国立能楽堂で、金春流の「蝉丸」を観る。
舞の名手がシテをつとめるだけに、観るのを楽しみにしていた。
シテの“逆髪”は延喜帝の皇女ながら髪が逆立つ奇病のために心が乱れ、いつしか御所を抜け出し方々をさまよい歩くようになった、薄幸の女性である。
そのさまよい歩く様を描写したのが“道行”、流麗な節のついた謡にのせて華やかに舞う見せ場で、わたしも以前に二度、この件りを舞い仕ったことがある。
彼女はなんと言っても、不幸の宿命を背負った女性である。
華やかさのなかに、やはりその“陰”が漂っていなくてはならない。
緋色の大口袴姿も美しい名手の立ち姿に、陽炎のやうに立ち上るそれを確かに見た時、わたしは強く胸を打たれた。
そして、いつかもう一度、この曲に挑戦したいと思った。
舞の名手がシテをつとめるだけに、観るのを楽しみにしていた。
シテの“逆髪”は延喜帝の皇女ながら髪が逆立つ奇病のために心が乱れ、いつしか御所を抜け出し方々をさまよい歩くようになった、薄幸の女性である。
そのさまよい歩く様を描写したのが“道行”、流麗な節のついた謡にのせて華やかに舞う見せ場で、わたしも以前に二度、この件りを舞い仕ったことがある。
彼女はなんと言っても、不幸の宿命を背負った女性である。
華やかさのなかに、やはりその“陰”が漂っていなくてはならない。
緋色の大口袴姿も美しい名手の立ち姿に、陽炎のやうに立ち上るそれを確かに見た時、わたしは強く胸を打たれた。
そして、いつかもう一度、この曲に挑戦したいと思った。