デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

軽音楽の総称がジャズだった時代、ペギー葉山がデビューした

2017-04-23 09:09:48 | Weblog
 昭和22年に創刊されたSJ誌で読者人気投票が始まったのは昭和26年のことだ。女性ボーカルを見てみると26、27年の上位は同じで、1位ナンシー梅木、2位加藤礼子、3位水島早苗と並ぶ。翌28年のトップもナンシー梅木が譲らないが、2位に選ばれたのは今月12日に亡くなったペギー葉山だ。当時、トップバンドの渡辺弘とスター・ダスターズの専属シンガーとして活躍していた。

 レコードデビューは昭和27年で、シャンソン王子と呼ばれたアンドレ・クラヴォーのヒット曲「ドミノ」のカバーである。B面は「Kiss of Fire」で、「火の接吻」という昭和の邦題が付けられていた。SP盤だがこれらの音源はCDで聴ける。当時若干19歳ながら声に伸びがあるし、カバー曲と感じさせない表現力、そして何よりもジャズフィーリングが豊かだ。「ペギー葉山」というのは芸名でなく本名で、アメリカ人の血を引いているのではないかと思ったほどだ。そのセンスの良さが民謡調の「南国土佐を後にして」や溌溂とした青春歌謡「学生時代」、楽しい「ドレミの歌」の大ヒットにつながったといっていい。

 「It's Been A Long Long Time」はデビュー40周年記念アルバムで、矍鑠としたハンク・ジョーンズと並んだペギーの立ち姿が美しい。日本のレスター・ヤングといわれた尾田悟と、ベニー・グッドマンの後継者と呼ばれるケン・ペプロウスキーが参加しているのでグッと厚みが出る。ビッグバンドよりもこの編成の方がノスタルジック感が醸し出されてペギーの声とのバランスがいい。タイトル曲をはじめ「Love Letters」、「All of Me」、「As Time Goes By」、「I'm Beginning To See The Light」というステージで何度も歌ってきたであろう曲はスタンダードというより持ち歌に聴こえる。深みを増した声と磨かれたフレージング、スウィング感、40年のキャリアが詰まっている。

 2014年に「大人の歌ネット」のインタビューで、「今の夢」を聞かれて、「これは、叶えられないとは思いますけど、外国の人とデュエットしたいの。以前、今は亡きハンク・ジョーンズとはね、ジャズのアルバムを出したけれど、向こうの歌い手さんとね…、トニー・ベネットさんなんていいわね(笑)。これは夢よ、そんなことあり得ないんだけど、トニーさんが日本に来た時に、一緒にレコーディングできたらいいなぁってね 」と。夢のデュエットを聴きたかった。享年83歳。合掌。

敬称略
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6 コメント

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ペギー葉山・ベスト3 (duke)
2017-04-23 09:14:41
今週もご覧いただきありがとうございます。

ペギー葉山さんの訃報は、札幌ドームで試合前聞いていたHBCラジオで知りました。その1時間程あとにHBC北海道文化塾の講師にペギー葉山さんをお迎えして「いつまでも『歌い手』として生きていく~ひとりでも心丈夫に生きるコツ~」・・・というCMが流れました。急でしたね。何でもベスト3、今週はラジオやテレビで流れたペギー葉山さんのヒット曲からお気に入りをお寄せください。レコードを所有していなくてもかまいません。

管理人 ペギー葉山 ベスト3

学生時代  
爪   
ドミノ 

戦後、歌謡曲はジャズだった(ペギー葉山さん)
https://www.youtube.com/watch?v=TiqqvckMkL0
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選べませんでしたが (azumino)
2017-04-26 22:49:25
dukeさん こんばんは

ペギー葉山さんですが、僕は懐かしのメロディといったテレビ番組で観たことがあるくらいで、アルバムやシングル盤も持っておらずほとんど聴いたことがないので、今回は回答なしにします。

「南国土佐を後にして」や「学生時代」はカバーもあって、曲自体は聴いたことはあります。後者は、平岡精二さんの作なのでモダンな感じがします。「ドミノ」は、シャンソンですが、ジャズでも取り上げられる大好きな曲です。ただ、ペギーさんの歌は聴いたことがありません。

変則的な、コメントで申し訳ありません。
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棄権も一票! (芝刈りオヤジ)
2017-04-27 11:01:04
dukeさん こんにちわ!

唯一その筋とは無関係だった芸能人とか、嫌々歌った「南国土佐を後にして」が大ヒット!と何かで読みましたが・・残念ながらこの方への思い出、知識はありません。

連想ゲーム的には
(つめ)
(あいつ)
(平岡精二)
(旗照夫)

dukeさんご紹介盤は聴かずともわかりそうな雰囲気アルバム・・好さそう!
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日本のジャズ黎明期 (duke)
2017-04-27 18:13:56
azumino さん、こんばんは。

ペギーさんの大ファンではありませんが、子どもの頃から聴いておりますので親近感があります。レコードの所有はベスト盤くらいなものですが、聴きだすとエンドレスで流します。

「南国土佐を後にして」も「学生時代」もカバーしたくなるほどの名曲です。

日本のジャズ黎明期を振り返ると、平岡精二さんは重要な位置を占めております。アメリカ的なモダンなセンスを持っていたのでしょう。

「ドミノ」は「枯葉」ほどではありませんが、ジャズアレンジで演奏されますね。
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平岡精二 (duke)
2017-04-27 18:24:28
芝刈りオヤジさん、お気遣いのコメントありがとうございます。

ペギーさんはジャズプレイヤーと付き合いがあったとは思えないほど真っ直ぐな女性です。「南国土佐を後にして」のエピソードは有名ですね。

つめ、これは名曲です。

尾田悟さんの著書「酒とバラの日々」に、当時童貞だった平岡精二を花街に連れ出す話が載っておりました。抱腹絶倒です。

ハンク・ジョーンズとのこのアルバムは素敵ですよ。機会があれば聴いてください。

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本日決定!ペギー葉山・ベスト3 (duke)
2017-04-29 09:32:26
今週もご覧いただきありがとうございます。

ペギー葉山 ベスト3

学生時代  
南国土佐を後にして


投票はありませんでしたが、この3曲はペギーさんの代表曲です。機会があればお聴きください。明るい歌声は元気がでます。
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