NHK エアコン設置「賛成」 3分の1には達せず 2月15日 23時50分http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150215/k10015478251000.html
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埼玉県所沢市で航空自衛隊の基地周辺にある小中学校にエアコンを設置するかどうかの是非を問う住民投票が15日行われ、設置に賛成する票が反対を上回りました。しかし賛成票は「結果の重みをしん酌しなければならない」とする有権者の3分の1には達しておらず、結果を受けて市長がどのような判断をするのか注目されます。
今回の住民投票は、航空自衛隊入間基地の自衛隊機の騒音のため窓を閉めきる学校の暑さ対策として、所沢市の基地周辺の小中学校にエアコンを設置するかどうかの是非を問うものです。
15日、20歳以上の所沢市民およそ28万人を対象に投票が行われた結果、エアコンの設置に賛成が5万6921票、反対が3万47票で、設置に賛成する票が反対を上回りました。
一方で投票率は31.54%で、賛成票は「結果の重みをしん酌しなければならない」と市の条例が定める有権者の3分の1には達しませんでした。
住民投票の結果について、所沢市の藤本正人市長は「結果についてはこれから分析を行うが、これまで国内の自治体で実施した住民投票と比べると、決して高くない投票率だったのが残念です」というコメントを出しました。
藤本市長は16日午後、記者会見を開き、みずからの考えを明らかにすることにしていて、どのような判断を示すのか注目されます。(引用ここまで)
産経 所沢で学校エアコンの是非めぐり住民投票 投票率31%で実現目安の「3分の1」に届かず 2015.2.15 23:12更新
http://www.sankei.com/politics/news/150215/plt1502150033-n1.html
住民投票の開票作業を見守る所沢市民ら=15日夜、同市並木の所沢市民体育館
埼玉県所沢市で15日、市立小中学校へのエアコン設置の是非を問う異例の住民投票が実施された。投票率は31・54%。藤本正人市長(53)は「賛否いずれかが投票資格者総数の3分の1以上に達した場合は結果に従う」と表明していたが、投票率自体が実現目安の3分の1に届かなかった。
即日開票され、午後10時半現在、開票率72・92%で賛成3万8500票、反対2万5500票。
投票結果に法的拘束力はない。保護者らは「市長はどのような結果でも重く受け止める必要がある」と話している。市長の判断が注目される。
エアコン設置は、付近にある入間基地を離着陸する航空自衛隊機の騒音対策として決まったが、藤本市長が「快適さを最優先した生活を見直すべきだ」と中止し、反発した保護者らが署名を集めて投票を実現させた。
所沢市立小中学校のうち29校は、騒音を防ぐため密閉性の高い窓などが備えられている。基地から約2キロの狭山ケ丘中の生徒を中心に「夏は扇風機が無意味なほどの蒸し暑さ。窓を開けると10分おきに騒音があり、先生の声が聞き取りづらい」などの声が相次いだ。
市は2006年、騒音対策として防衛省の補助を受け、全校に冷房を設置する方針を決定。しかし、1校が設置された後の11年に初当選した藤本市長が、12年に「東日本大震災を機に、自然と調和した生き方への転換を」と唱えて方針を撤回した。保護者らは「快適さのためではない。騒音対策で、学習権の侵害だ」と訴えた。
投票資格者総数は27万8248人だった。(引用ここまで)
NHK 所沢市長 エアコン設置「慎重に考えたい」 2月16日 14時42分http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150216/k10015491861000.html
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埼玉県所沢市で15日行われた航空自衛隊の基地周辺にある小中学校にエアコンを設置するかどうかの是非を問う住民投票で、設置に賛成する票が反対を上回ったことについて、藤本正人市長は16日、会見で「財政面を考慮しながら今後慎重に考えていきたい」と述べるにとどまり、エアコンの設置を認めるかどうかの判断は示しませんでした。
住民投票は、航空自衛隊入間基地の自衛隊機の騒音のため窓を閉めきる学校の暑さ対策として、所沢市の基地周辺の小中学校にエアコンを設置するかどうかの是非を問うもので、15日、投票が行われた結果、賛成が5万6921票、反対が3万47票で、設置に賛成する票が反対を上回りました。
一方で投票率は31.54%で、賛成票は「結果の重みをしん酌しなければならない」と市の条例が定める有権者の3分の1には達しませんでした。
これらの結果について、藤本市長は16日午後開いた記者会見で「投票率が低かったのは残念だが、市民一人一人が参加した結果を重く受け止め、財政面を考慮しながら今後慎重に考えていきたい」と述べるにとどまり、エアコンの設置を認めるかどうかの判断は示しませんでした。
また、判断する時期については「みずからの任期が満了となる、ことし10月までには結論を出したい」としています。
所沢市のエアコンの設置を巡っては、藤本市長が震災と原発事故を受け「快適で便利な生活を見直すべきだ」などとして設置しない方針を示したのに対し、保護者など住民グループが「あくまで騒音への対応として設置を求めているのであり、ぜいたくな願いではない」などと訴えていました。
住民グループの大原隆広さんは「投票率が低いという指摘もあるが、全体の過半数を超える賛成票をもらった。これは市長が当選した時の得票数を上回っており、非常に価値がある数字だと思う。市長は誠意ある対応を取ってほしい」と話していました。(引用ここまで)
住民投票の成立の要件は厳しく!有権者の過半数とすべき!
