アシュリー・カーン著「ジョン・コルトレーン『至上の愛』の真実」に、当時コルトレーンの近所に住んでいたトミー・フラナガンのインタビューが紹介されている。「最初から最後まで意欲をかき立てさせられるセッションだった」と。そして「彼の作った曲は、コード進行は論理的なんだけど、ほとんどが思ったように解決しないんだ(中略)当時としてはいっぷう変わった構成の曲ばかりだった」とも答えている。
そのセッションとは59年の「ジャイアント・ステップス」で、シーツ・オブ・サウンズと呼ばれるコルトレーンのスタイルがほぼ完成したアルバムだ。特にタイトル曲は複雑なコード進行のうえ高速テンポで演奏されたため、名手フラナガンでさえ躊躇した難曲である。そのフラナガンも二人目のピアニストで最初に選ばれたのはシダー・ウォルトンだったが、コルトレーンについていけずソロすら取っていない。演奏の難解さゆえ、60年代は誰もカヴァーできなかった曲だったが、70年代に入ってからテクニックと理論の解明が進んだこともあり多くのプレイヤーが挑戦するようになった。
コルトレーンの影響は大きく、今でもテクニックを競うように演奏されるが、ヨーロッパ・ピアノ・ブームを巻き起こしたスイスのティエリー・ラングが93年の「プライベート・ガーデン」で取り上げている。多くのヨーロッパのピアニストでそうであるようにラングも抜群のテクニックを誇る一方、ややもすると美しさを強調するあまりイージー・リスニング的な方向に向いてしまうが、ラングは緊張感に包まれており難曲に挑む姿勢が見えるようだ。82年にトリオで再挑戦したフラナガンやテテ・モントリューの世界とは異質だが、「ジャイアント・ステップス」が持つ美しさを引き出した演奏ではこれが最初かもしれない。
同書に、「彼はわたしに楽譜を見せて、何をやろうとしているか教えてくれたんだ。わたしはそれを彼と一緒にレコーディングしたかった。だけど彼は『きみが弾けるのは判っている。でも若すぎるよ』と言っていた」。後にコルトレーン・バンドの一翼を担うマッコイ・タイナーの話も載っている。「ジャイアント・ステップス」のセッションでサイドメンを模索していたコルトレーンは、「至上の愛」に向かう大きな一歩を踏み出したのだろう。
そのセッションとは59年の「ジャイアント・ステップス」で、シーツ・オブ・サウンズと呼ばれるコルトレーンのスタイルがほぼ完成したアルバムだ。特にタイトル曲は複雑なコード進行のうえ高速テンポで演奏されたため、名手フラナガンでさえ躊躇した難曲である。そのフラナガンも二人目のピアニストで最初に選ばれたのはシダー・ウォルトンだったが、コルトレーンについていけずソロすら取っていない。演奏の難解さゆえ、60年代は誰もカヴァーできなかった曲だったが、70年代に入ってからテクニックと理論の解明が進んだこともあり多くのプレイヤーが挑戦するようになった。
コルトレーンの影響は大きく、今でもテクニックを競うように演奏されるが、ヨーロッパ・ピアノ・ブームを巻き起こしたスイスのティエリー・ラングが93年の「プライベート・ガーデン」で取り上げている。多くのヨーロッパのピアニストでそうであるようにラングも抜群のテクニックを誇る一方、ややもすると美しさを強調するあまりイージー・リスニング的な方向に向いてしまうが、ラングは緊張感に包まれており難曲に挑む姿勢が見えるようだ。82年にトリオで再挑戦したフラナガンやテテ・モントリューの世界とは異質だが、「ジャイアント・ステップス」が持つ美しさを引き出した演奏ではこれが最初かもしれない。
同書に、「彼はわたしに楽譜を見せて、何をやろうとしているか教えてくれたんだ。わたしはそれを彼と一緒にレコーディングしたかった。だけど彼は『きみが弾けるのは判っている。でも若すぎるよ』と言っていた」。後にコルトレーン・バンドの一翼を担うマッコイ・タイナーの話も載っている。「ジャイアント・ステップス」のセッションでサイドメンを模索していたコルトレーンは、「至上の愛」に向かう大きな一歩を踏み出したのだろう。
管理人 Giant Steps Best 3
Tete Montoliu / Tete! (SteepleChase)
Roland Kirk / Return of the 5000 Lb Man (Warner Bros)
Tommy Flanagan / Giant Steps (Enja)
他にもフィニアス・ニューボーンJr.、ゴンサロ・ルバルカバ、ウラジミール・シャフラノフ、パット・メセニー、マイク・スターン等々、何れもテクニシャンが取り上げております。
今週も皆様のコメントをお待ちしております。
Animated Sheet Music: "Giant Steps" by John Coltrane
http://www.youtube.com/watch?v=2kotK9FNEYU
譜面の動きからその複雑さがよくわかります。
恐るべしコルトレーン。このとき33歳。
この曲は好きなのですが、あまり浮かんできません。
トレーンの印象が強すぎるのかもしれません。
そうだ、ジョー・パスのバーチュオーゾ#2に収録されていたと思います。
店で確認します。
今週は悩みそうです。(笑)
最近、盲点ばかり突いてこられる気が(笑
フラナガン、カークの2点は決まりですね。
あと持ってるのは、ルバルカバのブレッシングと
Here's Jaki / Jaki Byard ぐらい。
あ、あとギル・エバンスの秘蔵っ子
マリア・シュナイダーのComing About がありました。
これを忘れちゃ、いけませんや!
