Kinema DENBEY since January 1. 2007

☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

お早よう

2007年07月16日 19時14分31秒 | 邦画1951~1960年

 ◇お早よう(1959年 日本 96分)

 監督/小津安二郎、音楽/黛敏郎

 出演/久我美子 笠智衆 三宅邦子 杉村春子 沢村貞子 東野英治郎 長岡輝子

 

 ◇屁

 あんまり品の好いギャグじゃないけど、小津はどうしても使いたかったらしい。

 これといって印象の残らないのはやっぱりコメディとしては色褪せた観があるからかもしれない。というより、今の時代とは相容れないところが出てきちゃってるんだろうね、とくに日本の戦後と現代とでは。

 それにしても、こうした新興住宅地の長屋ってのはほんとにセットじみた作りだったんだろうか。ああ、でもおもってみれば、当時の川沿いの土手ちかくの住宅って、こういう作りが多かったかもしれない。

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彼岸花

2007年07月15日 19時03分13秒 | 邦画1951~1960年

 ◇彼岸花(1958年 日本 118分)

 監督/小津安二郎 音楽/斎藤高順

 出演/佐分利信 有馬稲子 山本富士子 久我美子 田中絹代 笠智衆 佐田啓二

 

 ◇赤

 小津の初カラー作品で、アグファだという。

 なるほど、たしかに赤が効いてる。というより小津の画面をおもいだしてみれば、網膜に残るのは赤だね。まあ題名も彼岸花だし、赤が効いてなかったらどうしようもないものね。

 そんなことはともかく、いつの時代も娘が自分の前からいなくなってしまうという過酷な状況に、男は我を忘れてしまうんだね。ここでは佐分利信も中村伸郎も笠智衆もみんなおんなじ立場ってのが悲哀をよけいにそそるように設定されてるんだね。

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晩春

2007年07月14日 18時35分08秒 | 邦画1941~1950年

 ☆晩春(1949年 日本 108分)

 監督/小津安二郎 音楽/伊藤宣二

 出演/原節子 笠智衆 月丘夢路 杉村春子 桂木洋子 三宅邦子 宇佐美淳

 

 ☆床の間の壺

 まあこんなものの意味するところは小津にしかわからないわけだから、それをくだくだと推論したところで始まらない。小津が文書にでもしておいてくれていればいいし、でもたとえそうであっても本当のところを書き残しているかどうかはわからない。

 でも、個人的にいえば、父と娘というのは、余人の入り込めないものがあり、それは性的なものであろうとなかろうとどうしようもなく繋がっており、母と娘よりも切っても切れないところがあるのではないかとおもったりする。そんなところだけど、それがこの作品の印象を左右するかといえば、そうとはおもえない。

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喜びも悲しみも幾歳月

2007年07月13日 18時10分17秒 | 邦画1951~1960年

 ◎喜びも悲しみも幾歳月(1957年 日本 160分)

 原作・脚本・監督/木下惠介 音楽/木下忠司

 出演/高峰秀子 佐田啓二 中村賀津雄 田村高広 桂木洋子 夏川静江 仲谷昇 有沢正子

 

 ◎若山彰の歌が懐かしい

 中学校のときだったか、修学旅行になぜか歌集を持っていった。当時、キャンプだの、移動バスの中だの、なんだかいろんなところで合唱することが多くあって、そのとき、たいがい歌集が渡された。先生たちの手作りなんだけど、たいがい、ロシア民謡だのフォークソングだのといったたぐいのものばかりで、まあ、そういうことで、軍歌やら流行歌やらは当然、入っていなかった。そんなことはどうでもよくて、その中にこの映画の主題歌があった。

 ぼくは当時、この作品を観たことがなかったんだけど、なんだかその歌の影響か、えらくその内容が好きで、映画を観る前から好きな映画になってた。実際に観たのはずいぶんと経ってからのことだったけど、社会に出てからリメイクされた。木下惠介の作品は『二十四の瞳』もそうだけど、リメイクされるのがブームだったんだろうか。

