国立能楽堂で、金春流の「蝉丸」を観る。
舞の名手がシテをつとめるだけに、観るのを楽しみにしていた。
シテの“逆髪”は延喜帝の皇女ながら髪が逆立つ奇病のために心が乱れ、いつしか御所を抜け出し方々をさまよい歩くようになった、薄幸の女性である。
そのさまよい歩く様を描写したのが“道行”、流麗な節のついた謡にのせて華やかに舞う見せ場で、わたしも以前に二度、この件りを舞い仕ったことがある。
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- 嵐悳江(あらし とくえ)──手猿樂師にして、傳統藝能創造家にして、鐵道愛好家にして、古道探訪者にして、文筆家氣取り。
雅号は「李圜(りかん)」。
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