いわゆるスノーデン事件が発覚してほぼ1ヶ月が過ぎました。この事件が発覚した時、愛国者の邪論が注目したのは、日本政府とマスコミの対応の仕方と内容でした。
当初は元CIA職人スノーデン氏予報道されていましたが、アメリカ政府から訴追された段階で「容疑者」として報道されています。その後、スノーデン氏の亡命先がどこの国になるかということのみに集中した報道がなされ、亡命先となる可能性のある国に対して、アメリカ政府の圧力が当然のことのように報道されているのです。
この問題に対するアメリカ政府の正当性は垂れ流されてはいるものの、スノーデン氏の立場を擁護する視点に立った報道は、ほとんどありません。本来スノーデン氏が「雲隠れ」しなければならないことそのものが、問題であるにもかかわらず、むしろどこへ行ったのか、出て来い!というような印象操作報道がなされているように思います。
しかし、視点を変えてみると、もしスノーデン氏が、中国人で、中国の諜報活動を告発していたら、日本の報道はどうなっていたでしょうか?しかも、日本政府の諜報活動を行っていたとしたら、スパイ防止法制定やら、反中国報道やらで、日本国内は大騒ぎになっていたことでしょう。しかも参議院選挙は、この問題が一大争点になっていたことでしょう。
しかし、スノーデン事件は、アメリカ政府が中心です。日米軍事同盟深化派の日本のマスコミは、この問題をどのように報道しているのでしょうか?ほとんほオトナシ状態と言っても言いすぎでない状態が続いています。寧ろ「スノーデン容疑者」の「人権」擁護の視点は全く欠落しているのです。ここに日本政府を擁護する日本のマスコミのスタンスが透けて見えてきます。
以下の記事をお読みください。いわゆる反米の立場をとる国しか、亡命先がないというのも、不思議な現象です。同時に外交圧力を加えるアメリカの立場、ここに自由と民主主義の国アメリカとその政府の本質的立場が見えてきます。
元CIA職員から亡命申請=対話の意向表明-ベネズエラ (2013/07/09-11:48)
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2013070900239
【サンパウロ時事】南米ベネズエラのマドゥロ大統領は8日、米当局に訴追された元中央情報局(CIA)職員エドワード・スノーデン容疑者(30)から亡命申請が届いたと明らかにした。マドゥロ氏が亡命受け入れを表明後、ベネズエラ政府が同容疑者の意向を確認したのは初めて。 マドゥロ氏は大統領府で記者団に対し、スノーデン容疑者にはまだ接触していないとしながらも、対話したいとの考えを示し、「(同容疑者は)いつ飛行機に乗るか決めなければならない」と述べた。 スノーデン容疑者が滞在するモスクワからベネズエラまでの直行便はなく、キューバでの乗り継ぎが有力。地元メディアによると、キューバのラウル・カストロ国家評議会議長は7日、スノーデン容疑者の受け入れを表明したベネズエラ政府を支持する意向を表明している。 ただ、スノーデン容疑者は、米政府のパスポートが失効しているため、第三国に出国できない状態とされる。マドゥロ氏は、ベネズエラへの渡航の方法や、パスポートに代わる書類の発行には言及しておらず、亡命の実現には時間がかかる可能性もある。(引用ここまで)
米大統領、訪ロ見送りも=元CIA職員滞在なら-現地紙 (2013/07/08-16:28)
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_date2&k=2013070800574
モスクワ時事】8日付のロシア経済紙コメルサントは、米国家安全保障局(NSA)の情報監視活動を暴露して訴追された元中央情報局(CIA)職員エドワード・スノーデン容疑者(30)のモスクワ滞在が長期化した場合、9月のオバマ米大統領のロシア公式訪問が見送られる可能性もあると報じた。 ロシア・サンクトペテルブルクでは9月5、6両日、20カ国・地域(G20)首脳会議を開催。これに先立ちオバマ大統領がモスクワが訪問し、プーチン大統領と3、4両日に会談することで既に合意している。第三国に亡命申請しているスノーデン容疑者がその時まで出発できなければ、オバマ大統領と「ニアミス」することになる。(引用ここまで)
