◇ブルースカイ(1994年 アメリカ 101分)
原題/Blue Sky
監督/トニー・リチャードソン 音楽/ジャック・ニッチェ
出演/ジェシカ・ラング トミー・リー・ジョーンズ クリス・オドネル パワーズ・ブース
◇Blue Skyの意味
青空、とかいうのはたしかに意味のひとつなんだけど、この場合、もうすこし他の意味がありそうだ。で、やっぱりあった。Blue Skyは、とくにアメリカだと、漠然とした、とか、具体性のない、とかいう意味を持つ。そこから発展して、無価値、無駄、非実用的、とかいう意味になるらしい。なるほど、だったら、この映画における題名はなにを指してるんだろう?
トミー・リー・ジョーンズの演じた、うすぼんやりした夫なんだろうか?
それとも、ジェシカ・ラングの演じた、お色気たっぷりのちょっとキレ気味の妻なんだろうか?
どちらも無価値な人間のようにおもえるんだけど、この夫は、それでも、原爆実験に巻き込まれて被爆したカウボーイを放っておけず上司に立ち向かうし、この妻は、その上司と浮気をしながらも、陰謀によって精神病院に送られて廃人扱いされる夫のために戦うんだから、漠然と無駄な人生を送っているような人間でも、ときとして、真っ青な空のように晴れ晴れとした人生の一時に立つことができるっていうような主題が、この題名には秘められてるんだろね。もちろん、いつの時代も軍部は真実を隠蔽したがるという寓意もあるんだろうけど。
ただ、この映画、4年間もお蔵入りしてた。ジェシカのアカデミー賞はたしかに好演ながら、諸事情からお蔵入りしていた事への反発その他があったようにも想えちゃう。ま、反核っていう問題を、家族映画にしちゃう手腕はたいしたもんだ。
ちなみに、監督のトニー・リチャードソンは、バネッサ・レッドグレイヴの元夫だ。となると、いよいよ、反核の主題が濃厚になってくるんだけど、残念なことに映画が公開される3年前に亡くなってる。封切を見てから真っ青な天に上りたかったんだろうにね。