
先月26日に亡くなられた作家、栗本薫さんの作品に「身も心も」がある。続けて刊行された「聖者の行進」同様、名探偵伊集院大介が主人公のミステリーで、映画化された「キャバレー」という小説でデビューした栗本ファンお馴染みの天才サックス奏者、矢代俊一と小説で共演するのが面白い。矢代に届いた「ボディ・アンド・ソウル」を演奏するな、という不可解な脅迫状からストーリーが始まり、ジャズクラブを舞台にした展開はスタンダード曲やコード譜の解析もちりばめ、ジャズファンなら謎解きも楽しめる力作だ。
20世紀最後の年、2000年に各マスコミで21世紀に残したいものを企画していて、ジャズ雑誌でも「21世紀に残したいジャズ・スタンダード」を募っていた。正確な順位は覚えていないが、「ボディ・アンド・ソウル」はベスト3に選ばれたと記憶している。おそらくジャズ・バラードでもっとも美しい曲であり、プレイヤーがバラードを、とリクエストされるとまず浮かぶのがこの曲だそうで、メロディは単純だが1コーラスで何度も転調する構造のため腕の見せ所にもなるという。ジョニー・グリーンが30年に作曲して以来、多くのプレイヤーがバラード表現の極致に挑み、多くのリスナーがその美しさに酔った曲だ。ビリー・ホリデイの名唱をはじめ、この曲が広く知られるきっかけになった39年のコールマン・ホーキンスの名演等、身も心も一体となった歌唱や演奏は枚挙に暇がない。
「Jazz Is A Fleeting Moment」というアルバムで、ジミー・ロウルズが取り上げていてソロ・ピアノでじっくり歌い上げる。ソロはプレイヤーの特質や弱点、ときには音楽観をも露呈させるものであり、相応の実力がなければ挑めないものだが、ロウルズはジャケットのイラストのように一音一音確かめるように鍵盤を押さえ、珠玉のフレーズを紡ぎだす。ベン・ウェブスター、レスター・ヤング、ベニー・グッドマン、ズート・シムズ、レイ・ブラウン等々、ロウルズが共演したプレイヤーは実に幅広い。世代やスタイルを超えたプレイヤーと共演した音楽性は掴み難いが、どの時代でもどのような流儀でも、ロウルズにとっての音楽はジャズだったのだろう。このアルバムの発売レーベルは「Jazzz Records」である。一文字多い「z」からは端正なピアノの響きが聴こえてきそうだ。
栗本薫さんの作品は時代小説からSF、ミステリー、ホラー、そして126巻まで刊行されたファンタジー大作「グイン・サーガ」と極めて幅広い。どの分野でも読者を惹きつける作風は見事なだけに56歳という若さが悔やまれる。「滅びの風」という小説のあとがきで、栗本さんは「死を見つめよ」と結んでいた。身は滅びてもその心は次世代の読者をも魅了するに違いない。
20世紀最後の年、2000年に各マスコミで21世紀に残したいものを企画していて、ジャズ雑誌でも「21世紀に残したいジャズ・スタンダード」を募っていた。正確な順位は覚えていないが、「ボディ・アンド・ソウル」はベスト3に選ばれたと記憶している。おそらくジャズ・バラードでもっとも美しい曲であり、プレイヤーがバラードを、とリクエストされるとまず浮かぶのがこの曲だそうで、メロディは単純だが1コーラスで何度も転調する構造のため腕の見せ所にもなるという。ジョニー・グリーンが30年に作曲して以来、多くのプレイヤーがバラード表現の極致に挑み、多くのリスナーがその美しさに酔った曲だ。ビリー・ホリデイの名唱をはじめ、この曲が広く知られるきっかけになった39年のコールマン・ホーキンスの名演等、身も心も一体となった歌唱や演奏は枚挙に暇がない。
「Jazz Is A Fleeting Moment」というアルバムで、ジミー・ロウルズが取り上げていてソロ・ピアノでじっくり歌い上げる。ソロはプレイヤーの特質や弱点、ときには音楽観をも露呈させるものであり、相応の実力がなければ挑めないものだが、ロウルズはジャケットのイラストのように一音一音確かめるように鍵盤を押さえ、珠玉のフレーズを紡ぎだす。ベン・ウェブスター、レスター・ヤング、ベニー・グッドマン、ズート・シムズ、レイ・ブラウン等々、ロウルズが共演したプレイヤーは実に幅広い。世代やスタイルを超えたプレイヤーと共演した音楽性は掴み難いが、どの時代でもどのような流儀でも、ロウルズにとっての音楽はジャズだったのだろう。このアルバムの発売レーベルは「Jazzz Records」である。一文字多い「z」からは端正なピアノの響きが聴こえてきそうだ。