NHKニュースはどうでしょうか?「アメリカの情報機関が極秘に大量の個人情報などを収集していたことを告発したCIAの元職員、エドワード・スノーデン容疑者」という表現そのものに、大きな矛盾がありますが、NHKは、全く気づいていないというか、矛盾を承知の上で表現しているのでしょう。ここにスノーデン氏の人権擁護の視点はあるでしょうか?これがNHKの「公平・中立」の実態と言えます。
CIA元職員 亡命理由「死刑のおそれ」 7月8日 5時58分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130708/k10015877231000.html
アメリカの情報機関による個人情報の収集を告発したCIA=中央情報局の元職員が中米のニカラグアに亡命を申請した文書が公開され、この中で元職員は、アメリカに戻れば「終身刑や死刑となるおそれがある」と亡命の理由を説明しています。アメリカの情報機関が極秘に大量の個人情報などを収集していたことを告発したCIAの元職員、エドワード・スノーデン容疑者は、ロシアのモスクワの空港にとどまっているとみられ、これまでに3か国が亡命を受け入れる意向を示しています。このうち中米のニカラグアは6日、大統領府のホームページで、元職員からモスクワのニカラグア大使館に提出されたという亡命申請の文書を公開しました。この中で元職員は、「アメリカ政府に訴追される危険があるため、亡命を申請します」としたうえで、アメリカに戻れば「公平な裁判や適切な処遇は受けられそうになく、終身刑や死刑となるおそれがある」と訴え、亡命の理由を説明しています。文書は先月30日付けで、最後に元職員のものとみられる署名が入っています。元職員の亡命については、南米のベネズエラやボリビアも受け入れの意向を表明していますが、アメリカは各国に対し亡命を受け入れないよう求め、スノーデン元職員のパスポートを無効にしており、元職員がロシアを出国できるのかどうかは不透明な状況です。(引用ここまで)
では、次に、この問題を扱った沖縄タイムス・読売・朝日の社説を掲載しておきます。
沖縄タイムス社説 [日本大使館も盗聴]底なしの米の通信傍受 2013年7月2日 09時15分
http://article.okinawatimes.co.jp/article/2013-07-02_51175
米国家安全保障局(NSA)による通信傍受は、電子メールなどインターネット上の個人情報の大量収集にとどまらず、在米日本大使館など外国の政府機関も監視対象としていたことが分かった。 個人のプライバシーや通信の秘密の侵害だけでなく、国家機密にもアクセスしている可能性が出てきた。対テロ対策を口実にした米国の諜報(ちょうほう)活動は底なし沼の様相だ。
菅義偉官房長官は記者会見で「外交ルートを通じて、しかるべき確認を求めている」と話しているが、当然である。日米は同盟関係にある。米国は何の情報を、何のために収集していたのか、日本政府は毅然(きぜん)とした態度で米当局にただしてもらいたい。 英紙ガーディアンによると、監視対象にはフランスやイタリアなどの欧州連合(EU)諸国、メキシコ、韓国、インドなど38大使館も含まれている。EU代表部については約90人の職員を監視し、パソコン内のデータ全てを盗み見していたとみられる。 ドイツの週刊誌シュピーゲルは、ガーディアンの報道に加え、EU代表部の施設などに小型盗聴器を仕掛けていたと報じている。 欧州議会の議長は「事実ならEUと米国の関係は大きく損なわれる」と非難した。 いずれの情報源も米中央情報局(CIA)の元職員エドワード・スノーデン容疑者=スパイ活動取締法違反容疑で訴追。元職員がNSAによる通信傍受を内部告発、提供されたNSAの機密文書から明らかになった。
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スノーデン元職員が属していたCIAやNSAは沖縄とも関係が深い。CIAは復帰前、旧玉城村や読谷村を拠点に活動していた。 本紙が発掘した米公文書によると、諜報や秘密工作、心理作戦などを行う際はCIAとは別の暗号名を名乗ることを指示されていた。徹底した隠密行動ぶりがうかがえる。 CIAの秘密資金は沖縄でも使われた。復帰前の1965年、三大選挙の一つ、立法院選挙で親米派を支援するため100万ドルを超える巨額の資金が動いたのは有名だ。
復帰後も、読谷村には極東一帯の電波を傍受することが可能な楚辺通信所(通称・象のオリ)があり、NSAが日本政府の情報を傍受していたといわれている。 楚辺通信所は米軍キャンプ・ハンセンに移設され、返還されたが新しい施設でどういう活動をしているのか闇に包まれたままだ。
