜本改革で、与野党が合意できなかったことは残念だ。
日経 衆参両院の抜本的な選挙制度改革の論議と合わせ、腰をすえて取り組むべき課題だろう。
産経 抜本改革の約束は、今度こそ果たされねばならない。
東京 くり返し主張してきたが、選挙制度の抜本改革は、首相の諮問機関の選挙制度審議会のような第三者機関に委ねるしかあるまい。 今国会中に結論を出すと合意した定数削減や抜本改革に関する協議が遅々として進まなかったように、各党間の協議に委ねていてはいつまでも結論が出ないからだ。 立法府の根幹にかかわる選挙制度を行政府に委ねることに抵抗感があるのなら、議長の下に諮問機関や協議機関をつくってもよい。 この際、衆参双方の選挙制度をそれぞれの位置付けや役割分担に踏み込んで抜本的に見直してはどうか。衆参両院の定数もただ減らせばいいものではなく、抜本改革の中で適正水準を決めるべきだ。
4.定数削減問題について、民意の切り捨て、一票の格差と関連させて論じる視点はなし。しかし定数削減容認論と否定論に分かれている。定数削減に絡めて政党助成金を取り上げる意見もある。
朝日 「政治とカネ」の問題も忘れてはならない。議員歳費や手当、年320億円の政党交付金は適正なのか再点検すべきだ
毎日 0増5減をすみやかに実施したうえで衆院の選挙制度改革に向けた協議を進め、定数削減の結論を出すことが各党に今国会で課せられた使命だった。ところが閉会直前まで先送りされたあげく、与野党は批判の泥仕合を演じている。まさに醜態だ。
読売 …参院選後に協議を再開するための各党間の文書ですら、まとまっていない。民主党が「定数削減の期限の明示」を要求し、妥協しようとしないからである。 選挙制度改革で合意形成を図るには、与野党の見解の隔たりが大きい定数削減問題を切り離すべきだ。国会議員を減らせば国民に歓迎されるといった大衆迎合的な発想は捨て去り、制度改革の議論をリセットしなければならない。
日経 3党合意で、今通常国会中に実現すると約束した定数削減は先送りされた。解散時期をめぐる駆け引きの中での合意だったとはいえ、3党は安易に約束したことを深く反省する必要がある。他党も1党だけでは実現できない定数削減について、人気取りのために選挙公約に掲げるのは慎むべきだ。 定数削減は各党の利害が絡み、合意点を探るのは容易でない。衆参両院の抜本的な選挙制度改革の論議と合わせ、腰をすえて取り組むべき課題だろう。
東京 年間三百二十億円を共産党以外の政党に配分している政党交付金も見直し対象にすべきだ。政党収入の多くを交付金が占めて、もはや「国営」と化した政党に、国民の側に立った政策が実現できるかどうか、甚だ疑問だからである。
5.第三者機関に委ねる論がある。これは議員不信の最たるものですが、その前にやることがあるはずです。議会と議員と国民のパイプの在り方をどのように検証するか、問われていません。
朝日 いまの制度の点検を含め、衆院と参院の役割分担も念頭においた選挙制度の抜本改革をセットで考える。そのためには、首相のもとで各界の有識者らが議論する「選挙制度審議会」に委ねるしかない。 安倍首相はじめ各党党首は、その決断をすべき時だ…肝心なのは、諮問機関が出した結論には各党が従うという決まりを事前につくっておくことだ。案がまとまったものから、順次実行に移すスピード感も求められる。 会期末の醜態で評判が地に落ちた国会である。せめてこのぐらいは有識者に委ねるのが、与野党の責任の取り方だろう。
毎日 衆参両院の機能分担に関する議論も持ったなしだ。 だからこそ、選挙制度改革は権威ある第三者機関による議論が望ましい。国会議員だけに問題を任せられないことは今回、ますますはっきりした。与野党に危機感があるのならせめて、機関設置と改革の期限だけでも早急に合意すべきである。
読売・日経 なし
産経 与野党10党の実務者が閉会間際に集まり、参院選後に協議を再開することを確認したが、信頼していいのか。こうした状況を打開するため、第三者機関は一つの有力な手法となり得るだろう。…休眠中の首相の諮問機関、選挙制度審議会を活用する選択肢もあった。首相が衆院議長の下に設置する方法をとったのは、第1~7次の選挙制度審ではメンバーに入った各党の国会議員の意見が対立し、抜本改革につながらなかったことが念頭にあるようだ。 だが、第8次審は衆院への小選挙区比例代表並立制の導入を打ち出し、実現につながった。国会の第三者機関でも、メンバーの構成次第で機能しない恐れはある。 伊吹文明衆院議長は首相の提案を歓迎しつつ「結論に皆が従う前提がないと引き受けられない」と語った。首相は伊吹氏や各党代表と、出された結論の実現をいかに担保していくかについて、しっかりと話し合うべきだ。 早くも異論が出ている。民主党の細野豪志幹事長は「有識者から意見を聞いてもいいが、定数削減は政治家が決断できるかだ」と語った。政治家が決められないから第三者機関にとの声が強まっているのだ。抜本改革の約束は、今度こそ果たされねばならない。
東京 くり返し主張してきたが、選挙制度の抜本改革は、首相の諮問機関の選挙制度審議会のような第三者機関に委ねるしかあるまい。 今国会中に結論を出すと合意した定数削減や抜本改革に関する協議が遅々として進まなかったように、各党間の協議に委ねていてはいつまでも結論が出ないからだ。 立法府の根幹にかかわる選挙制度を行政府に委ねることに抵抗感があるのなら、議長の下に諮問機関や協議機関をつくってもよい。
以下、全国紙の社説の一覧です。
朝日 国会の改革/選挙制度にとどめるな 2013/6/28 4:00
http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit2?
朝日 選挙制度改革/もう議員に任せられぬ 2013/6/5 4:00
http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit2
毎日 0増5減法成立/許せぬ無責任な幕引き 2013/6/25 4:00
http://mainichi.jp/opinion/news/20130625k0000m070122000c.html
読売 「0増5減」成立/参院の存在意義はどこにある 2013/6/25 2:00
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20130624-OYT1T01532.htm
日経 さらなる1票の格差是正を 2013/6/25 4:00
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO56597290V20C13A6EA1000/
【主張】選挙制度で新機関 結論実現の担保が重要だ 2013.7.1 03:37 [今さら聞けない 参院選の基礎知識]
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130701/plc13070103380008-n1.htm
中日/東京 0増5減成立/弥縫策を繰り返しては 2013/6/25 8:00
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013062502000132.html