ピアニストの奥川一臣さんが、ジャズ批評誌7月号でブラッド・メルドーの演奏の魅力を分析している。引用すると、「ポップなメロディやパターンを一方で弾きながら、そのメロディに複雑なハーモニーをつけることで、全体として相反する雰囲気が混在した不思議な響きになるのである。耳慣れたいつものメロディが、初めて聴いたメロディのような新鮮なメロディとして聴こえてくる」と。ピアノを弾かない人をも納得させる明瞭な分析といっていい。
最初にメルドーを聴いたのは1994年にジョシュア・レッドマンが発表した「Mood Swing」だ。その当時注目されていたレッドマンが起用したピアニストだけのことはあるなぁ、という程度の印象だったが、翌年出されたデビュー盤「Introducing Brad Mehldau」は驚いた。発売は大手のワーナーで、タイトルも次々と発表しますよ、というメッセージを含んでいるし、ジャケットの表情からは次のアイデアが浮かんでいるような自信さえうかがえる。オリジナル数曲に、「It Might As Well Be Spring」、「My Romance」、「Prelude To A Kiss」等のスタンダードというバランスの良い選曲はデビュー作の鉄板といえるだろう。
そして、デビューに相応しい曲が選ばれている。コール・ポーター作詞作曲の「From This Moment On」だ。この曲を書いた1950年というと、ポーターは落馬事故の後遺症で性格にも変化をきたしている時期で、この曲を発表したあと、53年に「Can-Can」を手がけるまでの空白の3年間は、精神的なダメージから創作意欲が衰えていたといわれる。いうなればこの曲はポーターの体調が良かったときの最後の作品といえる。タイトルにもメロディにも歌詞にもポーターらしさが色濃く出ている曲を、メルドーは原曲の持ち味を最大限に生かしながら、複雑なハーモニーをからませることで全く新しい曲に変化させているのは見事だ。
過去にもこのような方法でスタンダードに変化を付けたピアニストを聴いてはいるが、メルドーのそれは「変なハーモニー」に聴こえる斬新性にある。その「変なハーモニー」こそがジャズ的に心地良いのだ。奥川さんによると、メルドーは聴衆から「驚いた」という感想を言われるのが嬉しいと言っているらしいが、まんまとそのトリックにはまった。種がわかっても面白いマジックとはこれをいう。
最初にメルドーを聴いたのは1994年にジョシュア・レッドマンが発表した「Mood Swing」だ。その当時注目されていたレッドマンが起用したピアニストだけのことはあるなぁ、という程度の印象だったが、翌年出されたデビュー盤「Introducing Brad Mehldau」は驚いた。発売は大手のワーナーで、タイトルも次々と発表しますよ、というメッセージを含んでいるし、ジャケットの表情からは次のアイデアが浮かんでいるような自信さえうかがえる。オリジナル数曲に、「It Might As Well Be Spring」、「My Romance」、「Prelude To A Kiss」等のスタンダードというバランスの良い選曲はデビュー作の鉄板といえるだろう。
そして、デビューに相応しい曲が選ばれている。コール・ポーター作詞作曲の「From This Moment On」だ。この曲を書いた1950年というと、ポーターは落馬事故の後遺症で性格にも変化をきたしている時期で、この曲を発表したあと、53年に「Can-Can」を手がけるまでの空白の3年間は、精神的なダメージから創作意欲が衰えていたといわれる。いうなればこの曲はポーターの体調が良かったときの最後の作品といえる。タイトルにもメロディにも歌詞にもポーターらしさが色濃く出ている曲を、メルドーは原曲の持ち味を最大限に生かしながら、複雑なハーモニーをからませることで全く新しい曲に変化させているのは見事だ。
過去にもこのような方法でスタンダードに変化を付けたピアニストを聴いてはいるが、メルドーのそれは「変なハーモニー」に聴こえる斬新性にある。その「変なハーモニー」こそがジャズ的に心地良いのだ。奥川さんによると、メルドーは聴衆から「驚いた」という感想を言われるのが嬉しいと言っているらしいが、まんまとそのトリックにはまった。種がわかっても面白いマジックとはこれをいう。
「フロム・ジス・モーメント・オン」は、1950年にコール・ポーターが発表してから半世紀以上経ちますが、今でもアルバムタイトルにするほどの人気曲です。ヴォーカルのイメージが強い曲ですが、今週はインストでお気に入りをお寄せください。ヴォーカルは機を改めて話題にします。
管理人 From This Moment On Best 3
John Jenkins With Kenny Burrell (Blue Note)
Mal Waldron / Mal 2 (Prestige)
Brad Mehldau / Introducing (Warner Bros)
他にもバーバラ・キャロルをはじめマリアン・マクパートランド、フレッド・ハーシュ、チャールス・マクファーソン、グラン・スチュワート、ハリー・アレン等々、多くの名演があります。
今週も皆様のコメントをお待ちしております。
Brad Mehldau Trio - "All The Things You Are" part 1
http://www.youtube.com/watch?v=N4IFtgATxK0
これのどこが「All The Things You Are」なんだ?