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英政府の通信傍受機関、政府通信本部(GCHQ)が2009年にロンドンで開かれた20カ国・地域(G20)の首脳会合などで各代表団の電話や電子メールを傍受。偽のインターネットカフェも設置する念の入れようだった。 GCHQはNSAの姉妹機関といわれ、スノーデン元職員から入手した資料を基に、ガーディアンが報道した。 米国は自由の国を標榜(ひょうぼう)している。今回、明らかになった情報収集の在り方は自由の国の姿からは程遠い。米国は、関係国に説明責任を果たさなければ自由の国が泣くことを肝に銘じるべきだ。(引用ここまで)
愛国者の邪論
日米軍事同盟容認の沖縄タイムスの立場が如実になった社説です。米軍基地の本家本元の沖縄のマスコミが、これだけの社説を書きながら日米軍事同盟廃棄を主張できないのは何故でしょうか?不思議です。
米機密漏洩事件 問われる情報管理のずさんさ(7月8日付・読売社説)(2013年7月8日01時42分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20130708-OYT1T00014.htm?from=blist
ひとりの男が世界中を揺るがしている。 米国家安全保障局(NSA)が違法な通信情報収集をしていると告発したスノーデン容疑者のことだ。南米や欧州などの26か国に亡命申請し、2週間もモスクワの空港で待機している。 スノーデン氏は香港に滞在していた1か月前、NSAが、極秘に構築した監視・傍受システムを使って、電子メールやネット電話、動画サイトの情報を大量に収集していると英米紙に暴露した。 NSA職員ではなく、契約請負企業で働いていた民間人だが、個人のプライバシーが侵害されるのを見て、「良心が許さなかった」と、告発の動機を語っている。 NSAは、秘密のベールに包まれた情報機関だ。日本を含む世界各地に施設を保有している。 それにしても、民間人が機密情報をかくも容易に漏洩(ろうえい)できたことには驚くしかない。 米情報機関では、膨大な情報の処理のため民間企業への委託が増え、最高機密にアクセス可能な民間人は約50万人に上るという。 米国では3年前にも、陸軍上等兵が内部告発サイト、ウィキリークスに大量の米外交公電を流し、25万点以上がそのまま公開される事件があったばかりだ。 米政府の情報管理のずさんさは問われなければならない。 オバマ政権は、スノーデン氏をスパイ防止法違反容疑などで訴追し、関係国に身柄の引き渡しへの協力を要請した。米国が受けた衝撃の大きさを物語る。さらなる機密の流出を防ぎたいのだろう。 ネット時代の今日、大量の電子情報が世界を飛び交っている。その多くは、米大手通信会社のサーバーを経由している。 米政府が2001年9月の同時テロ後、テロ防止の目的で、通信会社の協力を得てネット監視を強化したのは公然の秘密だった。 問題は、それが合法的に行われているのか、ということだ。 オバマ大統領は、「合法的で、テロから国民を保護する必要な措置」と述べ、正当性を強調した。NSA長官は議会で、「世界20か国以上で50件を超すテロ計画を阻止した」と有用性を述べた。 いくら目的が正当でも、適切な歯止めを欠いた情報収集活動は権力乱用につながる恐れがある。 スノーデン氏は、所定の内部告発手続きを踏まなかった。無視され、逮捕されることを恐れたのかどうか。情報流出の阻止には、内部告発者を保護する仕組みが機能することも重要である。(引用ここまで)
愛国者の邪論
スノーデン氏の「告発の動機」を紹介し「問題は、それ(情報活動)が合法的に行われているのか、ということだ」「いくら目的が正当でも、適切な歯止めを欠いた情報収集活動は権力乱用につながる恐れがある」「所定の内部告発手続きを踏まなかった。無視され、逮捕されることを恐れたのかどうか。情報流出の阻止には、内部告発者を保護する仕組みが機能することも重要」とあるように、読売にしては、比較的まともな社説かなと思います。しかし、スノーデン氏の人権擁護の立場、アメリカ政府への抗議の立場はありません。情報管理の杜撰さを強調しているだけです。
朝日 米盗聴疑惑/同盟の信義にかかわる 2013/7/8 4:00
http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit2?
