駅で、父と待ち合わせをした。
ナレーションが書き終わらないので、2日不眠のまま
早朝の駅に駆けつける。
しかし、なんでこんなに忙しい時に、しかも早朝にやってくるのか?
今がどれだけ大変か、私がどれだけ疲れているのか、分かっていないのだ。
体中を黒い思いがかけめぐる。
通勤ラッシュの駅で、昔より小さくなった父は私に山ほどのリンゴを手渡し、
心配そうな、嬉しそうな目を向けた。
60の半ばを過ぎ、おそらくそう多くは会えないであろう父と子。
ますます忙しくなった私は、実家に顔を出すこともままならなくなった。
そんな私に会いに、時々こうして果物を持ってやってくる。
そして他愛のないことを数分話して、また電車で帰ってゆく。
人ごみの中を、大量のリンゴをかかえて歩いて帰る。
ふしぎと黒い思いは霧消して、
大掃除を予定していた正月休みで実家に行こうかと考えているのだった。