 で、そのリメイクに、ひとり、若手の女優さんが出た。篠山陽子さんという人で、初めてお会いしたとき、とても淑やかで、その綺麗さに驚いた。聞けば、この作品のリメイクに出演したという。なんでかといえば、彼女のお母上はこちらの旧作に出演されていたとのことで、誰なのかとおもえば有沢正子だった。へ~っとおもった。

 篠山陽子さんはそれからすぐ『はいからさんが通る』に出演して、南野陽子ちゃんの友達役だったんだけど、やっぱりどえらく綺麗だった。でも、その後、たしか米国に留学してハリウッドを訪ねたはずで、でも、まもなく女優はやめてしまったんじゃなかったかな。惜しいなあと、ずっとおもってる。

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二十四の瞳

2007年07月12日 17時40分58秒 | 邦画1951~1960年

 ☆二十四の瞳(1954年 日本 156分)

 監督・脚本/木下惠介 音楽/木下忠司

 出演/高峰秀子 天本英世 笠智衆 田村高広 月丘夢路 夏川静江 浦辺粂子

 

 ☆岬の分教場

 戦争を知らないぼくは、この作品をリアリズムをもって鑑賞することは難しい。

 だから、大学時代に初めて観たときもさほど軍国主義うんぬんについて怒りめいたものは感じられず、なんというのか天災のようなものに近いような、そんな印象を受けた。長じてから、というより年を食ってからそうでもなくなったけど、甘っちょろい大学生だった頃は、恥ずかしながらそんなものだった。

 で、話は変わるけど、この岬の分教場に、大学時代、ふとしたことから訪れることがあった。

 宮下さんという、土庄の港の近くのお宅のお嬢さん、たしか典子さんといわれたか、もうずいぶんと昔の話だけれども、ちょうど、大阪から帰郷された日に偶然そちらへ伺い、翌日、分教場を案内してくださった。ありがたかった。あとにもさきにも、小豆島へはそのときしか行ったことがなく、宮下さんへのお礼も告げられないまま、時を過ごしてしまったが、皆さん、お元気なのだろうか?

 ちなみに、小学校ではないけれども、幼稚園の同窓会はしたことがある。卒園して半世紀経った日、ぼくたちは年少組から年長組へ上がる際にご結婚された先生を訪ね、浜松まで出かけ、同窓会をした。ぼくたちは先生のことが大好きで、ちょうど、大石先生のような方だったこともあり、その同窓会のとき、しきりにこの映画がおもいだされたものだ。

 

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戦場のピアニスト

2007年07月11日 17時57分18秒 | 洋画2002年

 ◎戦場のピアニスト(2002年 ポーランド、フランス 148分)

 原題/The Pianist

 監督/ロマン・ポランスキー 音楽/ヴォイチェフ・キラール

 出演/エイドリアン・ブロディ トーマス・クレッチマン ジェシカ・ケイト・マイヤー

 

 ◎ウワディスワフ・シュピルマン『ある都市の死』

 1939~45年、廃墟の中の主題。

 いいかえれば、ユダヤ人のピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマンとナチスドイツの将校ヴィルム・ホーゼンフェルト大尉の物語。

 第二次世界大戦における人間模様は、ナチスドイツのすべてが、ユダヤ人すべてを迫害したというのではなく、ナチスの将校にもさまざまな人間がいたということ、迫害されたユダヤ人の中にもいろんな人間がいたということ、つまり、人間は単純な型に嵌めてしまっていいものではないということを、この作品は主題のひとつにしている。

 ポーランド人のウワディスワフ・シュピルマンの自叙伝だから、事実を描いているのは当たり前なんだけど、その中に登場する、かれの命を助けたヴィルム・ホーゼンフェルトに興味がいく。ホーゼンフェルトはナチスの信奉者でありながら、ユダヤ人を助け、人類の生み出した音楽という分野に多大な貢献をした。にもかかわらず、ソ連によって強制連行され、やがて死を迎えさせられた。こんな皮肉な話があるんだろうかっていう主題もある。

