ギリシャ総選挙/安定政権で改革断行を
北海道新聞/2015/9/22 10:00
http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/opinion/editorial/2-0029134.html
ギリシャ総選挙で、チプラス前首相率いる与党、急進左派連合が第1党の座を維持した。
単独過半数には届かなかったものの、選挙前の連立相手だった独立ギリシャ人党との連立を継続する見通しだ。
欧州連合(EU)はギリシャに、増税や年金改革など財政再建策の実行を条件として、3年間で最大860億ユーロ(約11兆6千億円)に上る新たな金融支援を開始したばかりである。
連立交渉が難航し、EUの支援が中断するような事態はひとまず回避されそうだ。支援成功の条件は緊縮策の断行であり、そのためには内政の安定が欠かせない。
チプラス氏は国民の理解を丁寧に求め、野党にも協力を呼びかけて改革を遂行する責任がある。
そもそも急進左派連合は、今年1月の総選挙でEUが求める緊縮策の破棄を訴えて大勝した。チプラス氏は緊縮策の是非を問う国民投票まで強行した。
「反緊縮」の民意が示されたにもかかわらず、財政破綻の瀬戸際に立たされると、一転して緊縮策を受け入れ、土壇場でEUとの合意にこぎつけた経緯がある。
結局、与党の分裂を招き、チプラス氏は解散・総選挙という危険な賭けに打って出ることを余儀なくされた。軸足の定まらない態度を真摯(しんし)に反省すべきだ。
今回の総選挙では、与党に加え、最大野党の新民主主義党もEUとの合意の尊重を掲げ、緊縮策自体は争点にならなかった。
だが、改革が円滑に進む保証はない。過去最低の投票率は、政治不信と、先の見えない閉塞(へいそく)感の表れと言えよう。
シリアなどから欧州に向かう難民の急増を受け、移民排斥を主張する極右政党が議席を伸ばしたことも気がかりだ。
EU側も、支援策を肉付けしていく必要がある。これまでEUと足並みをそろえてきた国際通貨基金(IMF)は、今回の支援に参加する条件として、ギリシャの債務の大幅な軽減を挙げた。
IMFは関係国が元本カットなどを決断しない限り、債務返済のめどは立たず、結局、今回も失敗に終わるとみているようだ。
これは財政統合の伴わない通貨統合というユーロの根本的欠陥にかかわる問題だ。加盟国の財政支援を禁じる条項を盾に、ドイツなどは債務の減免を拒んでいる。
EUは来月にもギリシャの負担軽減策を協議するが、踏み込んだ対応を求めたい。(引用ここまで)
豪新政権発足/「準同盟」の関係再確認を
北國新聞/2015/9/22 4:05
http://www.hokkoku.co.jp/_syasetu/syasetu.htm
オーストラリアのターンブル首相率いる新政権が発足した。日本は近年、経済的な結びつきの強かったオーストラリアとの防衛協力関係も強化し、米国に次ぐ「準同盟国」に位置づけている。今夏には、海洋進出を強める中国をにらみながら、同盟関係にある米豪の合同軍事演習に陸上自衛隊を初めて参加させ、日米豪3カ国の連携を強化した。ターンブル政権でもこうした緊密な日豪関係を維持したい。
日豪経済連携協定(EPA)の締結や海洋安保での連携など、日豪関係が急速に深化したのは、親日のアボット前首相と安倍晋三首相の個人的な親密さに負うところも大きかった。ターンブル氏は同じ自由党でも、保守色の濃いアボット氏に対してリベラル派に属する政治家といわれ、安倍首相との政治的肌合いの違いも指摘される。できるだけ早く首脳会談を開き、準同盟国にふさわしい信頼関係を築いてもらいたい。
安倍首相とアボット氏が署名した昨年の共同声明は、日豪が「特別な戦略的パートナー」であることをうたっている。自由党きってのリベラル派といわれるターンブル氏も、市場経済や自由の価値を重んじ、米国のアジア重視政策は「地域の安定と平和的発展に死活的に重要」と支持し、中国の海洋進出についても「目的に透明性を持たせるべき」と主張してきた。南太平洋の島嶼(とうしょ)国への関与を強める中国の動きは、オーストラリアにとって安全保障上の脅威となっている。
経済面では中国との結びつきが強いため、ターンブル政権の対中外交は「政経分離」の原則を維持するとみられる。それでも、鉄鉱石など中国への資源輸出は陰りをみせている。中国人労働者の流入で自国民の雇用を奪われる恐れがあることなどから、野党側には中国との自由貿易協定(FTA)に抵抗感も根強く、議会での批准は必ずしも楽観できない。
オーストラリアにとって、安全保障だけでなく経済面にもおいても、日本との「特別な戦略的パートナー」関係をより深めていくべき状況にあるといえよう。(引用ここまで)