デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

フランク・ロソリーノの後はアンディ・マーティンに任せろ

2011-10-09 07:56:48 | Weblog
 ウェスト・コーストを代表するトロンボーン奏者、フランク・ロソリーノは、ジャズをメインにポップスや映画音楽の録音までありとあらゆるセッションに引っ張りだこになった人だ。低予算のため一発録りが多いスタジオの仕事で要求されるのは変化に富んだアドリブや表現力よりも、譜面に正確で常に安定した演奏ができることが条件になる。当時最高のテクニックを誇ったロソリーノは、どんな仕事であれ完璧にこなしていたという。

 そのロソリーノの後継者と呼ばれるのはアンディ・マーティンだ。ロソリーノが活躍していた1960年に生まれたマーティンは、ビル・ホルマンやクインシー・ジョーンズのビッグバンドでの仕事をはじめ、ポピュラー畑ではポール・アンカ、ニール・ダイアモンドのレコーディング、さらに猿の惑星、スパイダーマンといった映画音楽に至るまでフィールドは広い。まさにロソリーノの音楽活動をそのまま引き継いだ形だ。ロソリーノ譲りの超絶とまで言われる技巧を持ち、片隅にしかクレジットされない小さな仕事も引き受けたからには手抜きをしないどころか他のミュージシャンまでをも鼓舞する積極性が買われたのである。

 「It's Fine...It's Andy !」はロソリーノに捧げたワンホーンのアルバムで、ヤン・ラングレンが極上のピアノでマーティンを支えたアルバムだ。ロソリーノの愛想曲が中心だが、なかでも何度か録音している「ドキシー」が圧巻で、ロソリーノ風に吹くのではなく作者のロリンズの意図を計ったようにテーマの切り出しは力強い。高低差のある早いフレーズのアドリブは見事なもので楽器がまるで身体の一部かとさえ思わせるほどだ。トロンボーンは正確に演奏するのが難しい楽器といわれ、早いパッセージをスライドさせるには相当な練習量が必要とされるが、マーティンもロソリーノ同様、現場という練習を重ねたことだろう。

 忘れてならないのは効率よくトロンボーンを響かせるマウスピースで、形状やリムにより微妙に音が変るそうだ。世界中の金管プレーヤーが愛用しているテリー・ワーバートンが製作したなかにフランク・ロソリーノ・モデルがあり、歯切れの良い発音とやせることの無い高音を実現したマウスピースだという。このマウスピースを使用することで誰でもがロソリーノやマーティンのような深みのある音を出せるわけではないが、技巧派に一歩近づけるかもしれない。
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10 コメント

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ドキシー・ベスト3 (duke)
2011-10-09 08:05:01
皆さん、今週もご覧いただきありがとうございます。

オレオ、エアジンと並んでドキシーは、ロリンズのオリジナルでは多くのカヴァーがあるナンバーです。今週はドキシーのお気に入りをお寄せください。ロリンズは殿堂入りとすべきでしょうが、何度か録音しておりますので、ロリンズを含めて名演を挙げてください。ロリンズだけのドキシー・ベストと、フランク・ロソリーノのベストは機を改めて話題にします。

管理人 Doxy Best 3

Miles Davis / Bags Groove (Prestige)
Frank Rosolino / I Play Trombone (Bethlehem)
Phil Woods / Alive And Well In Paris (Pathe)

ホーンばかりの選出になりましたが、ピアノではジョージ・ケイブルス、テテ・モントリュー、他にもジョー・パスやオリヴァー・ネルソン等、多くのプレイヤーが取り上げておりますので、何が挙がるのか楽しみです。

今週も皆様のコメントをお待ちしております。
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Doxy (KAMI)
2011-10-09 21:48:43
dukeさん、皆さん、こんばんは。
エアジン、オレオ、ドキシーは、ロリンズの3大傑作だと思います。

お気に入りは、
Bags Groove/Miles Davis
初めてドキシーを聴いたアルバム。何時聴いても新鮮な演奏だ!