栗本薫さんの作品は時代小説からSF、ミステリー、ホラー、そして126巻まで刊行されたファンタジー大作「グイン・サーガ」と極めて幅広い。どの分野でも読者を惹きつける作風は見事なだけに56歳という若さが悔やまれる。「滅びの風」という小説のあとがきで、栗本さんは「死を見つめよ」と結んでいた。身は滅びてもその心は次世代の読者をも魅了するに違いない。
バラードの傑作「ボディ・アンド・ソウル」は、ほとんどのプレイヤーが取り上げております。今週はピアノでお好みをお寄せください。
管理人 Body & Soul Piano Best 3
Bud Powell / Jazz Giant (Verve)
Tete Montoliu / Tete! (Steeple Chase)
Hampton Hawes / Trio Vol.3 (Contemporary)
栗本薫さんの作品はジャズを題材にした作品しか読んでおりませんが、栗本ファンお薦めの作品もお寄せください。
今週もたくさんのコメントをお待ちしております。
きっとコールマン・ホーキンスのせいだと思います。
ピアノとなるとバドです。
バドは、色々な録音でこの曲が入っていますが、一番は全盛期の Jazz Giant になるでしょうか。
モンクもこの曲演奏していますが、この曲のイメージからするとイマイチ合わないかしら。
Bud Powell / Jazz Giant
Al Haig / Jazz Will-O-The Wisp
Tete Montoliu / Tete!
今回は2つdukeさんと同じでしたね(笑)。
ボディ・アンド・ソウル・・・・名曲ですね。
やはり何と言っても「ジャズ・ジャイアント」ではないかと思います。
パウエルとは何か?と聞かれたときに、とにかくこれを聴けと言っているアルバムで、彼の全てが詰まっているアルバムだと思っております。
お気に入りは
「ジャズ・ジャイアント」パウエル
「ソロ!!(my favorite instrument)」オスカー・ピーターソン
「トリオ Vol.3」ハンプトン・ホーズ
ヴォーカルといえばホリデイ、管楽器というとホーキンス、そしてピアノはパウエルですね。
モンクも夢のあるいい演奏ですが、リバーサイド時代に比べるとやや覇気を失っているように思います。コロンビアに移って最初の作品だけに勿論聴き応えはあります。
ヘイグがありましたね。ヘイグはアルバム数は少ないのですが、どの作品も右手と左手のコンビネーションが素晴らしく、フレーズに輝きがりますね。
テテを挙げていただき、ようやく手と手がつながりました。(笑)
やはり「ジャズ・ジャイアント」でしたか。これぞピアノに於けるボディ・アンド・ソウルの極地といえる演奏ですね。まさに身も心も一体になった音は感動を通り越して戦慄さえ覚えます。
ピーターソンがありましたね。久しく聴いておりませんが、パーディドやA列車、ソロ表現の難しい曲を取り上げておりました。名手の選曲ですね。
1)Bud Powell / Jazz Giant
2)Al Haig / Jazz Will-O-The Wisp
それに、
3)Afinity/ Bill Evans
トゥーツ・シールマンスとの共演で、エバンスが
エレピを弾いて話題になった盤ですが、課題曲では
アコースティックでやってます。
そのほか、気になった盤を数点。
○「Some of My Favourate Things/ George Cables」
トニー・デュマb、ビリー・ヒギンスds とのトリオ。
最後のほうで、まるでクラシックのカデンツァの如く
激しくソロで弾きまくるケイブルスのピアノ、凄みがあります。
○「Billy Taylor & Gerry Mulligan Live at MCG」
93年の、最晩年のマリガンとの共演。
ビリー・テイラー御大の、軽妙洒脱の極みともいえる
縦横無尽のアドリブの展開は、少しも衰えておりません。
○「In A Sentimental Mood/ 本田竹広」
井野信義b、森山威男ds とのトリオで85年録音。
課題曲での本田氏のピアノは、よく言えばオーソドックス、
悪く言うとちょっと意外性に乏しい感じか。
むしろ、井野さんの野太いベースのほうが
印象が強かった。
このメンバーで同時期の作品に、有名な
