安倍首相の憲法否定の手口に反撃を!
どんな小さなことでも徹底して国民の前に晒して!
この間の記事でも、安倍首相の国会答弁の手口について批判してきました。以下渡辺輝人弁護士の文章は大変参考になります。そこで、再度、この間の記事で書いてきたことを、改めてまとめてみました。安倍式憲法改悪の地ならしの手口は、以下のとおりです。
1.質問にまともに答えない。
2.自分の言いたいことを長々と話して争点をボカシて、スリカエ、ゴマカス。
3.それまで自分が使っていた言葉の概念を、少しずつ、拡大解釈して既成事実化を謀る。
4.自分の土俵に国民を引きずり込む。
5.実態・現実・歴史を黙殺した言葉の遊び・形式論理の枠で議論に持ち込む。
6.「仮定の話には答えられない」などと言いながら勝手な想定をでっち上げ自分の結論にねじ込む。
以上、この間の安倍派の手口をまとめてみました。キーワードは、スリカエ・ゴマカシ・デタラメ・大ウソ・トリックです。この視点で視ると、日々新聞・テレビで垂れ流されている安倍政権の政策が、トンデモナイ方向に、すなわち憲法改悪の下地づくりの一歩一歩として捉えることができます。
知らず知らずのうちに、憲法改悪のエスカレーターに乗せられているようなものです。この間マスコミが振り撒く言葉の代表的なコピーは、
「政治改革」「改革には痛みを伴う」「備えあれば憂いなし」「政権交代可能な二大政党政治」「政権選択」「政権公約」「政権交代」「第三極」「ねじれ解消」「一強多弱」「憲法改正」
などなど、たくさんあると思います。その政府が振り撒く「政策」を、鵜呑みにして、そのまま垂れ流すマスコミが、「世論」を形成して、自民党政権が温存されているのです。
以上の視点で、以下の渡辺輝人弁護士の文章を読んで戴ければと思います。納得します。特に「残業代ゼロ」に向けて、何を振りまいているか、昨日の共産党志位和夫委員長と安倍首相とのやりとりは、労働者・国民の命を切れ目なく殺している法案を出そうとしていることが浮き彫りになりました。
これについては、ブラック企業問題と合わせて、別稿で記事にします。
安倍君、言葉を慎みたまえ 渡辺輝人 | 弁護士(京都弁護士会所属)
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いやー、昨今の国会の安倍首相の発言。酷いですね。酷いのに大手新聞があまり取り上げないのでいくつかピックアップして見たいと思います。
「日教組、日教組」
2月19日の民主党の玉木議員の国会質問。精糖業界が傘下に置いている会社を通じてTPP交渉直前に西川公也農林水産大臣の政党支部に100万円の献金をしていた問題についての質問をしていたようです。TPP交渉では砂糖を自由貿易の例外とするかが焦点となっており、法的には、業界団体が迂回献金をする手法を許して良いのかかが問題なのです。ところが、質問中、安倍首相が「日教組」「日教組どうするんだ」と繰り返し不規則発言をし、議長にすら「やや、総理、静かに」とたしなめられる始末。質問者の玉木議員、安倍首相が質問と関係ない不規則発言を繰り返しているので、ブチ切れてます。下記動画だと20:55のあたりから問題の場面になります。
<iframe src="http://www.youtube.com/embed/OwcaabS8bos?rel=0&wmode=transparent" frameborder="0" width="100%" height="315"></iframe>総理大臣は国会質問に答える側の人間なので、ヤジはもちろん、野党議員が質問中に逆質問をする行為自体が「質問を質問で返すなあーっ!」という例のマナー違反なんですが、さらに教職員組合の名前を持ちだして非難するセンスも総理大臣としては大変下品で、憲法で定められた首相の職責の重さに悖る行為だと思います。安倍首相の中では日教組という組織はショッカーみたいな悪の組織の象徴なのかもしれませんが、それを口にして相手を攻撃した気になるのは、ほとんどネット上の落書きレベルですね。
憲法9条はどこへ行ったのさ
集団的自衛権に関する安倍首相の国会答弁も、もはや完全にぶっ飛んでいます。首相の答弁によると、ある国や勢力がホルムズ海峡に機雷を撒いたら、集団的自衛権を行使して、自衛隊が機雷を除去するんだそうですが(2月16日朝日)、その根拠は昨年7月の閣議決定にある「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないときに、必要最小限度の実力を行使することは~中略~憲法上許容される」という文言のようです。