米国の情報機関が、欧州や日本など米国の同盟国に対しても盗聴や監視をしている。そんな疑惑が深まっている。 英紙に暴露したのは、亡命先をもとめてロシアに滞在している米国家安全保障局(NSA)の元外部契約職員だ。 ワシントンなどで欧州連合(EU)代表部や各国大使館に盗聴器をしかけ、特別なアンテナもつかい、通信情報を集めているという。「標的」には日本大使館も含まれている。 この報道後、オバマ米大統領は「我々だけでなく、情報機関のある国はどこもやっている」と述べ、否定しなかった。外交に諜報(ちょうほう)活動はつきものだとしても、同盟相手としては信義則違反といわざるをえない。 欧州の首脳らは批判を強めている。オランド仏大統領は「到底容認できない」と、ただちに盗聴をやめるよう求めた。 テロ計画の阻止を目的に掲げたからといって、どんな手段でも許されるわけではない。同盟国に対しては、必要があれば協力を求めるのが筋だろう。 オバマ氏は「同盟国が求めるすべての情報を提供する」と約束した。そこを信頼回復の一歩にするしかあるまい。 そもそも諜報はテロ対策だけが目的ではない。冷戦後、共産国を探る任務が薄れた米中央情報局(CIA)は、産業経済のスパイ活動にも力を入れた。 95年の日米自動車交渉では、日本政府高官の電話がCIAに盗聴された疑惑が浮かんだ。今から日本が加わる環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉でも疑心暗鬼にならざるをえない。 同盟は必ずしも絶対の信頼関係を保証しない。そんな現実を日本も見据える必要がある。 隠密の諜報活動には、プライバシー侵害の恐れだけでなく、発覚すれば外交問題の負債となるリスクがつきまとう。 「中国が米政府のハッキングの標的となっている」。そんな元職員の指摘によって、サイバー攻撃の問題について米国は注文をつけにくい立場に陥った。 これでは、自由主義のリーダーを自任してきた米国の正当性がゆらぎかねない。 民主主義社会における政府組織は、世論の理解があって初めて成り立つ。それは国際社会でも同じだ。情報機関の問題が暴露されれば、その国への信頼感がゆらぎ、国益を損なう。 特に、大国である米国には重い説明責任がある。少なくとも米議会や司法によるチェック機能を強め、同盟国にはできる限り情報を開示して、信頼を裏切らぬよう願いたい。(引用ここまで)
愛国者の邪論
「外交に諜報活動はつきものだとしても、同盟相手としては信義則違反といわざるをえない」というのであれば、「同盟相手」でなければ何でもアリということになります。また「今から日本が加わる環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉でも疑心暗鬼にならざるをえない」などと、TPP参加容認・推進論の朝日の破綻がここでも浮き彫りになってしまいました。また産経や読売同様、中国批判の急先鋒である朝日の政治的立場は「サイバー攻撃の問題について米国は(中国に)注文をつけにくい立場に陥った」という表現で、いっそう浮き彫りになりました。
「自由主義のリーダーを自任してきた米国の正当性がゆらぎかねない」ので「少なくとも米議会や司法によるチェック機能を強め、同盟国にはできる限り情報を開示して、信頼を裏切らぬよう願いたい」と日米軍事同盟深化派の朝日のできることは、アメリカ政府に「お願い」する程度なのです。ここに、朝日の基本的な、本質的な政治的立場があるのです。
スノーデン氏の人権問題など、知らんぷりです。中国の人権問題、人権活動家の記事はたくさん書く朝日ですが、この問題では、皆無・想定外です。全くケシカラン話です。
最後に、産経の記事です。この記事に、日本政府と日米軍事同盟深化派のホンネは浮き彫りになってきます。
【風を読む】中国に使われ捨てられて… 論説副委員長・西田令一 2013.7.9 12:39 [風を読む]
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130709/amr13070912410008-n1.htm