「My Funny Valentine」がありますが、内容的には
やはりマイバレのほうに軍配が上がるでしょうか。
この御題はいい演奏が多くて選ぶのが大変でした。
まずは頭に浮かんだのが
Junior Mance Trio - Milestones 1997
トロントで録音されたもので、Manceの雨が窓を伝わっておちてくるようなピアノで始まるのですが、そのシンプルな音色が心を静かにさせてくれます。12分42秒のメンタルセラピー。
大好きなGene Dinovi-Golden Earrings 2003
彼のアレンジの美しさは天下一品、でもこの盤でもっと美しいのがYou must believe in springなんです。この曲だけでもう十分に元を取ったという気になる素晴らしく素敵な一曲。
Keith Jarrett Trio - The Cure 1991
気難しさの抜けた、優しいJarrettというか素直に聴ける一品。
Oscar PetersonとOliver Jonesもあげたかったのですが、あえてはずしました。二人のスタイルと雰囲気が余りにも似ていたのでこれってモントリール系か、ってあらためて再確認。
皆さんの出しておられるJazz Giantのパウエルはもうひとつ私にはピンとこなかったと言うか理由は分からないんだけど、私のBody&Soulでないって事かもしれませんね。
パウエル、ヘイグに次いでエバンスがきましたか。「Afinity」はエレピやハーモニカおじさんとの共演で話題になりましたね。71年の「Album」ではエレピに違和感がありましたが、こちらは楽器が馴染んだというのか、聴き手のこちらがエバンスのエレピを受け入れたのか、いいアルバムと思います。様々な編成で楽しめますし、この曲や酒バラはいい内容です。
ケイブルスのアトラス盤は数枚持っておりますが、こちらは買い逃しております。凄みがあるボディ・アンド・ソウルは気になります。
ビリー・テイラーとマリガンとの共演は、この曲やサヴォイ、オール・ザ・シングス等、テイラー好みの選曲でピアノを弾くことを楽しんでいる演奏ですね。
本田竹広さんはこの曲が気に入っていたようです。当地で3デイズ・ライブを開いたときに弾いていただきました。バラードをとリクエストされると反射的にこの曲のキーを押さえるとか。
「In A Sentimental Mood」、「My Funny Valentine」ともにリラックスしたスタンダード名曲集ですが、甲乙付け難い内容ですし、オーソドックスな弾き方はジャズピアノの基本を踏まえた手本となるものでしょうね。
いい演奏が多くて悩まれたようですね。
ジュニア・マンスのこのアルバムは、まずジャケット写真に惹かれます。その表情からはジャズの世界を長く生きてきた証が伝わってくるようです。そしてジャズ人生を振り返るような選曲、ピアノと一体になった演奏、シニア・マンスの味わいがあります。
ジーン・ディノヴィはタイトル曲にしてもこの曲にしてもアレンジが面白いですね。年齢を感じさせない瑞々しいタッチが魅力的です。
キースが登場しましたか。おっしゃるように優しいジャレットですが、このあたりになるとスタンダーズは当初のテンションは維持できないようです。こちらにもゴールデン・イヤリングが入っておりますが、ディノヴィに比べると金の輝きはありません。
ほぼトップ決定のパウエルは情緒的な香気を放ち、内面から湧き出てくる情念さえも聴き取れる演奏です。深く突き刺さる演奏ですから拒否反応が出ても不思議ではありませんね。
栗本薫に反応しました、珈琲パウエルのKOMAです。いつも店主がお世話になっております。(笑)
栗本氏の作品はもっぱらSFしか読んでいませんが、初期の作品から『メディア9』をお勧めしたいと思います。
外宇宙で交易(?)しているスペースマンを父に持つ少年のお話です。・・・って、これだけでは実も蓋もないですね
とにかく、私が20代のころ、一言一句まで違えず覚えてしまうほど何度も何度も読み返し、それでもまだ読んでいた、忘れられない作品です。
どちらかといえば若い人に読ませたい内容ですが、先日久しぶりに読み返したらまたはまりそうになったところを見ると、大人になってからでもやはり読み応えはあるようです。
もし良かったら読んでみてくださいませ♪
『グイン・サーガ』と『魔界水滸伝』の続きが読みたくて禁断症状の出そうなKOMAでした。