goo blog サービス終了のお知らせ 

オショロコマの森ブログ5

渓流の宝石オショロコマを軸に北海道の渓流魚たちと自然を美麗画像で紹介します、

十勝の大平原、ブラウントラウトの川は静かに流れる。

2012-10-30 19:32:32 | ブラウントラウト
にほんブログ村 釣りブログ 渓流釣りへにほんブログ村


朝9時に北見を出発。十勝の大平原を流れるブラウントラウトの川を見に出かけた。

昨日は午後に北見近郊に集中豪雨がありバケツをひっくり返したような猛烈な豪雨であった。そのためか常呂川水系、利別川水系は増水し褐色の濁流と化している。今日はこれらの水系では釣りは無理だろう。




十勝の大地はどこまでも広く、豆やビートなどの畑がえんえんと続く。ゆっくり走って11時30分に目的の川に入った。

一見すると単なる用水路のようにも見えるが、よくみるとそうではなかった。

こんなところに場違いとも言える実に変化に富んだすばらしい渓相が混在している。ブラウンが大繁殖してサケの稚魚を食い荒らすと問題になった道南のS川に実によく似ているのに驚かされた。

川面に美しいバイカモが繁殖し白い花を一杯つけている。

畑のど真ん中の川なのに川の水は冷たくて比較的きれいだ。
適度な深さのよどみ、たまり、低い落差工による大きなプールなどブラウントラウトにぴったりの環境が次々に現れる。




多少のニジマスの他は、現地ではブラウントラウトしか生息しない川としてあまりにも有名な川だ。


今日も地元の若者3人がブラウントラウト釣りを楽しんでいた。話を聞くと夏場はブラウンがよく釣れるので、週に数回はブラウントラウト釣りに来ているという。

フライやルアーではなく、太い長竿に太いテグスで、たまりにドボンと振り込んでがっぷり食いつくまで待つという確実素朴な釣り方だ。

40cm台は時々釣れるが50cm台のブラウンはまだ見たことが無いという。ほどなく25cmくらいのブラウンがかかったが釣り上げたブラウンは胃袋まで大きな釣り針を呑み込んでいた。


彼らにブラウントラウトが放流され繁殖していることについてどう思うか聞いてみた。


広大な畑ばかりが広がるこの付近の川には、もはや在来の魚はいない。今現在、川にブラウンが沢山いるのはとてもいいことだ、ブラウンがいなければここは魚のいない川になると明快な答えであった。


欧米の論文など引用しながら圧倒的なブラウンの害のみを説く識者たちやマスコミよりも現地の彼らの言葉は重い。未来は私たちではなく若い彼らが造るからだ。

そのあとは魚信がなく、若者たちは別な川に大繁殖しているニジマスを釣りに行くと言って車で走り去った。

この川には相当な数の釣り人が入っている。めぼしいポイントは踏み跡だらけ。釣り針の入っていた紙ケースやブドウ虫や柳虫の入っていたプラケース、タバコの吸い殻、紙くず、あちこち木の枝に引っかかった釣り糸などが放置され、釣り人の痕跡がいたるところに目に付く。


もうこの時期になるとブラウンは大方釣りきられたようで、めぼしいポイントではまったく魚信がなかった。


そこで私たちは作戦を変更、釣り人が入っていないと思われる水域(要するにフライもルアーも振り込めない相当釣りにくい場所)をあえて捜して、かなり無理をして川へ降り、川のなかを腰まで浸かって遡行しながら釣ってみた。

















人が入っていない場所には魚がいた。そこでは、ちょっとしたよどみや深みには大抵ブラウンがいた。

かすかな当たりで合わせると、細い渓流竿にブラウン特有のずしんと重い引き。ニジマスは魚の動きがとても速く、跳躍したり逆走したり派手やかだ。ブラウンはぐーんと強く重い引きだ。道南の川でブラウンは相当数釣った経験があるが、この川のブラウンも同じ引きである。


15-30cmの小型ブラウンばかりだがせっせと釣っては撮影した。




現在、この川を含む十勝川水系の中・下流域は、すでに広くブラウンが生息していると言わざるを得ない。特にこの川では既存の生態系は完全に破壊され、正にブラウンの川と化している。


逆に言うとブラウンを中心とした新しい生態系が完成しているかにも見える。現代の北海道で、実に多くの外来生物に囲まれて生きている私は、いわゆる生態系原理主義者ではないのでこの状況には個人的にはとても興味がある。


現在、多くのダムなどで寸断され、十勝川水系上流~源流域にブラウンが遡上してくることはまずない。しかしニジマスのように人為的に持ち込まれればオショロコマや陸封型アメマスはひとたまりもないだろう。近年、ブラウンの移植・放流を禁じた法律はオショロコマにとっては大きな福音だ。


ブラウンは下記の理由で危険視され、周知のごとく、すでに北海道では移植・放流が法律で禁止されている。罰則は予想外に重い。

1.移動性が強く、海や湖沼に面した水域では降海(シートラウト)、降湖型となり
   さらに別の水域に侵入して分布を広げる可能性がある。

2.大型化しやすく、大型化すると魚食性が強い。

3.実に旺盛な繁殖力でニジマスに比べ釣り圧にも強い。

4.在来種との自然交雑の恐れがある。(アメマスとの雑交をタイガートラウトと呼ぶ) 

5.在来種の産卵床を破壊。

6.いったん定着すると駆除が難しい。 

7.移植、放流で危険なウィルス病や寄生虫が広まる危険がある。

8. 誰もが予想しなかったネガティブな状況が発生する可能性がある。


3以降はニジマスではさほど問題とならない特性で私が個人的に特に心配している点である(いわゆる科学的例証は少ないが、現実に私が危険と感じているという意味)。逆に言うとニジマスよりは、遙かに危険な外来魚と思う。

1.と2.はニジマスでもみられるもののブラウンほど顕著でないと思う。

環境に適合すると、ブラウンの繁殖力はニジマスの比ではない。

道南のS川でブラウンのエサ釣りをしたが、振り込んだエサにワーッと雲霞のごとく群がったブラウンの稚魚を見たとき、もはやこの川でのブラウン駆除は不可能と確信した経験がある。


ひっそりと咲く正真正銘の在来種 ツユクサ 


この川沿いの畑の縁にひっそり咲いていたいわゆる雑草。私たちは雑草を目の仇にして全部引っこ抜き、より派手やかな花をつける外来種の植物で庭を一杯にして楽しむ。
                   


攻撃的外来種セイタカアワダチソウ

この川沿いにびっしりと見られる攻撃的外来種セイタカアワダチソウ。北米原産の帰化植物で、種子での繁殖のみならず地下茎を次々と延ばし、その際他の植物の繁殖を妨げる物質を分泌しながら急速に広がってゆく。ブラックジョークみたいだがブラウントラウトの川の岸辺にセイタカアワダチソウはよく似合うのかも知れない。もはや日本全国に広がったセイタカアワダチソウを駆除することは不可能で、この類いの外来種植物には帰化植物という折衷案みたいな名称が考案された。



オショロコマやアメマスの行く末を考えると将来、ニジマス、ブラウン、カワマスなどに帰化渓流魚といった名前を与えたくはない。


にほんブログ村 釣りブログ 渓流釣りへにほんブログ村

にほんブログ村 釣りブログ 渓流釣りへにほんブログ村


















コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする