◎オペレーション・フィナーレ(Operation Finale)
アドルフ・アイヒマンをイスラエル諜報特務庁(モサド)が逮捕するという事実について真正面から描かれたことってあったんだろうか?すくなくとも、ぼくは知らない。もしこれが初めての試みだとしたら、クリス・ワイツ、目の付け所がよかったんじゃないかな。
アレクサンドル・ディスプラの主題曲も不気味さがあっていいし、カフェで流れるエル・チョクロも雰囲気が出てる。
これまでは、アドルフ・アイヒマンを追いかけるフィリッツ・バウアーの物語がやけに多い気がしてたんだけど、今回はのっけからアイヒマンが登場する。ちょっと、雰囲気が違うんだ。オーストリアで人間違いで、別な潜伏ナチスを殺すところが導入っていうのもそうだ。
拉致して監禁した古舘でオスカー・アイザックとベン・キングズレーのふたりのやりとりがたぶんいちばんの見せ所で、裁判で語られなかったアイヒマンの告白ってことなんだろね。同時に語られるのが姉が3人の子供たちと一緒にルブリンの森で撃ち殺されたことだけど、床屋になりたかったというオスカー・アイザックはその憎悪をこらえてゾーリンゲンの剃刀でベン・キングズレーの髭を剃ってやるわけで、このあたりの演出はいい。
なるほど、飛行機に乗せちゃったら最後のサスペンスにならんとおもってたら、離陸許可証を盗みとられて、走るのか、オスカー・アイザック。つか、アイヒマンの裁判のときに、メラリー・ロランのお腹が大きくなってるのを傍から見るんだけど、え、父親じゃないわけ?てなことをおもってたら、クレジットタイトルのときにモデルになったピーター・マルキンが2005年に他界したときに妻と子を残してとあったから、あ、そゆことねと納得したけどさ。