カーク、マリア、フラナガンで決まり(この順番で)。
あ、あとジャコ・パスもやってたような記憶ですが、
取りあえず手元になし(クリニックかな?)
まあ、圏外だったと思いますが。
持ってませんが、この曲検索すると
ヴィック・ジュリス、ハワード・ロバーツ、井上智など、
意外とギタリストが取り上げてるんですよね。
有名な曲ですが、カヴァーも限られておりますのであまり浮かばないのかもしれません。
ジョー・パスも取り上げておりましたね。ソロですので迫力はありませんが、さすがのテクです。70年代に入ってからは意外なプレイヤーが録音しておりますので、探せば隠れた名演があるかもしれませんよ。
バイアードにマリア・シュナイダーがありましたね。マリアのオーケストラは意気のいいメンバーを揃えただけのことはあります。難曲をアレンジするマリアとは何者と思います。
ジャコ・パスは日本のライブで演奏しております。コンガがやたらとうるさいですね。
ヴィック・ジュリス、ハワード・ロバーツ、井上智は私も持っておりません。ギタリストが好んで取り上げるのはコード進行が魅力的だからなのでしょう。ハワード・ロバーツはトム・スコットのテナーが入っているようです。スコッし、コルトレーンに近づけたかな。(笑)
オーケストレーションの指揮譜など見たら、アノ縦と横がキッチリと理屈が合い、且つ感性に訴える旋律とハモが浮かび上がってくる・・・そんな複雑方程式を解けるのは数理系の頭脳のなせる技であると思っていた。
スタンダードのコード進行が、1-6-4-5などという簡単な巡回から、徐々に細分化され、発展してより厚みの深いハーモニーがクリエイトされ、バードの出現でより複雑なコード展開におよび、まるで迷路を高速走行するような曲芸技を競うようになった。
そんなさなか、トレーンは考えた、今の音階は12音階だ、それを全部網羅する進行は如何にしたら円滑かつ音楽的になるか・・・この解を求めたら・・・ジャイアント・ステップになった。
東大大学院で数学を学び、ノーベル賞でも狙えば良いのに、それを捨ててジャズの世界に来た若井優也君は、ジャイアント・ステップのトレーンの書いた譜を見て、多次元方程式に見えると言ったらしい、というのは、私はその現場にはいなかった、聞伝えである。
私のピアノが感性一辺倒の出たとこ勝負であるのは私が文科系である証拠である。
理知的なソロを展開できる人は理数系である、これは過去の経験値である。
Tommy Flanagan / Giant Steps (Enja)
Tete Montoliu / Tete! (SteepleChase)
Roland Kirk / Return of the 5000 Lb Man (Warner Bros)
ジョーパスのソロを入れようかと思ったが、ギターがこれをやるのはまた別の話だと思うので次点だ。
因みに、少々でもピアノの弾ける方は試してみると面白いことに気がつくと思う。
先ず、Cから始めて、4度づつ上げて行くと、12音階が網羅できる・・・。
CーFーB♭ーE♭ーA♭ーD♭ーG♭ーBーEーAーDーGーC ここで一周・・・。
12角形を書いて、対角線で書くのもある。
何れにしろ、何の法則かしらないけれど、文科系がこんな事を発見しただけで大発見。
でも理数系に言わせれば、「そんなのアタリマエジャン、バカジャないの」と言うに決まっている。
「オイ、コルトレーン、12音階平均律ではなく、グレゴリオ音階でジャイアントステップができるかやってみろ!」
我々がこの平均律とやらの恩恵で音楽を楽しみ、発展させているのだ・・・一体なんの話だ!
理数系と文科系の観点からの考察は参考になります。私のように楽譜を読めないものにとっては、コード記号からして方程式を解くようなものですが、複雑であってもこの曲の素晴らしさは理解できます。
たまたま発見した「Animated Sheet Music: "Giant Steps" by John Coltrane」ですが、ここまでやるとは脱帽です。素人でも音の複雑さが一目瞭然ですし、音符の動きの美しいこと。こうなると理数系脳に加え、芸術を想像する右脳も相当働かないと浮かばないでしょうね。
ジャズは感性の音楽ですが、理数系の思考力もなければ後世に残る曲を作ることができないのかもしれません。
平均律で音楽を楽しむものなら、ジャズは間違いなく黄金律で味わえるものでしょう。
決まりました。
Giant Steps /Tommy Flanagan
Return of the 5000 lb Man/Roland Kirk
Virtuoso #2/Joe Pass
トミ・フラとカークは、外せないと思います。
ジョー・パスは、聴きなおしてみて素晴らしいと感じたので入れました。
音楽と数学の組み合わせは、そうかと納得するものがあります。平均律クラヴィーア曲集(バッハ)の譜面を見ると、建築家か数学者ではないかと思われるような音符の連続です。エルネスト・アンセルメという、かつてスイス・ロマンド管弦楽団を率いて世界的な名声を得ていた指揮者は、数学の専攻でもありました。まあ、それはそれとして、ジャイアント・ステップスは皆さんの挙げたものと同じです。
①Tommy Flanagan / Giant Steps (Enja)
②Roland Kirk / Return of the 5000 Lb Man (Warner Bros)
挙がっていないものでは、Jaki Byard「Here's Jaki」(Prestige)の短い演奏がありました。
フラナガン、カーク、この2枚は楽器は違いますが、最大の解釈と表現ですね。
ジョー・パスはソロながら動きのある演奏ですし、ソロでしか表現できないスリルも感じ取れます。