図1.東京多摩川の航空写真 国土地理院撮影
河川を概念で考えれば、保全-治水を両極とする自然系の軸と、利水:親水を両極とする生活利用系の軸がある。これら2軸が直交すると考えれば、そこに4象限が出現する。それぞれを保全:利水を旨とする気候調節、農業用水といった自然系利用、利水:治水を旨とする電源開発、防火防水、遊水といった側面、また保全:親水を旨とする自然保護やレクリェーションの領域、そして親水:治水を旨とする修景やまちづくりに関わる領域とである。
大学の講義では、これら4領域について概説したが、ここでは親水:治水の領域だけについてとりあげよう。
日本の都市のなかには、必ず大小の河川が通っている。そして都市が過密になればなるほど、こうした河川の大きな空間が貴重になってくる。だから私達の暮らしの中で、水辺の設えや利用をもっと考えてゆこうというのが講義の意図。もちろん河川には、河川法という法律があるので、それを踏まえての提案である。
最初に問題ある事例として隅田川の高速道路をとりあげた。その下が桜の名所である。いつも日本は頭の上を通り抜けるという不作法がまかり通っている。
じゃあどうすればよかったのかというのが図2である。そこでグランドレベルから下げればよかったんだよとする考え方が登場した。都市景観を考えてインフラを整備しようよ!、というのが趣旨だ。
水辺の話は河川法の規定もあり、そうそう簡単には手が出せないところでもあるから、私も消極的であったけど、実際滋賀県高島市では「かばた」(ブログ2007年10月10日village Design針江)という方法で河川から水路として各住宅へ水を引き込んだり、中国に行くと自宅の庭に引き込んだりするなど、結構多様に活用されている。そんな水に関わる都市の姿をみてみよう。
図2. 東京隅田川 桜の名所である日本堤の上を高速道路が走り抜けるというなんとも日本的合理主義の考え方だ。しかも東北道や常磐道につうじるので交通量は大変多い。いつも高速バスの車窓から隅田川を眺めながら筑波に通った。もちろんバスからの眺めは秀逸だけど・・・。
図3. パリ・セーヌ川 撮影 Y.UCHIDAことジョッキー。彼には頭がさがる。
図4. アメリカ・サンアントニオ市 村山友宏氏撮影 水辺の設えの魁であり、そして今でも美しい景観をつくりだしている。これを可能にしたのが河川の流路変更である。これによって河川としての役割がなくなったので、そのあと関を設けて水量を調整し、リバーウォークとして街路と店舗やホテルの街並み整備を行ったもので、もう半世紀以上前のことである。
図5. ウィーン・ドナウインゼル 撮影Y.UCHIDAことジョッキーがバリのついでに立ち寄ってくれたドナウインゼルの1つ。ドナウ川流域が中州を挟んで水辺のリクレーションエリアになっている。
図6. 朱家角 これから整備されようとする前の姿だろう。往事の街の風景をかろうじて写しとめた。
図7. 周荘 随分と景観整備が進み観光客も訪れる場所になっていた。
図8. 周荘 水路が交差する十字路を計画では考えたが、実際にみることができた。確かに十字路だし、それぞれに橋が架けられるという大仰なものであった。道が水路に変わっただけだが、船の交差点は確かに必要だ。
図9. 周荘 個人の住まいの中に水路から水を引き込むというのは滋賀県で見たが、これはかなり大規模なもので船で水路へ出られる構造になっている。つまり住まいの中に設けられた船着き場だ。
図10. 蘇州 いわずと知れた蘇州だが、当時既に街全体で景観整備が行われつつあり、現在ではここも整備されているはずだ。
図11. 滋賀県近江八幡市 物流の用途として江戸時代からつくられた八万堀。
図12. 京都市嵐山 桂川に車折神社のご神体が登場し、その前で古典芸能が演じられる5月の三船祭。
図13. 京都市嵐山三船祭 投扇、扇は岸にたどり着き見学者達が拾ってゆく。扇には和歌がしるされていたかな?、ただし扇は使い古されたか安物です(笑)。
Canon6L,Leittz Summaron35mm/F3.5,CanonEOS3,28-135mm/F3.5-5.6,NikonF4,AiAFNikkor70-200mm/F2.8,エクタクローム、ベルビア
参考文献:三井不動産S&E研究所/北山創造研究所編:まちづくりの知恵と作法,日本経新聞社,1994,p163-182.