 さらには、いかに芸術的に優れていても究極的な状況に追いこまれると、尊厳よりも生に執着してしまうのが人間だけど、同時に、過酷な情況でも、至高の芸術を求めずにはいられない本能を持っているのが芸術家だ、という主題もあるんだろう。

 ポランスキー自身、ゲットーの体験者であるから、いつかはその、忘れようにも忘れられない体験を映像化しなくちゃいけない、というように考えていただろうし、そういうことからいえば、最大の主題は、おのれの過去のおのれなりの清算にあったのかもしれないね。

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サイン

2007年07月10日 13時59分25秒 | 洋画2002年

 ◇サイン(2002年 アメリカ 107分)

 原題/Signs

 監督・脚本/M・ナイト・シャマラン 音楽/ジェームズ・ニュートン・ハワード

 出演/メル・ギブソン ホアキン・フェニックス ロリー・カルキン M・ナイト・シャマラン

 

 ◇ペンシルバニア州バックス郡

 この難しい映画の主題はなんなのって訊かれたら、たいていは「家族の絆」とか「信頼」とかっていう答えが返ってくるかもしれない。

 でも、それだけだろか?

 不条理からの蘇生とかって答えはないんだろうか?

 サインというのは不条理な死を迎えてしまった妻が、残された家族にあてた魂の復活へのサインで、現実にいくら語っても答えてくれない死人が実は答えてくれている、という事を理解して初めて新たな人生を歩みだせるという、一種の哲学映画なんじゃないかっておもってるんだけど、どうかしら?

 まあ、そんなこともおもったりしたんだけど、かれらは大きな箱庭の中の住人みたいなもので、見ている途中は、こんなことを考えてた。かれらと外界とをつないでいるのはテレビだけっていうのが、なにか特別な意味は持ってないんだろうか?

 テレビで報道されているのは、世界中にエイリアンが押し寄せてきたっていう情報なんだけど、これ、ほんとうのことなんだろうか?

 家族以外の誰かがそういう報道番組を流して、かれらをパニック状況に追い込んでいるんじゃないのか?

 だから、登場してくるエイリアンも実は知り合いが仮装していることで、妻の死に際に「見て、振って」と言い遺しているのを耳にした友人たちが、神の存在を信じなくなってしまったメル・ギブソンとその家族を立ち直らせようと、たくみに仕組んでいるんじゃないのか?

 でも、どうやら、ちがうらしい。ただ、エイリアン騒ぎがかれらの周辺だけで起こっているかどうかについては、この映画はなんの言及もしていない。

 つまり、もしかしたら、かれらを包み込んでいる異常な状況は、亡き妻が仕組んでいるものなのではないのか?

 友達がやっているんじゃなくて、妻がやっているとしたら、納得がいく。世界は滅亡に向かってなどいないし、地球が異星人に侵略されているわけでもない。そういう嘘の状況を、死んだことでテレビの電波を操作することのできるようになった妻が、すべてを仕組んでいるんじゃないのか?

 なんてことを、観終わってからおもった。

 最後に、メル・ギブソンは、こんなことに気づかされる。

「この世の中に偶然は存在しない。すべての事象に意味がある。一見、無意味に思えることも、実は、神が与えたもうたもので、真実を伝えるためのサインなのだ」

 妻の死も、弟のメジャー・リーガーへの挫折も、息子のぜんそくも、異星人の襲来も、異星人が水が弱点だという認識も、なにもかも意味がある。その意味のもたらすものは、残された夫と家族の復活なのだ、ということだよね。よくわからないけど、どうなんだろ?

 ちなみに、トウモロコシ畑がやけに好い雰囲気を醸し出してる。

 トウモロコシって、霊魂が宿り易いんだろうか?