住民が主人公・住民自治の重みは憲法に由来する!
今回の住民投票は、成立要件は、「賛否いずれかが投票資格者総数の3分の1以上に達した場合は結果に従う」と市長が表明していたことからすると、それには達していませんでした。また当日の「有権者」=「投票資格者総数」は27万8248人だったということです。そのうちの「賛成」が5万6921票、「反対」が3万47票。設置に賛成する票が反対を上回ったということです。しかし、三分の一である83,474を超えることはできませんでした。勿論過半数には遠く及びません。その最大の問題は、投票率が31.54%だったことにあります。
この問題を考える上で、ものさしは、憲法です。憲法には、第九十六条 に以下のように書かれれています。
この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。(引用ここまで)
この規定を適用することが、主権者である国民の判断を尊重することになります。有権者の過半数こそが、「民意」と言えます。従って、多くの国民が投票に参加できるようにすることが大切です。
憲法改悪案の国民投票では、安倍首相は、「その過半数」の意味を、投票者の『過半数』とすることは明らかです。となればできるだけ、投票行動に参加しないように、世論をリードすることでしょう。まさに「眠っていてくれた方が良い」ということです。このことは、この間の国政選挙の低投票率がどのような結果をもたらしたかを視れば、どのような結果をもたらすか、一目瞭然です。
大人は子どもに「最善の利益」を保障する視点に立っているか!
今回の住民投票が行われた理由は、「航空自衛隊入間基地の自衛隊機の騒音のため窓を閉めきる学校の暑さ対策として設置されたエアコン」をさらに全校に設置しようとして始まった施策を市長の「一存」で否定・変更したことにあります。
「快適さを最優先した生活を見直すべきだ」「騒音を防ぐため密閉性の高い窓などが備えられている。基地から約2キロの狭山ケ丘中の生徒を中心に『夏は扇風機が無意味なほどの蒸し暑さ。窓を開けると10分おきに騒音があり、先生の声が聞き取りづらい』などの声が相次いだ」とある言葉がそれです。
このところの夏の温度の高さは、どうでしょうか。学校はガマンを教えるところだという意見が、議員、政治家によって度々なされています。市長の「快適で便利な生活を見直すべきだ」という意見の奥深いところに何があるか。検証・解明する必要があります。
実は、愛国者の邪論も、そのような意見を度々聞いてきました。確かに、そういう側面があることは、ま、事実と言えます。しかし、それを強調することで、実は、
1.子どもにも人権があることを黙殺していること、
2.そして議員、政治家こそが、日本国憲法を尊重擁護する義務を負っていることを忘れているか、
3.或は憲法を敵視しているからこそ、この思想を使わないか、
4.或は人権思想を土台にしている憲法の諸権利を不断の努力で実現していくことを大人自信が忘れているか、
5.更には戦前の大日本帝国憲法の思想である「権利を主張する前に義務を果たせ」論に毒されているか、
6.或は全くの無知であるか、
などなどのことを考えざるを得ないのです。
このことは、子どものこころの中に人権尊重思想を育み、権利を主張することの正当性と権利行使の大切さを教える際には、必ず他人の権利を尊重する責任・義務を考慮すること、そしてこのことを大人が教えなければならないことを指摘・協調しない訳にはいきません!これらは、日本国憲法の根本思想でもあるわけです。
そのことを確認したうえで、日本国政府も批准した「子どもの権利条約」には、憲法の人権思想に基づく子供の諸権利について、以下のように明記されていることを強調しておかなければなりません。ご覧ください。
児童に関するすべての措置をとるに当たっては、公的若しくは私的な社会福祉施設、裁判所、行政当局又は立法機関のいずれによって行われるものであっても、児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。(第3条)
締約国は、この条約において認められる権利の実現のため、すべての適当な立法措置、行政措置その他の措置を講ずる。締約国は、経済的、社会的及び文化的権利に関しては、自国における利用可能な手段の最大限の範囲内で、また、必要な場合には国際協力の枠内で、これらの措置を講ずる。(第4条)
締約国は、すべての児童が生命に対する固有の権利を有することを認める。(第6条)
締約国は、児童の生存及び発達を可能な最大限の範囲において確保する。(第6条)
締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。(第12条)
締約国は、到達可能な最高水準の健康を享受すること並びに病気の治療及び健康の回復のための便宜を与えられることについての児童の権利を認める。締約国は、いかなる児童もこのような保健サービスを利用する権利が奪われないことを確保するために努力する。(第24条)
2 締約国は、1の権利の完全な実現を追求するものとし、特に、次のことのための適当な措置をとる。(e) 社会のすべての構成員特に父母及び児童が、児童の健康及び栄養、母乳による育児の利点、衛生(環境衛生を含む。)並びに事故の防止についての基礎的な知識に関して、情報を提供され、教育を受ける機会を有し及びその知識の使用について支援されることを確保すること。(f) 予防的な保健、父母のための指導並びに家族計画に関する教育及びサービスを発展させること。(第24条)
締約国は、児童の健康を害するような伝統的な慣行を廃止するため、効果的かつ適当なすべての措置をとる。(第24条)
締約国は、児童の身体又は精神の養護、保護又は治療を目的として権限のある当局によって収容された児童に対する処遇及びその収容に関連する他のすべての状況に関する定期的な審査が行われることについての児童の権利を認める。(第25条)
締約国は、児童の身体的、精神的、道徳的及び社会的な発達のための相当な生活水準についてのすべての児童の権利を認める。(第27条)
父母又は児童について責任を有する他の者は、自己の能力及び資力の範囲内で、児童の発達に必要な生活条件を確保することについての第一義的な責任を有する。(第27条)
締約国は、児童の教育が次のことを指向すべきことに同意する。(a) 児童の人格、才能並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させること。(第29条)(引用ここまで)
憲法と子どもの権利条約を根付かせる教育が危ない!
