蒲鉾型の屋根で親しまれてきた東急東横線の渋谷駅が16日の始発から地下5階に引越しし、東京メトロ副都心と相互運転を開始した。東横線は渋谷の一つ手前の代官山を過ぎてから地下に入り副都心線の渋谷駅に結ばれる。これに先立って昨日、僕は85年の地上駅の歴史を閉じる駅舎に別れを告げてきた。
僕の82年の人生の中でも渋谷駅は懐かしい駅の一つだ。昭和23年から40年まで通学、通勤の乗換駅としてお世話になった。戦後すぐの時代、渋谷駅界隈はまだ一面焼け野原で、駅前の東横百貨店(現在の東急デパート東館)の黒い建物だけがぽつんと建っていた。百貨店には売るものも少なく幾つか映画館が入っていた。ハチ公の銅像も今の場所ではなく、都電の終点、JRの駅舎の前であった。
東横線渋谷駅の移転とともに、この東館も営業を停止し、食品名店街として人気のあった「のれん街」も別の場所に移転するそうだ。そしてこの跡には2017年に高さ180m、33階建ての複合高層ビルが建つという。さらにJRの山手線、埼京線のフォームが整備され、東京メトロ銀座線、半蔵門線へのアクセスも便利になるらしい。
戦前、僕は渋谷の現在スペイン坂と呼ばれている地区に親戚の家があり、よく母親に連れられて代々木の練兵所へも遊びに行った。当時渋谷は赤坂の兵舎に近いこともあって兵隊さんの街であった。戦後も東京五輪後、NHKが内幸町から引っ越してくるまでは、銀座、浅草、新宿、池袋ほど賑やかではなかった。まして若者たちに人気のある町ではなかった。
東横線の渋谷駅の移転をステップに渋谷は、さらに大変わりしてゆこう。この70年の渋谷を見てきた僕には感無量なものがある。