『フィールド・オブ・ドリームス』もそうだったけど、幽霊たちって、トウモロコシ畑の中から現れない?

 なんだか、日本人にはわからない霊的な静けさがあるのかもね。

 奥さんの魂は、あの畑に漂ってるんだな~。たぶん。

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レッド・ドラゴン

2007年07月09日 11時49分17秒 | 洋画2002年

 ◎レッド・ドラゴン(2002年 アメリカ 125分)

 原題/Red Dragon

 監督/ブレット・ラトナー 音楽/ダニー・エルフマン

 出演/アンソニー・ホプキンス エドワード・ノートン エミリー・ワトソン

 

 ◎これ、何回目の映像化?

 そうおもってしまうくらい、アメリカ国内でトマス・ハリスの原作の人気は凄いみたいだ。

 とはいえ、ぼくは、

「監督の撮りたい物を撮るのが本来あるべき映画の姿じゃないか」

 っておもってるから、この原作に惚れ込んだ監督が沢山いたんだって受け取りたい。

 で、観客としてのぼくらは、もう『羊たちの沈黙』からずっと、アンソニー・ホプキンスの怪物のような演技が愉しみで仕方がない。レクター博士が憑依ってるんじゃないかっておもうくらい凄い。

 ただ、今回はエミリー・ワトソンの印象がものすごく強い。まあ、これはハリウッドの得意技といってもいいんだけど、心理活劇で「見えない」という枷は、まさに米映画の独壇場で、本作もいうにおよばず、上手だった。

 ただ、愛する相手への信頼と疑惑が揺らいでゆく様はたしかに良だけど、大団円の処理に少し工夫があれば好かったのにと、思わず悔やんでしまう面がないでもない。

 でも、悔しいとおもうくらい良い出来栄えだったっていうことなんだろうね。

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影武者

2007年07月08日 10時52分43秒 | 邦画1971~1980年

 ☆影武者(1980年 日本 国内版180分 海外版159分)

 英題/Kagemusha

 監督/黒澤明 音楽/池辺晋一郎

 出演/仲代達矢 山崎努 萩原健一 大滝秀治 室田日出男 根津甚八 隆大介

 

 ☆動乱の戦国を巨大なる幻がゆく

 上記は初めて「影武者」の広告が掲載された時の物。

 浪人していたときだったか、

「黒澤が復活するのか」

 という驚きと興奮に身が震えた。

 撮影に入ったのは、ぼくが大学に入ってからだった。当時所属していた学生サークルもその興奮は蔓延していて、先輩たちは、みんな、前年にオーデションを受けていた。そりゃあ、黒澤の映画に出られるんだから、受けるだろう。

 知り合いの中でいちばんだったのは同級生の女子で、彼女は浪人していたにもかかわらず、果敢にオーデションを受けていたらしい。このときほど、東京の浪人生を羨ましくおもったことはなかった。まあそれは余談だが、彼女は凄かった。最終審査の10人まで行き、桃井かおりと倍賞美津子に敗れた。この最終審査はぼくらが入学してまもない頃、たしか5月くらいだったろうか。ともかく、黒澤に直に面接してもらい、受け答えをしたんだとか。たいしたもんだ、とおもった。

 ぼくはといえば、田舎から身ひとつで上京し、6畳ひと間のアパートで生活し始めたばかりの右も左もわからない若造だった。東京と地方は、あまりにも懸け離れすぎてた。

 映画が公開されてから、ぼくはこの映画の話題になると孤立した。誰もが『影武者』は認めなかった。実は、社会に出てからも『影武者』の話題になると孤立した。なぜって、ぼくひとりがおもしろかったと断言して憚らなかったからだ。