米通信傍受機関、国家安全保障局(NSA)の情報漏洩(ろうえい)は日本などの外交施設の盗聴疑惑にまで発展し、どこまで広がりをみせるかはっきりしない。が、中国が最も得したということだけは確かである。 NSAが通話履歴や電子メールなど大量の個人情報を密(ひそ)かに収集していたことが発覚したのは、6月上旬の米中首脳会談の直前だ。 米側は、年30兆円もの知的財産の損失を被る中国などからのサイバー攻撃を最優先議題に据えたから、何とも発覚時期が悪かった。 ほどなくして、米中央情報局(CIA)元職員、エドワード・スノーデン容疑者(スパイ罪などで訴追)が中国・香港特別行政区から、自分が漏洩者だと名乗り出て、NSAは中国大陸や香港でハッキング行為をしてきた、とも暴露した。 すると、英字紙チャイナ・デーリーは、中国を非難する米国こそ「個人の自由とプライバシー追求への最大の脅威」との識者見解を伝え、国際情報紙、環球時報は「中国の安全を侵犯する行為の即時停止」を迫る有力学者発言を引用する。外務省報道官も「国際社会の懸念」を振りかざして米側に説明を求めた。サイバー攻撃追及の矛先を漏洩の方にそらす意図がありありだった。 軍民の先端技術を盗用するサイバー攻撃は、テロ防止目的の個人情報収集とはもちろん、諜報活動の一環たる盗聴とも次元が違う。体制ぐるみの犯罪といえる。その大きな脅威が、漏洩に世の非難と関心が集まったせいでかすんでしまう。中国が、米国の身柄引き渡し要請が来て摩擦の種となった同容疑者をロシアへ出境させたのは、取る物を取っての厄介払いだった。 漏洩には、テロ阻止とプライバシー保護の折り合いで論議を促した効用もみられる。同容疑者はしかし、法を犯し、情報、政治の自由度に難のある中国・香港やロシアを脱出先に選ぶなど、問題提起の仕方を完全に誤ったというほかない。(引用ここまで)
愛国者の邪論
コメントする気にもなりません。「中国脅威」論の本質、ここにあり!というところでしょうか?!
次は朝日と日経の記事です。外国の記事を紹介するという姑息な手法をとりながら、実は産経と同じ政治的立場から記事が書かれていることが判ります。これが自由と民主主義の国ニッポンのマスコミなのです。日本国憲法の立場から、アメリカにも、中国にも、どこに国にも意見を言える国にしなければ、と思います。アメリカに押し付けられた日米軍事同盟脳が、如何に自主的脳を侵しているか、このスノーデン事件は教えてくれています。
アングル:スノーデン問題、米国の中国追及を鈍らせる可能性 2013年7月9日14時23分
http://www.asahi.com/international/reuters/RTR201307090068.html
7月8日、米中戦略・経済対話では、米政府はサイバーセキュリティーの問題を主要な議題の1つに据えているが、スノーデン容疑者が米政府機関による情報監視活動を暴露したことで、米国は中国に強い態度で臨むことができないかもしれない。写真は2011年1月、北京で撮影(2013年 ロイター/Jason Lee)
[ワシントン 8日 ロイター] - 今週ワシントンで行われる米中戦略・経済対話では、米政府は知的財産権(IP)や企業秘密の盗用などのサイバーセキュリティーの問題を、主要な議題の1つに据えている。 しかし、エドワード・スノーデン容疑者が米政府機関による情報監視活動を暴露したことで、米国は中国に対して、強い態度で臨むことができないかもしれない。 米国は、中国が米国の企業や研究機関をハッキングして知的財産権を盗み出している、と主張。毎年、多額の被害を被っているとしている。オバマ米大統領と中国の習近平国家主席は先月の会談で友好ムードを演出したが、こうしたサイバーセキュリティーなど難しい問題で実際に協力することができるのか、関係者は注目している。 米コンサルタント会社APCOワールドワイドのシニアカウンセラーで、中国の資本主義や産業政策に関する著作を持つジェームズ・マクレガー氏は「スノーデン事件は問題を複雑にした。中国政府は『あなたもやる。われわれもやる。何がいけないのか』と開き直るだろう。企業へのハッキングを通じた窃盗は続く」と指摘している。 ルー米財務長官は先週、サイバー上の窃盗行為について、中国政府に対応を強く迫ると強調。これは「サイバーエリアのほかの問題とは異なる」との姿勢を表明した。 米政府は、多くの国家が互いをスパイしているとして自らの行動を擁護。スノーデン容疑者が暴露したような情報機関によるスパイ活動と、テクノロジーの窃盗とはまったく別の問題との立場を示している。米政府当局者は、中国が政府の主導で知的財産権の窃盗行為を働いていることは、その規模の大きさにおいて特異としている。 米司法省は先週、米風力発電部品大手AMSCから企業秘密を盗んだとして、中国の風力発電用タービンメーカー大手の華鋭風電科技集団(シノベル)<601558.SS>と同社従業員2人を刑事訴追した。被害額は8億ドル、とされている。
