タイトルがよくないと思いませんか?
『オニババ化する女たち-女性の身体性を取り戻す』(三砂 ちづる 光文社文庫)
「オニババ化」はまあいいのですが、「女たち」にうんざりしませんか。ちょっと検索しただけでも、女たちの戦争と平和人権基金・FGM廃絶を支援する女たちの会・戦争を許さない女たちのJR連絡会・女たちの21世紀・20世紀を彩った女たち・女たちの大和・徳川の女たち・出会い系の女たち・男に無理しない女たち・・・。
男社会にまつらわぬ「女たち」という、明らかにフェミニズム以降の言葉づかいです。それぞれの運動体や人物の内実はともかく、この言葉づかいは賞味期限が切れているでしょう。世界の半分を占める女性をマイノリティとしてとらえ、そのなかで特定少数を指し示すための「女たち」。古臭い「団結と統一」のスローガンと「前衛」の構図です。
本書は、月経や性、出産、授乳などの身体性から女性性を見直す目的で書かれているため、女を結婚や出産に縛りつける反動的な論考とフェミニストには不評らしい、たぶん。そこでフェミニストたちの好む「女たち」を皮肉として用いた。月経の時期を操作する薬を飲み、結婚や出産を忌避して、自己実現をめざす「女たち」は「オニババ化する」とあらかじめ挑発したタイトルかと思いました。あるいは、結婚や出産をする「女たち」が特定少数であるかのような逆転現象をアピールするのを意図したとか。
途中までしか読んでいませんが、以上のような読み方はやはりうがちすぎで、それほど意地の悪い本ではなさそうです。「女たち」と大上段に振りかぶったわけではなく、「あなたたち」くらいの少人数に語りかけるフレンドリーな言葉づかいのようです。本のタイトルは編集部が付ける場合が多いので、著者の意向ではなかったという可能性もあります。すくなくとも、これまで読む限りでは、アンチ・フェミニズムといった狭量な背景はなさそうです。
「男たち」にもこういう身体性を扱った本が欲しいものです。男の性と生殖を軸に、老眼やED、中折れ、性的なフェティシズム、セクシャルハラスメント、腰痛、前立腺肥大、加齢臭、アルコールやタバコ依存、などなどについて(なんだい、ぜんぶ俺のことではないか)、フロイトまがいの精神分析ではなく、身体性から解き明かしてもらいたいとは思いませんか? 思いません。それよりなにより金が足りない。
(敬称略)
『オニババ化する女たち-女性の身体性を取り戻す』(三砂 ちづる 光文社文庫)
「オニババ化」はまあいいのですが、「女たち」にうんざりしませんか。ちょっと検索しただけでも、女たちの戦争と平和人権基金・FGM廃絶を支援する女たちの会・戦争を許さない女たちのJR連絡会・女たちの21世紀・20世紀を彩った女たち・女たちの大和・徳川の女たち・出会い系の女たち・男に無理しない女たち・・・。
男社会にまつらわぬ「女たち」という、明らかにフェミニズム以降の言葉づかいです。それぞれの運動体や人物の内実はともかく、この言葉づかいは賞味期限が切れているでしょう。世界の半分を占める女性をマイノリティとしてとらえ、そのなかで特定少数を指し示すための「女たち」。古臭い「団結と統一」のスローガンと「前衛」の構図です。
本書は、月経や性、出産、授乳などの身体性から女性性を見直す目的で書かれているため、女を結婚や出産に縛りつける反動的な論考とフェミニストには不評らしい、たぶん。そこでフェミニストたちの好む「女たち」を皮肉として用いた。月経の時期を操作する薬を飲み、結婚や出産を忌避して、自己実現をめざす「女たち」は「オニババ化する」とあらかじめ挑発したタイトルかと思いました。あるいは、結婚や出産をする「女たち」が特定少数であるかのような逆転現象をアピールするのを意図したとか。
途中までしか読んでいませんが、以上のような読み方はやはりうがちすぎで、それほど意地の悪い本ではなさそうです。「女たち」と大上段に振りかぶったわけではなく、「あなたたち」くらいの少人数に語りかけるフレンドリーな言葉づかいのようです。本のタイトルは編集部が付ける場合が多いので、著者の意向ではなかったという可能性もあります。すくなくとも、これまで読む限りでは、アンチ・フェミニズムといった狭量な背景はなさそうです。
「男たち」にもこういう身体性を扱った本が欲しいものです。男の性と生殖を軸に、老眼やED、中折れ、性的なフェティシズム、セクシャルハラスメント、腰痛、前立腺肥大、加齢臭、アルコールやタバコ依存、などなどについて(なんだい、ぜんぶ俺のことではないか)、フロイトまがいの精神分析ではなく、身体性から解き明かしてもらいたいとは思いませんか? 思いません。それよりなにより金が足りない。
(敬称略)