「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

      マラソンの佐藤選手は、負けたって勝者 

2008-08-25 05:50:18 | Weblog
五輪のフィナーレを飾る男子マラソンをテレビで見た。スタートしてすぐ日本選手
が先頭グループのスピードについていけず脱落した。これでは勝ち目がないと思
い、テレビを消した。それでも結果は如何と、2時間後、再びチャンネルをマラソン
にあわせた。

優勝したのはケニアのワンジル選手だった。このケニア生れ、日本育ちの21歳の
青年にとっては、暑さもコースも問題ではない。僕には彼がテープをきった後、右
手で十字をきったのが印象的だったが、さらに彼が日本人記者の質問に答えてい
った言葉により感激した。”日本で学んだこと、それは、きつくともガマン、ガマン”
走る技術論ではなく、精神論だった。

完走した最後のランナー、78番目に会津若松生れの佐藤敦之選手が”加油、加油”
の観衆の声援の後押しされてゴールに入ってきた。そして深々とコースと観衆に頭を
下げた。ストイックな走法から”走る修行僧”というあだ名があるそうだが、その面目
躍如の風景だ。ハーフマラソンの記録保持者の選手がビリで競技会場を一周するこ
とはなかなか出来ないことだ。アナウンサーは”会津魂”と呼んでいた。

野球で完敗した星野監督が帰国後の記者会見で”強いものが勝つのではなく、勝つ
たものが強い”といっていた。日本には昔から"敗軍の将、兵を語らず”という諺が
ある。敗将は負けた原因をあれこれ言ってはいけないーという意味だ。星野監督は
佐藤選手の完走の姿を見たのだろうか。勝った者だけが強いのではない。負けたっ
て佐藤選手みたいな勝者もいる。