 当時『影武者』は散々だった。

 酷評だった。さっきの最終審査まで行った同級生の女子だけはまあ認めてたけど、この彼女の高校時代の同級生などは「歴史に詳しい人が見たら、史実とまるで違うんだって。それに黒澤の映画って昔は凄かったけど、今はつまんないらしいし、だから、うちのおじさんとか、そんなのは見ても仕方がないっていってる」とかいう始末で、こういう意見にぼくは猛烈に腹を立ててた。

(映画なんだから、史実と違って当たり前だろ)

 とか、

(だいたい史実なんてものがどこにあるんだ。歴史の真実なんか誰も知らないんだぞ)

 とか、

(こういうとんちんかんな連中がいるから日本はまともに映画が評されないんだ)

 とか、

(誰だって年をとれば趣向が変わる。赤い映画を撮ってた人間が青い映画も撮るさ)

 とかおもい、いろんなやつと毎回のように論戦し、持論を展開させてた。

 ま、そんな思い出はさておき、やはり、銀幕で見ると良えわ~。

 ただ、前に見た時より、演出の古さと力みすぎが目立ってきたのが悲しいね。

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ブルースカイ

2007年07月07日 18時22分26秒 | 洋画1994年

 ◇ブルースカイ(1994年 アメリカ 101分)

 原題/Blue Sky

 監督/トニー・リチャードソン 音楽/ジャック・ニッチェ

 出演/ジェシカ・ラング トミー・リー・ジョーンズ クリス・オドネル パワーズ・ブース

 

 ◇Blue Skyの意味

 青空、とかいうのはたしかに意味のひとつなんだけど、この場合、もうすこし他の意味がありそうだ。で、やっぱりあった。Blue Skyは、とくにアメリカだと、漠然とした、とか、具体性のない、とかいう意味を持つ。そこから発展して、無価値、無駄、非実用的、とかいう意味になるらしい。なるほど、だったら、この映画における題名はなにを指してるんだろう?

 トミー・リー・ジョーンズの演じた、うすぼんやりした夫なんだろうか?

 それとも、ジェシカ・ラングの演じた、お色気たっぷりのちょっとキレ気味の妻なんだろうか?

 どちらも無価値な人間のようにおもえるんだけど、この夫は、それでも、原爆実験に巻き込まれて被爆したカウボーイを放っておけず上司に立ち向かうし、この妻は、その上司と浮気をしながらも、陰謀によって精神病院に送られて廃人扱いされる夫のために戦うんだから、漠然と無駄な人生を送っているような人間でも、ときとして、真っ青な空のように晴れ晴れとした人生の一時に立つことができるっていうような主題が、この題名には秘められてるんだろね。もちろん、いつの時代も軍部は真実を隠蔽したがるという寓意もあるんだろうけど。

 ただ、この映画、4年間もお蔵入りしてた。ジェシカのアカデミー賞はたしかに好演ながら、諸事情からお蔵入りしていた事への反発その他があったようにも想えちゃう。ま、反核っていう問題を、家族映画にしちゃう手腕はたいしたもんだ。

 ちなみに、監督のトニー・リチャードソンは、バネッサ・レッドグレイヴの元夫だ。となると、いよいよ、反核の主題が濃厚になってくるんだけど、残念なことに映画が公開される3年前に亡くなってる。封切を見てから真っ青な天に上りたかったんだろうにね。

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ロード・オブ・ザ・リング

2007年07月06日 17時31分28秒 | 洋画2001年

 ◎ロード・オブ・ザ・リング 旅の仲間

 (2001年 ニュージーランド、アメリカ 劇場版178分 SEE208分)

 原題/The Lord of the Rings: The Fellowship of the Ring

 監督/ピーター・ジャクソン 音楽/ハワード・ショア

 出演/イライジャ・ウッド リヴ・タイラー ケイト・ブランシェット オーランド・ブルーム

 

