コタツ評論

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春日通り

2009-02-03 00:59:25 | ノンジャンル
両国を歩いていたら、ソシアルビルの前にキャスター付きの大きなバッグを3つ積んで、金髪の女性が一人立っていた。こちらを見て少し恥ずかしそうに微笑んだ。見上げると、外国人クラブの写真入り看板が眼に入った。古びてくすんだピンク色のモヘアのコートからジーンズの細い脚が伸びていた。ロシア人だと思った。宿舎に連れていってくれる迎えの車を待っているようだ。御徒町駅となりの吉池に入った。新宿の三平ストアとよく似た、昭和40年代を思わせる貧乏くさいテナントビルだ。一階に入っている鮒佐ならぬ鮒金で昆布の佃煮を買うつもりだった。パン屋に行列ができていたので覗いてみると、昔懐かしいコッペパンを売っていた。三角巾をかぶった女店員が四角いブリキ缶に入ったピーナッツバターやあんこ、イチゴジャムなどをナイフで切り込みを入れたコッペに塗って客に渡している。100円がタイムサービスで80円だという。俺の子どもの頃は、たしか一つ15円だった。ピーナッツバターとアンコを求める。アンコにはマーガリンも塗ってくれる。メタルのへらで隙間なく丁寧に塗ってくれる。女店員は、最近TVで見かけた水川あさみに少し似ている。両国で会ったロシア人女性は、誰にも似ていなかった。彼女も同じ思いだろう。ブックオフで買ってきた『ソフィの世界』(ヨースタイン・ゴルデル NHK出版)、『カルト資本主義』(斎藤貴男 文芸春秋)がかさばって鞄には入らないので、御徒町のミルクスタンドでコーヒー牛乳と一緒にコッペを頬張った。子どもの頃のようには腹が減っていなかったせいか、不味くはないが旨くもなかった。2冊の本もあまり期待できそうになかった。コッペ2つ160円。本2冊210円。彼女はいくらだろう。浅間山が噴火して灰が降った日。