恋人に去られた悲しみ、そんな哀しい女心を歌わせたらビリー・ホリデイに敵うシンガーはいない。「グッド・モーニング・ハートエイク」もそのひとつで、曲紹介には作者のアイリーン・ヒギンボサムはテディ・ウィルソンの元妻、と書かれているが、どうやら別人のアイリーンで、チェック・ウェッブやルイ・アームストロングの楽団で豪快なトロンボーンを吹いていたJ.C.ヒギンボサムの姪らしい。どちらにしても女性でなければ書けないバラードである。
46年にビリー自身の歌で大ヒットしているが、この女心に一歩入り込んだ曲に刺激を受けてフランソワーズ・サガンは、「悲しみよこんにちは」を書いたそうだ。「心の痛み」を擬人化した曲だが、その「心の痛み」は当時18歳だったサガンの乙女が持つ繊細な痛みであり、主人公である17歳の少女が抱える悩める痛みなのかもしれない。ビリーに憧れたシンガーなら一度は歌う曲でカヴァーも多いが、サガンといえばフランスの作家である。意図したわけでもなく、こじ付けでもないが、偶然にも(笑)トリコロールのデザインのジャケットで、この曲を取り上げているアルバムがあるではないか。
オードリー・モリスである。パリジェンヌが小洒落たビストロで歌う情景が浮かぶが、モリスは10代のころビリーを夢中で聴いたというアメリカ人だ。ピアノの弾き語りでクラブに出演していたところ、たまたま聴いたXレーベルのプロデューサーが気に入り、レコーディングしたのがこの作品である。勿論得意の弾き語りで、バックにはベースとシンバルが配置されているもののアクセントを付ける程度の音なので十二分にモリスのピアノとヴォーカルを堪能できる。声もフレージングも滑らかで、喩えればじっくり牛肉を煮込んだポトフに合う、さして高級ではなくても味の良いフランスワインといったところだろうか。
ビリーは58年11月に二度目のヨーロッパ・ツアーを行っているが、当時の様子をサガンは「私自身のための優しい回想」で綴っている。「それはビリー・ホリデイだった。だが、彼女ではなかった。痩せ細り、年老い、腕は注射針の痕で覆われていた。(中略)集まった人々が拍手を送ると、彼女は聴衆に向って皮肉とも哀れみともとれる眼差しを投げかけるのだった。それは自分自身に対する容赦ない眼差しでもあったのだろう」と。亡くなる8ヶ月前である。最期までビリーは哀しい。だから今なお心を打つのだろう。
46年にビリー自身の歌で大ヒットしているが、この女心に一歩入り込んだ曲に刺激を受けてフランソワーズ・サガンは、「悲しみよこんにちは」を書いたそうだ。「心の痛み」を擬人化した曲だが、その「心の痛み」は当時18歳だったサガンの乙女が持つ繊細な痛みであり、主人公である17歳の少女が抱える悩める痛みなのかもしれない。ビリーに憧れたシンガーなら一度は歌う曲でカヴァーも多いが、サガンといえばフランスの作家である。意図したわけでもなく、こじ付けでもないが、偶然にも(笑)トリコロールのデザインのジャケットで、この曲を取り上げているアルバムがあるではないか。
オードリー・モリスである。パリジェンヌが小洒落たビストロで歌う情景が浮かぶが、モリスは10代のころビリーを夢中で聴いたというアメリカ人だ。ピアノの弾き語りでクラブに出演していたところ、たまたま聴いたXレーベルのプロデューサーが気に入り、レコーディングしたのがこの作品である。勿論得意の弾き語りで、バックにはベースとシンバルが配置されているもののアクセントを付ける程度の音なので十二分にモリスのピアノとヴォーカルを堪能できる。声もフレージングも滑らかで、喩えればじっくり牛肉を煮込んだポトフに合う、さして高級ではなくても味の良いフランスワインといったところだろうか。
ビリーは58年11月に二度目のヨーロッパ・ツアーを行っているが、当時の様子をサガンは「私自身のための優しい回想」で綴っている。「それはビリー・ホリデイだった。だが、彼女ではなかった。痩せ細り、年老い、腕は注射針の痕で覆われていた。(中略)集まった人々が拍手を送ると、彼女は聴衆に向って皮肉とも哀れみともとれる眼差しを投げかけるのだった。それは自分自身に対する容赦ない眼差しでもあったのだろう」と。亡くなる8ヶ月前である。最期までビリーは哀しい。だから今なお心を打つのだろう。