 ◎昔の少年の憧れ

 大学時代、読みたいんだけど読むのを躊躇し続けた小説がある。

 そう、トールキンの『指輪物語』だ。

 だって超大作で、しかも文字がちっちゃくて、難しそうで、日頃、本をまったく読まないぼくにしてみれば、とてもじゃないけど挑戦するのも憚られる代物だった。結局、読まずじまいのまま大学を出て、もっと本を読む時間のない社会人になってしまった。

 だから、いつものとおりながら、無知と無教養をさらすようだけど、原作は読んでない。

 でも、人の噂に、こいつを映画化するのは無理だと聞いてたから、映画が公開されたとき「へ~そういう時代が来たんだなっておもった。ま、そんなぼくがいまさら筋立てを書いたところで仕方ないし、誰でも知ってることをくだくだ書く気はない。

 にしても、ちからをもたない主人公というのは、きわめて魅力的な基本設定なんだけど、CGに頼らざるを得ないのかな~とかおもってたら、人間とホビットとの場面はCGじゃないんだね。スケールダブルで、いくらでも可能なんだね。

 いや、なんていうか、もちろん、最新のコンピュータ技術を駆使してるのは当然として、CG全盛の時代に実写に拘った絵作りは、好きだわ。

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馬鹿が戦車でやって来る

2007年07月05日 13時51分18秒 | 邦画1961~1970年

 ◇馬鹿が戦車でやって来る(1964年 日本 93分)

 監督・脚本/山田洋次 音楽/團伊久磨

 出演/ハナ肇 岩下志麻 犬塚弘 小沢昭一 高橋幸治 飯田蝶子 松村達雄

 

 ◇ばかがタンクでやってくる

 戦車は、戦後の一時期まで「タンク」と呼ぶのが一般的だったんだろうか?

 それはよくわからないけど、このとっぱずれた設定は混沌とした時代ならではなのかもしれないね。ちなみにこのタンクの名称は「愛國87号」で、命名は誰なんだろう?

 やっぱり山田洋次なのかな?

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栄光への脱出

2007年07月04日 18時50分38秒 | 洋画1951~1960年

 ◇栄光への脱出(1960年 アメリカ 208分)

 原題/Exodus

 監督/オットー・プレミンジャー 音楽/アーネスト・ゴールド

 出演/ポール・ニューマン エヴァ・マリー・セイント ラルフ・リチャードソン サル・ミネオ

 

 ◇1948年5月15日、イスラエル建国

 ぼくが小学校の低学年の頃、カッパコミックスの『鉄腕アトム』の最終巻で、前後篇からなる『青騎士の巻』というのがあった。ロボットの国をつくるために人間に対して反乱を引き起こす物語なんだけど、子供心にも宗教や人権などの問題が妙にリアルで、やけに興奮した。

 その中で、ユダヤ人がイスラエルを建国する話が例にとられる。青騎士の台詞の中にあって、当時のぼくはイスラエルという国が何処にあるのかも知らなかったんだけど、なんだか、とてつもないことをした人達がいるんだな~とだけおもってた。だからだろう、その後もずっとイスラエルという国名だけは忘れなかった。

 で、なんで、手塚治虫は『青騎士』を描いたのかって話だ。

 もしかしたら、この作品の影響があったんじゃないか?と。時期的には、この作品が封切られて5年後に『青騎士』は書かれてる。つまりは、それだけ、この作品は影響力を持っていたことになるんだろう。ただ、それは1960年代の話で、イスラエルが建国されて半世紀以上を経過した今、果たして、当時の建国の仕方はどうだったんだろうと、ちょっとおもわないでもない。そんなことを考えてる人間が見るもんだから、すこし斜めな意見になる。

 たしかに、イスラエルの建国前夜、流血を伴わないエクソダス号のような事件はあったんだろうけど、映画のラストから英軍撤退と同時に建国されるその日までに、大量の武器がイスラエルに送りこまれるわけだから、映画はあまりにも『十戒』を意識しすぎて、綺麗になりすぎてる気もしないではない。

 もとはといえば、大英帝国の二枚舌が招いたことで、それがこんにちまで災禍を生んでいるというのは、あまりにも辛い事実だ。いくらなんでもこれはないだろうとおもえたのは、アラブ人を組織先導しているのがナチスの残党という設定で、これが事実だったらぼくの無知さ加減が露呈されることになるんだけど、もしも絵空事だったら、ドイツ人は好い面の皮ってことにならない?