人権尊重を根付かせるのは平和構築の土台なのに!
これらのことを所沢市、とりわけ教育機関は考慮していたかどうか、このことが鋭く問われているのです。その点で、以下を視ると、問題アリと言わざるを得ません。子どもの権利条約と憲法を子どもに教え、身に付かせるということになっているかどうか、大いに疑問があります。
「自己流」的というか、日本政府の意向を受けた教育体系となっていないかどうか、ということです。国際社会の到達点と憲法を活かした教育機関として機能しているかどうか、という問題です。ここが曖昧であるからこそ、大人になっても、憲法を活かす国民、参政権を行使する国民という実像が極めて弱いと言わざるを得ないのです。
所沢市立教育センター http://www.tokorozawa-stm.ed.jp/
所沢市の教育の基本理念 子どもたちが持っている三つの宝を掘り起こし大きく育てます
「心身のたくましさ」 「未来を拓く知恵」 「ふるさと所沢を愛する心」
以上の「基本理念」は間違ってはいないものの、そこに流れているものが何か、このことについて、大人である教育関係者、市役所の職員、勿論議員が自覚的に行使しているかどうか!このことが最大のポイントと言えます。そのことは投票率の低さに歴然としています。
所沢市の人口は、平成26年12月末日現在の年齢別人口データ(PDF:78KB)にあるとおりです。http://www.city.tokorozawa.saitama.jp/shiseijoho/data/jinkou/jinkoutoukei/jinkoutoukei1/nenrei26.files/nenreibetu2612.pdf
人口34万3,083人、中学生までの子どもは、42,837人、人口の12.485%です。この12.5%の子らの、教育を受ける権利、健康権、幸福追求権、意見表明権を、27万8248人の大人はどのように考えているのか、浮き彫りになりました。
また子どものこころの中に人権を尊重する責任と権利の行使力を育てる大人の責任などなど、が投票結果に浮き彫りになりました。31.54%の投票率に!
これで、憲法を活かす国家ができるとは到底思えません!人権尊重主義が再生産されていないからです。これでは憲法平和主義が危機に陥るのは、ある意味当然のことと言わなければなりません。
投票に行かなかった市民の意向はどうだったでしょうか。子どもがどのような環境の下で教育を受けているかどうか、想像ができなかったのでしょうか。それにしても、所沢市民で、地元の小学校と中学校を卒業している市民は、学校がどのような状況下にあるか、想像可能だったのではないでしょうか。
そもそも、過酷な状況にあったからこそ、エアコンの設置が決まったのではなかったのか。そのことを不履行にしたことそのものについて、市民がどのように考えたか。そこに大きな分岐点があるように思います
多くの市民にとってみれば、関係のないことだったのか、です。小学生・中学生を持つ保護者、あるいはこれから小学校と中学校に通学する子どもを持つ有権者・大人だけの問題だったのか、どうかです。エアコン問題に該当しない68.46%の大人には関係ないということだったのかどうか、です。
子どものためのエアコン設置が市民の要求にはなっていなかったのは何故か!
もう一つあります。それはオキナワの経験が所沢市には、関係のないことだったのかという問題です。自衛隊基地と市民生活の矛盾は感じていないということでしょうか。学校の騒音より、自衛隊があるが故の「補助金」がメリットとして位置付けられているので関心が削がれてしまっているということなのでしょうか。
そのようなことを考えながら、一方では、今回の住民投票が、住民の要求とどこでどのように切り結んだものとして行われたのか、その点も検証しなければならないのではないかと考えているところです。このことは約7割の市民が、「子どものために」という視点に立つように訴えたかどうか、ということもあります。オキナワの苦悩を本土が寄り添うことができるか、オキナワも本土も同じだという目線です。これは原発立地地域とも共通する視点です。