これこそが「All The Things You Are」なのだよ!
「From This Moment On」は、ヴォーカル曲というイメージがあって、頭の中に飛び交うのは、クリス・コナーやアニタ・オデイ、ジューン・クリスティといった往年の歌手の歌声です。インストもいろいろとあるようですが、僕の手持ちは少ないので、2つだけ挙げます。
①Mal Waldron / Mal 2 (Prestige)
②John Jenkins With Kenny Burrell (Blue Note)
①は、コルトレーンの長いソロや、テーマの処理が面白いので、いいかなと。他には、Bill Charlapのニューヨークトリオ名義の「Begin The Beguine」がありました。ブラッド・メルドーのCDは2~3枚持っていますが、どうもまだ馴染めないでいます。
この曲はおっしゃるようにヴォーカルのイメージが強いですね。機を見てヴォーカルを話題にしましょう。投票前からクリス・コナー、アニタ・オデイ、ジューン・クリスティで決まりかもしれません。(笑)
インストではやはりコルトレーンとジョン・ジェンキンスが両横綱ですね。片やプレスティッジ、片やブルーノートですので、レーベルの好みにも左右されます。
ビル・チャーラップがありましたね。例のジャケが品を落としておりますが、内容は品があります。このアルバムにしても50年代であればブルーノートやプレスティッジからジャズらしいジャケで出ていたなら人気盤だったことでしょう。それに比べますとブラッド・メルドーは大きく違いますが、これが90年代以降のジャズシーンなのかもしれません。
私はケニー・バレル好きのつもりなのですが、未だにこのJohn Jenkins withも未聴なのでコメントのしようがありません。近いうちに購入したいと思います!
経験上、レコードの枚数は3000を超えると数えるのが面倒になります。5000を超えると持っているアルバムがわからなくなります。万を超えるとレコードの上で寝ることになります。(笑)持っている枚数より、1枚のレコードを深く聴き込んでいるのが真のジャズファンだと思います。
聴いている時間ですが、オフは野球観戦以外、ジャズを聴いております。ススキノでもジャズが流れている居酒屋、ジャズバー、ジャズクラブが多いですね。
ケニー・バレルがお好きでしたら、ジョン・ジェンキンスはお薦めです。バレルが参加したことで格調高い作品に仕上がっております。
From This Moment On Best 3
John Jenkins With Kenny Burrell (Blue Note)
Mal Waldron / Mal 2 (Prestige)
Brad Mehldau / Introducing (Warner Bros)
多くの投票はいただけませんでしたが、ジョン・ジェンキスとマル・ウォルドロンが広く聴かれているようです。
ヴォーカルの印象が強い曲ですが、インストにも面白いものが沢山あります。これを機に「フロム・ジス・モーメント・オン」の膨らむアドリブに触れていただければ幸いです。
ブルーノートをはじめリヴァーサイド、プレスティッジの3大ジャズレーベルは、切れることなく再発されますので、直ぐに聴けるでしょう。お住まいはわかりませんが、お近くに中古屋があれば探しては如何でしょう。それも蒐集の楽しみのひとつです。
拙稿で知ったガーランドの「When There Are Grey Skies」を購入されたとは嬉しいですね。記事で紹介しましたように「聖ジェイムス病院」のパーシップのタイミングは絶妙です。