 誰かを悪役にしなければおさまらなかったってのもわからないではない。でも、いくらなんでもナチスがここで登場するの?とはおもった。

 ただ、主題曲はぼくが子供のときからよく巷で流れてた。だから、映画を観る遙か前から知ってた。このインストルメンタルは、文句なしに当時の名曲だとおもうんだよね。

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ヒドゥン

2007年07月03日 17時05分56秒 | 洋画1981~1990年

 ◇ヒドゥン(1988年 アメリカ 96分)

 原題/The Hidden

 監督/ジャック・ショルダー 音楽/マイケル・コンヴェルティーノ

 出演/マイケル・ヌーリー カイル・マクラクラン クラウディア・クリスチャン

 

 ◇見直すたびに色褪せる

 こんなにあっけらかんな映像だっけ?

 と、見直すたびに拍子抜けしそうな色調におもえてくるのは、どうしてなんだろう?

 公開されたときは、それなりに愉しめた。

 人間の口から体内に入り込んで寄生するナメクジ形エイリアンは、その人間の抱えている欲望をがまんすることなく発散させる。欲望は人によってちがうから、コンビニの現金を奪ったり、ラジカセを強盗したり、ヘビメタをけたたましく掻き鳴らしたり、マシンガンを連射したり、まあ、かなりみみっちくもせこい欲望が展開される。

 これを追っているのが宇宙警備隊みたいな異星人で、復讐のために追跡してきたんだね。

 この異星人は捜査中に死んでしまったカイル・マクラクランに憑依する。

 つまり、人間の姿を借りた形で、わるもん異星人といいもん異星人の追跡になるんだね。

 で、カイルのもっているビーム銃で炎上爆裂させるわけだけど、やっぱり、もっと胡散臭さと如何わしさを前面に出してほしかったな~。

 そういう語り口がないと、カイル・マクラクランのマニアックな良さが際立たないような気がしない?

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どら平太

2007年07月02日 19時18分17秒 | 邦画1991~2000年

 ◇どら平太(2000年 日本 111分)

 監督/市川崑 音楽/谷川賢作

 出演/役所広司 浅野ゆう子 菅原文太 宇崎竜童 大滝秀治 岸田今日子 江戸家猫八

 

 ◇山本周五郎『町奉行日記』より

 椿三十郎お奉行版。

 とかいってしまったら、身も蓋もなくなるんだろうけど、原作を脚色した四騎の会(黒澤明 木下惠介 市川崑 小林正樹)はやっぱり黒澤主導なんだなとつくづく想っちゃう。

 それにしても名手が雁首そろえて、もうすこし別な企画はなかったのかとちょっぴり悲しくなる。

 ただまあそこはさすがに市川崑で、円熟された職人芸が随所に見られ、冒頭から映像と語り口は余人の追随を許さないんだけど、でもな~という若干の口惜しさがないでもない。

 だって、山本周五郎の原作の中でも、なんで『町奉行日記』だったのかなと。

 というのも、この原作はすでに映画化されてるからだ。脚本が書かれたのは1969年だそうだけど、その10年前に、大映で三隅研次が勝新太郎の主演で製作してるんだよね。

 四騎の会の人達が知らないはずはないっておもうんだけど、どう考えてもこの物語は黒澤好みだし、三船敏郎を主役にもってきて製作したかったのかしら?

 となれば、黒澤明監督作品ってことになったんだろうけど、そしたら、まあ、椿三十郎的な大立ち回りが見られたかもしれないね。

 その方が良かったかな。

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