この閣議決定自体が憲法違反であることはもちろんですが、安倍首相の答弁は、もはやこの閣議決定をダシにして、日本にとって何か不利益なことがあれば、自衛隊が同盟国と一緒に世界中どこでも武力行使できると言っているに等しく、そもそも憲法9条が武力行使を禁止していることと全く矛盾する答弁になってしまっています。安倍首相は同盟国が他勢力に対して先制攻撃して、その勢力が反撃してきた場合には自衛隊が参戦可能だ、という答弁もしており(2月2日日経「同盟国先制でも「行使できる」 集団的自衛権で首相が見解 」)、これでは、平和憲法を持っている国が、かえって世界有数の好戦国になってしまいます。内閣総理大臣が負っている憲法尊重擁護義務を完全に逸脱しているように見えます。
憲法24条は変な厳格解釈して同性婚を否定
一方、安倍首相は2月18日の国会答弁で「現行憲法の下では、同性カップルの婚姻の成立を認めることは想定されていない」と述べました(2月18日朝日新聞)。確かに憲法24条1項は「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。 」としていて、婚姻は「両性」(男と女)がするものだという文言に読めます。しかし、この規定の意味は、旧民法で結婚について親の許可が必要だったことを改め、カップル相互の同意のみで結婚できるようにしたことに意味があります。憲法は国民が国に対して有する権利の章典なので、憲法ができた当時、同性婚が想定されていなかったとしても、憲法が同性婚を否定したり、抑制的な態度を取っているとは到底思えません。有名な憲法の注釈書を読んでも、憲法24条のところには「同性婚の許容性」という項目すら存在しません。許容されて当然だからです。また、フランスがそうだったように、同性婚を認める前に、まず、同性間でも異性間でも利用可能なパートナー同士の相互扶助契約を立法することも可能でしょうし、そういうことを日本国憲法は何も否定しないはずです。
安倍首相の答弁は、憲法24条1項を「結婚は男と女しかできないんだ」という国民に対する義務規定だと捉えているようにも見えます。いずれにせよ、単に政策的にやりたくないだけのことを、日本国憲法のせいにする態度は法律家として許しがたいものがあります。
もっと批判を
上記はわずかな例ですが、今のマスコミを通じた報道は、安倍首相の常軌を逸した言動を伝えなかったり、大きな問題はないものとして政治論争の範疇としてしか伝えない傾向があります。しかし、我が国は日本国憲法を根本規範とする法治国家です。首相が国会で責任を果たさず、憲法を逸脱する発言を繰り返していることについて、もっと公然と批判がされるべきだと考えます。
労働時間規制除外を「時間でなく成果」と誤報する風潮について
渡辺輝人 | 弁護士(京都弁護士会所属)
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昨日の政府の労働政策審議会で、労働時間規制のエグゼンプション(除外)制度の実現を求める報告書及びそれに基づく法案作成に向けた「建議」が提出されました。この制度については、政府は「高度プロフェッショナル制度」と呼び、反対する労働組合や弁護士は「残業代ゼロ法案」とか、「過労死促進法案」とか呼んでいて、名称の奪い合いのような形になっています。
このような場合に、報道機関がどのような報道姿勢を取るかは非常に重要だと思います。そこで、この件に関する昨日以降の報道のうち、ネット上で確認できるものをチェックするとタイトルは以下のようになっています。
(NHK)成果で報酬の新たな労働制度創設へ報告書
(産経)「高度プロフェッショナル制」導入へ 厚労省、労働改革の報告書まとまる 28年4月の施行を目指す
(共同通信)専門職「成果で賃金」来春にも 労働側の反対押し切る
筆者の主観でマシな順に並べると、朝日>毎日>産経>日経>NHKと思われます。あくまで上記オンライン上の記事を比べた結果であり、各紙の朝刊は読んでいません。
前提となる建議の内容
労働政策審議会の建議の内容については厚生労働省のホームページに早速公表されています。興味のある方は原典を当たってみることをおすすめします。
労働政策審議会建議「今後の労働時間法制等の在り方について」を公表します
焦点となっているエグゼンプション制度などについて言えば、
(1)平均年収の3倍を相当程度(具体的に1075万円を想定)上回るいくつかの業種(金融ディーラー、アナリスト、コンサルタント、研究者など)について労働時間規制を除外する制度を導入
(2)a「提案型営業」、b「事業の運営に関する事項の実施管理とその実施状況の検証結果に基づく企画立案調査分析を一体的に行う業務」に、みなし労働時間制度である企画業務型裁量労働制を拡大
の二つが柱になっています。(2)の裁量労働制は実際に何時間働いてもあらかじめ決められた労働時間働いたものとみなす制度なので、半ば労働時間規制の除外制度です。
事実と異なる報道
