
ミャンマーの田舎町のレストランで食べていると、
女の子が近づいて来た。
近づく、と言っても、興味のある距離をとりながら
決して側には寄って来ない。
とても身なりの貧しい子。
服はやぶれて黒ずんで、足も真っ黒だった。
私は、「日本のだよ」といって飴をあげた。
もらった女の子は、無表情にふわりといなくなった。
食事が終わり外に出ると、女の子が待っていた。
あきらかに待っていたのだが、待っていた素振りは見せない。
側に座って話しかけても、返事もないしこっちも見ない。
言葉も通じないし、しばらく側に座っていることにした。
1分くらいたったろうか。
女の子がこちらをゆっくりと振り向いて、何か言った。
表情は変わっていなかった。
ただ、私には何を言ったのかがわかった。
そうか、それが君の仕事なんだね。
私はサイフから1000チャット(およそ100円)札を取り出し、
折り畳んで両手で差し出した。
彼女は、亀のようなゆっくりした動きでそれを受け取ると、
立ち上がって居なくなった。
一度も振り向かないし、
一度も笑わないまま。
………………
親が教えたか、自ら編み出したのか、
哀れな表情をして物乞いする子どもに多く出会う。
彼女はギリギリのプライドでそれをせず、
顔色を変えずに、せいいっぱい仕事をしていたような気がした。
彼女を良く考えすぎかもしれない。