管理人 Good Morning Heartache Vocal Best 3
Lorez Alexandria / Early In The Morning (Argo)
Rosemary Clooney / Tribute To Billie Holiday (Concord Jazz)
Ella Fitzgerald / Newport Jazz Festival Live At Carnegie Hall (Columbia)
他にもダイアナ・ロスをはじめクリス・コナー、ディーディー・ブリッジウォーター、ヘレン・メリル、ヘレン・グレコ、ローラ・フィジー、日本では「お行儀の悪いビリー・ホリデイ」と言われた安田南等々、多くのヴァージョンがあります。
今週も皆様のコメントをお待ちしております。
Billie Holiday-Good Morning Heartache (Live)
http://www.youtube.com/watch?v=RvDZOX9IdKs
この曲は、ビリーの印象が物凄く強いです。
後で聴いてみます。
エラに一票です。
後の2枚は、悩みそうです。
まだ手持ち全部調べてませんが、
ロレツとメアリー・コクランが出色だったような記憶です。
クリス・コナーは、確か複数ヴァージョンあったような・・・。
オードリーのビストロ・バラッズ、いいですね!
私も大好きです。
Bethlehem のThe Voice of ~より、こっちが好み。
深夜にひそやかな音量で聴きたいヴォーカル。
Sad Cafe よりも、約20年後の
Lover Come Back To Me のほうが、しっくり来ますね。
この曲は、バックはバンドよりコンボがいい。
あと、曲順傾向では割と
アルバム中ほどに収録されてるケースが多くないですか?
他、手持ちはグレイコ、モニカ・ボーフォス、
ジャネット・ブレア、エラがありました。
ロージーは持ってるはずなんですが、何処にあるか不明~_~;
「悲しみよこんにちは」の映画は、昔DVDを借りて
観た記憶があります。
娘役がジーン・セバーグ、父親の恋人役が
デボラ・カーでしたっけ?
観終わって、消化不良のような、何とも言えぬ
もやもやした印象が残ったのを覚えています。
ビリーの得意曲ですので当然ビリーの印象が強いのですが、曲の美しさもあり多くのシンガーが手がけているようです。
エラはさすがに上手いもんです。拍手が凄いですね。
オードリーはベツレヘム盤も持っておりますが、こちらのほうがジャケ、内容とも良いですね。ワインを傾けながら深夜に聴くとグッときます。
クリス・コナーは挙げられた2枚で歌っておりますが、やはり歳を召してからのほうが説得力があります。
お得意の収録トラック分析ですね。確かに頭や〆には入っていないようです。中ほどで息を抜くバラードとして最適なのかもしれません。
「悲しみよこんにちは」は私も観ました。セバーグは可愛らしかったですね。映像なのでリアルさが増すこともあるのでしょうが、原作よりも映画のほうが残酷度が強いようです。アメリカ映画ですので、これがフランス製作だとまた違っていたでしょう。
そうか、安田南もありましたね。
店で聴きなおしてみます。
この曲は、つい数日前の雨降りの日、某所に、YouTubeにあがっているものを貼り付けようとした曲です^^
エラは本当に素晴らしいですね。聴き入ってしまいます。
あと、クリス・コナー、ロージーに一票かな。
クリス・コナーのも随分と聴きました。
この曲自体、とっても好きです。
今回もいい歌手のいい曲を選んで下さり、ありがとうございます!
さて、今回は2枚選びました。
オードリー・モリス「ビストロ・バラッズ」(X)
中本マリ「リトル・ガール・ブルー」(TBM)
よろしくお願いします。