Our Man In Jazz/Sonny Rollins
shin御大の名言「モールス信号・ロリンズ」だ!

Alive And Well In Paris/Phil Woods
このドキシーは、凄い演奏だ!

ジャズ鑑賞会(ライヴ)が終わり一区切りついたので、自宅ではニューオーリンズジャズを楽しんでいます。
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アワマン・アワロリンズ (duke)
2011-10-09 22:14:31
KAMI さん、こんばんは。

エアジン、オレオ、ドキシーは短いタイトルですが、ロリンズの力強さが伝わってくる簡潔明瞭なネーミングと思います。

バッグに続いてアワマンがきましたか。ともにロリンズですが、大きな変化がありますね。常に前を見て時代を捉えたロリンズの姿でしょう。

ウッズのこのアルバム自体名盤に数えられますが、サイドが誰であろうとウッズのめくるめくアドリブは唸ります。

ニューオーリンズジャズとはいいですね。ジャズの原点は今も脈々流れているジャズの血です。
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DOXY (25-25)
2011-10-10 11:10:13

今回もインスト、ヴォーカルの指定がなかったので、
「あれ?ヴォーカルもあるだろ?」と思って探して見たら、
今のところ見つかりません。
さすがのL,H&R も、エアジンは歌ってるけど、
ドキシーはやってないみたい。

フィル・ウッズは、Epicの「Talks With Quill」でも
やってますが、こちらも若々しくていい演奏ですけど、
やはり鬼気迫る迫力と言う点では、ERMに軍配ですかね。

ロソリーノのベツレヘム盤ヴァージョンは、
「Featuring Sonny Clark Complete Recordings/ Frank Rosolino」(LonehillJazz)
と同一音源でしょうか?
ゴキゲンなスイング感が、堪りませんね。
ロソリーノだと、他に最晩年のコンテ・カンドリとの共演盤でもやってます。
今手元にないので聴けないのですが、悪くなかった記憶です。

ネルソンの「Taking Care of Business」も、いいですね。
Lem Winchester(vib)とJohnny hammond Smith(org)を
バックに、ユーモラスなドキシーです。
クレジットではOliver Nelson(ts,as)となってるんですが、
ここではアルトでしょうか?
彼のテナーは、テナーにしては野太いほうではないので、
どっちだろう?とちょっと迷います。

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複数回の録音 (duke)
2011-10-10 17:22:39
25-25 さん、こんにちは。

ヴォーカルは私も探したのですがないようです。ヴォーカリーズも面白いと思うのですが歌うには難しいのかもしれません。

ウッズはクイルの共演盤でも取り上げておりましたが、ERMの方が断然いいですね。

「Featuring Sonny Clark Complete Recordings/ Frank Rosolino」(LonehillJazz)
こちらはベツレヘムの音源からピックアップしたものですので、同一音源です。コンテ・カンドリとの共演盤はMPSのライブ盤ですが、スタジオと変わらぬテクを見せておりますね。ロソリーノはこの曲が好きだったようで度々ライブでも演奏していたようです。迫力の点ではロリンズといい勝負です。

作者ロリンズは当然としてウッズとロソリーノが何度か取り上げているのは、アドリブ展開の面白さにあるのかもしれません。

ネルソンは高音の伸びからすると多分アルトです。ご指摘のようにテナーもアルトの音域で吹く人ですね。
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デックスはロリンズと (azumino)
2011-10-10 22:20:21
dukeさん こんばんは

先週は投稿するつもりで、ついつい日が経過しました。火曜日から土曜日まで、飲会続きで、くたびれ果てました。3連休なので、なんとか今回のドキシーは、いけました(笑)。ロリンズは別格扱いということで、以下のとおりです。

①Miles Davis / Bags Groove (Prestige)
②Dexter Gordon / The Montmartre Collection (Black Lion)
③Frank Rosolino / I Play Trombone (Bethlehem)