一番酷いのはNHKです。冒頭から「働いた時間ではなく成果で報酬を決める新たな労働制度」と報道しますが、今回の建議に、成果で報酬を決めるための規定は一つもありません。(1)について言えば年俸1075万円の固定給でも導入可能です。また、時給制で年間の最低保障給を1075万円とする賃金体系でも導入可能です。時間で報酬を決める制度ですら導入可能なのです。(2)について言えば最低賃金の時給制労働者でも理屈上は導入可能です。賃金額も給与体系も関係ありませんね。一方、今の労基法の下でも、成果賃金は多くの事業所で取り入れられています。時給制ではなく賃金と労働時間が直接リンクしない月給制で働いている労働者の方がむしろ多いのではないでしょうか。
また、「一般の労働者」などという書きぶりも酷い。エグゼンプション制度の対象外の労働者が「一般」だと、対象となる労働者はまるで「特殊」な労働者みたいになってしまいます。労働者の分断です。そして、裁量労働制のうち、最も定義が曖昧で、従って濫用に危険性もある上記bについて何も触れていません。
日経新聞も酷いですね。「脱時間給」。しかし日経新聞が例としてあげる金融や商社に勤務する労働者で時間給の人なんかほとんどいないはずです。そして、裁量労働制の拡大には触れない。
共同通信の配信記事が酷いため、地方紙の紙面も酷くなっています。今朝の京都新聞は一面に大きな文字で「成果で賃金」と書いてあって、筆者はのけぞりました。
マシなのは朝日、ついで毎日
一方、見出しで実際の建議の中核部分の一部をかろうじて捉えているのは朝日新聞だと思います。文中も政府の宣伝文句をひと言も取り上げていません。(1)について建議されたのは労働基準法の労働時間規制の除外制度であり、日本の労働時間規制が民事的には残業代の支払いと一体になっている以上、朝日新聞の「残業代ゼロ」という言い方は建議の本質の一端を捉えています。ただ(2)については表面をなでるだけでかつbには触れない内容になっています。
また、毎日新聞は、見出しが政府宣伝の垂れ流しであるため点数が大きく下がりますが、(1)(2)の制度の本質的な問題である、長時間労働が労働者の健康と命をむしばむ点について言及しており、ここは好感が持てます。朝日がこの点に言及しなかったのは残念ですね。
読売新聞は昨日以降の記事をネットで発見できなかったので言及しませんが、過去の記事を読むと、日経等同様の「脱時間給」という見出しを使っています。
労働時間規制も残業代も命の問題なのだ
もともと(1)の法案は「ホワイトカラーエグゼンプション」と言われており、横文字で分かりにくいなら、「労働時間規制除外」などと的確に報道することも可能です。ほとんど一片の真実も含まれていない「時間ではなく成果で賃金」などという政府の宣伝文句を垂れ流すのでは報道機関としての役割を果たしているとは言えないはずです。客観報道が大事だというなら、政府がいう「時間ではなく成果」「高度プロフェッショナル」などの謳い文句が制度の実態とずれていることを客観的に報道すべきです。
また、(2)については、年収要件すらなく、現在でもシステムエンジニアという名のプログラマーなど、脱法的に導入されている疑いがあります。営業職や、新聞記事に書けないくらい定義づけすら漠然とした業務に導入可能となれば、その周辺で、無数の脱法的な制度導入が起こる可能性があります。この点について報道機関が言及しなかったり、表面的なことしか報道しないのは、それ自体が政府のおとり作戦に引っかかっているように見えます。
労働時間規制のエグゼンプション制度の問題点については、ブラック企業対策弁護団が昨日発表した特設サイト「ブラック法案によろしく」が一番分かりやすいと思います。佐藤秀峰「ブラックジャックによろしく」の漫画のコマを二次利用したものですが、説明部分は読まず、漫画部分だけ読んでも読み応えがありますよ。
このサイトの最後にも出てくる言葉を引用すると「残業代は長時間労働のブレーキだ!それが無くなれば一体何が起きる?これは単なる金の問題ではない 命の問題だ! 」。そう、残業代ゼロ法案は、長時間労働の歯止めをなくし、過労死を促進する命の問題なのです。まだ、実際の法案提出までは時間があるようなので、報道機関の報道姿勢を含めて、ガンガン追及していく必要があると思います。
弁護士(京都弁護士会所属)
1978年生。日本労働弁護団常任幹事、自由法曹団常任幹事、京都脱原発弁護団事務局長。労働者側の労働事件・労災・過労死事件、行政相手の行政事件を手がけています。残業代計算用エクセル「給与第一」開発者。基本はマチ弁なの何でもこなせるゼネラリストを目指しています。残業代を軸に社会と会社を分析する『ワタミの初任給はなぜ日銀より高いのか? ナベテル弁護士が教える残業代のカラクリ』(旬報社)発売中。(引用ここまで)