コタツ評論

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今日、買った100円本

2010-03-21 23:55:00 | ブックオフ本
年度末のため、本など読んでいる暇などないはずなのに、また買ってしまった。

『戦中派天才老人・山田風太郎』(関川夏央 ちくま文庫)



当代の文章家・関川夏央が、1年半にわたる聞き書きを苦心の末に再構成して、「山田風太郎物語」に仕上げた。高齢その他のため、話は「支離滅裂」だったらしいが、「輝くばかりの書き言葉」に関川がリライトしたらしい。ただし、「山田風太郎が言ったことやかつて書いた言葉以外は、一言も書いていない」と胸を張っている。コラボレーションという言葉が、「コラボ」と軽薄に省略されたとたん、安手のセックスか、セコいマーケティング風に聞こえるのとは異なり、本当の才能と才能が組み合った臨場感がある。傑作読み物だ。これはすぐに読んだ。以下は、まだ。

『続ものぐさ精神分析』(岸田 秀 中公文庫)



続も読んだ気はするが、ペラペラめくっていると、82年刊行ながら、内容は少しも古びていないと確認。伊丹十三が自殺してから、岸田秀を敬遠していた。伊丹十三は岸田秀に心酔していたから、患者をみすみす自殺させてしまった精神分析医のように思ったからだ。二人がどういう関係だったかは知らないし、私の一方的な印象に過ぎないのだが。

『世界音痴』(穂村 弘 小学館)



詩文集というのか、歌文集というのか。
たとえば、こんな歌とエッセイがセットになっている。

このばかのかわりにあたしがあやまりますって叫んだ森の動物会議

朝焼けの教会みたいに想い出す初めてピアスをあけた病院

あっ かぶと虫まっぷたつ と思ったら飛びたっただけ 夏の真ん中

ほんとうにおれのもんかよ冷蔵庫の卵置き場に落ちる涙は


韓非子入門(岡本 隆三 徳間文庫)



儒教や道教を批判し、人間性悪説に立つえげつない指導哲学を説いたのが、韓非子らしい。たとえば、

鰻は蛇に似て、蚕は芋虫に似る。蛇や芋虫に出くわせば、誰でも驚き気持ち悪がる。しかし、漁師は素手で鰻を掴み、女は指で蚕をつまむ。つまり、利益になれば、誰でも勇者になれる

人間性悪説に立つえげつない指導哲学とは、つまり法治主義のことのようだ。

『獣たちの庭園』(J・ディーバー 文春文庫)



いっときのR・ラドラムのように、すらすら読めて、スカッと終わるから、売れるのは当然。J・ディーバーは、もっと007みたいなロマンスグレーかと思っていたが、こんなに陰鬱で虚弱な風貌とは意外だった。顔文不一致にちょっと見直した。

しかし、画像のサイズはどういう風に変えるんだろ?

(敬称略)
コメント
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