①は、いうことない一枚で、ドキシーも。デックスは、ロリンズ作の「Doxy」と「Sonnymoon for Two」の両方を録音してます。出来は後者の方がいいと思いますが、ドキシーも悠然とした吹奏ぶりで意外と。ロソリーノのこのアルバムは、拙ブログでとりあげました。フィル・ウッズと迷いましたが。
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原点だ! (SHIN(4438miles))
2011-10-12 10:32:59
高校1年生の時、ジャズ好き4人が集まって「ジャズやろうぜ」となった・・その時、何を演奏するか・・・ドキシーとバッグスグルーヴだった。譜面の読めない書けない4人は100回聴いて覚えた、いや100回以上かもしれない。使用LPは当然マイルスのバッグスグルーヴだ・・それしかなかった。
モヒカン刈のロリンズが復活、アワマンインジャズを、これで度肝を抜かれ、1963年には来日・・ドキシーという曲はやはりロリンズが自分のために作った曲だなと思った。
あの豪快な太い低音が無いと活きない曲だ。
日本人も何人かやっているけど、ロリンズを越えるものはない。

敢えて言うなら、シェリーマンのスインギンサウンズが面白いと思うのだが・・・

先週の三連休は3日続けてのジャズフェス続きでバテ気味です!

Miles Davis / Bags Groove (Prestige)
Phil Woods / Alive And Well In Paris (Pathe)
Our Man In Jazz/Sonny Rollins
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Bags Groove トップ決定か (duke)
2011-10-12 19:24:20
azumino さん、こんばんは。

先週は飲会続きでしたか。お酒が好きでも連夜だとくたびれたでしょう。

トップにバック、これは傑作中の傑作ですので外せませんね。マイルスにとって重要な1枚はモダンジャズ史を飾るアルバムです。

そしてデックスが挙がりましたか。長尺のソニームーンは圧倒的な迫力ですが、この曲もいけますね。ドリューがいい味を出しております。

ロソリーノのこのアルバムは地味なほうですが、ベツレヘムというレーベルと相俟ってモダンな薫りがします。
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スインギンサウンズ (duke)
2011-10-12 19:51:50
SHIN さん、こんばんは。

SHIN さんが高校生の頃はジャズを聴くにも演奏するにもバッグスグルーヴが聖典だったのでしょうね。メロディアスで歯切れの良さはたとえ譜面が読めなくて楽器を弾けなくても憧れるものです。

私は人並みにロリンズはサキコロから聴きだしましたので、アワマンインジャズは驚きました。前衛という言葉がジャズに限らず、芸術全般に使われていた時代でした。その時代の寵児ともいうべきドン・チェリーの参加でコルトレーンにはない前衛の道を示唆したものと思います。発表当時は賛否両論のようでしたが、今聴いても新鮮ですので、ロリンズはかなり先を行っていたのでしょう。

シェリーマンのスインギンサウンズは、ウェストコースト・ジャズの方法論に限界を感じたマンが、ハードバップに活路を見出した作品として重要と思います。この作品以降ウェストコースト・ジャズが変わっていく変遷を見るとマンは先見の明があったのでしょう。
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今夜決定!ドキシー・ベスト3 (duke)
2011-10-15 18:44:52
今週もコメントをお寄せいただきありがとうございました。

Doxy Best 3

Miles Davis / Bags Groove (Prestige)
Phil Woods / Alive And Well In Paris (Pathe)
Sonny Rollins / Our Man In Jazz (RCA)

多くの投票はありませんでしたが、やはりジャズ史上屈指の名盤バッグス・グルーヴが一番人気でした。ドキシーは勿論のこと他曲も名演揃いです。

他にもロソリーノ、オリヴァー・ネルソン、デクスター・ゴードン、シェリー・マン等、挙がりましたが何れ劣らぬ名演ばかりです。今宵はお気に入りのドキシーをお楽しみください。
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