一方の中国政府は、中国こそがサイバースパイの犠牲者と反論、中国が米企業のコンピューターに不正侵入しているとの批判を受け流している。中国国営通信社の新華社は先月、スノーデン問題について、米国が「現代における最大の悪党」であることを証明したと報道。中国のサイバー攻撃を非難するのは偽善的だ、と報じている。
<米企業は年間3200億ドルの被害>
最近のリポートによると、知的財産権の窃盗で、米企業は年3200億ドルの損害を被っている。これは、米国による対アジア輸出の年額に相当する規模、という。 知的財産権の窃盗問題に関する米超党派グループは、5月の報告書で、米企業の知的財産権が盗まれる事件のうち、50─80%に中国が関与していると指摘した。 米超党派グループは、金融関連の制裁や輸入禁止措置、米金融市場におけるブラックリスト掲載など、知的財産権の盗用に対する罰則を強化するよう求めている。 (Paul Eckert記者;翻訳 吉川彩;編集 吉瀬邦彦) (引用ここまで)
[FT]CIA元職員を英雄視すべきでない(社説) 2013/6/25 14:03
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGV25002_V20C13A6000000/
(2013年6月25日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
米政府の個人情報収集を暴露した米中央情報局(CIA)元職員のエドワード・スノーデン容疑者がどこに逃亡しても、米政府は身柄引き渡しを要求し続けるべきだ。守秘義務違反は重大な法律違反であり、スノーデン容疑者は潔く罰を受けなけばならない。英紙ガーディアンや米紙ワシントン・ポストへの暴露で、米国家安全保障局(NSA)の広範な監視活動が明るみに出たが、漏洩内容に米法違反にあたる行為はなく、NSAの活動自体に問題があったわけでもない。極秘情報にアクセス可能な民間契約社員を絞るなど、NSAの責任を強化する余地はある。ただ、スノーデン容疑者を英雄視するのは間違いだ。
■エルスバーグ氏とは違う
ベトナム戦争に関しての機密書類「ペンタゴン・ペーパーズ」を内部告発したダニエル・エルスバーグ氏(1日、フォートミード)=AP
特に、1971年に米国防総省のベトナム戦争秘密報告書(ペンタゴン・ペーパーズ)を暴露したダニエル・エルスバーグ氏と比べるのは適切ではない。エルスバーグ氏はベトナム戦争での米国の行為に疑問を呈するため、まずは複数の上院議員に接触。これがうまくいかずにメディアに情報を漏らした。だが、スノーデン容疑者はこうした働き掛けを一切していない。しかも、エルスバーグ氏は米当局や検察側から逃げず、「市民不服従」を主張。裁判は審理無効となり、容疑は晴れた。一方、スノーデン容疑者は情報漏洩が明らかになる前に香港に逃亡。現在はロシアに滞在しており、次の渡航先はキューバとなる可能性が高い。
米政府がスノーデン容疑者の訴追に失敗すれば、情報漏洩の増加が今後予想される。歴代米政府は安全保障業務の多くを契約会社に委託してきた。元職員が所属していたブーズ・アレン・ハミルトンもその1つだ。オバマ大統領はまずはこうした状況に歯止めをかけなくてはならない。もっとも、法律違反は深刻な事態を引き起こすとの姿勢を明確にしたのは正しい判断だった。
「プリズム(PRISM)」などNSAの監視活動により、米市民は外国人よりも手厚く保護されているとの懸念が海外で高まるのも無理はない。米政府はこうした懸念に対処する一方、市民に対する保護強化も進めなくてはならない。だが、スノーデン容疑者を勇気ある内部告発者として扱う前に、同氏が市民の権利を無視し続ける国に接触したことを忘れてはならない。エルスバーグ氏はスノーデン容疑者を同志と認める寛大さを示したが、そういった見方を裏付ける事実はまだ少ない。
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