コタツ評論

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書道教授

2010-03-24 01:22:00 | ノンジャンル
TVばっかり観ておるな。



今夜(23日)は、日本TV系列の生誕100年記念作「松本清張スペシャル書道教授」(午後8・54)。

最後まで観るつもりは毛頭なかったほど、「書道教授」には期待していなかった。はて、清張に「書道教授」なんて作品があったっけと未見の興味と、ジェームス三木脚本にちょっと食指が動いた次第。

存外悪くなかった。いや、かなり上出来の部類ではないか。あの、「安物」の杉本彩に高価な着物を着せてしゃなりしゃなり歩かせてどうにかなるものなら、鳩山内閣だって苦労しないわなあ、と鼻で笑おうとしたら、杉本彩がんばったのである。

大昔なら、若尾文子か、少し前なら、名取裕子あたりがやる役だから、杉本彩では謎めいた着物美人というより、着物ホステスあたりにしかみえないが、それでも最後の方になるとあまり気にならなくなるほど、抑えた表現で好演したからこそ、杉本彩お約束のお色気シーンを入れられなかった。

一生懸命に仕事に取り組む人の姿を見るのは、気持ちがよいものだ。

船越英一郎も、女に好かれるしか取り柄がない、「しょうもない男」にぴたりとはまり、父子ともに同じ役柄というのは、世界の俳優史のなかでも珍しいのではないかと父・英二を思い出す。「2時間ミステリードラマ」の探偵役として名物男になっているらしいが、その定型を続けながら、今回のように、卑小ではあるがどこか憎めない男が、色と欲の瀬戸際に立たされ、無様にあがきながらも自分の中の残り少ない真実をかき集め、何とかしのぎ生き残ろうとする、本当のハードボイルドを演じて欲しいものだ。役所広司や渡辺謙にはいささか飽きた。

そして、荻野目慶子。週刊文春でエッセイ連載を持っているほど知的な女性のはずだが、まあ、とてもそうは見えないけたたましさ。乃公の永遠のアイドル荻野目洋子ちゃんのお姉さんでなければ許さないところだが、だんだん彼女の役作りどおりの、下品で貪欲な悪女だが少し可愛いと思えてきたのは、やはり演技力のたまものなのだろう。深作欣二直伝の阿鼻叫喚演技から脱するのは困難だろうが、健闘を祈りたい。

なんと、お懐かしや野川由美子! もうけっこうなお年のはずだが、お変わりありませんね。よかった、よかった。でも、野川由美子さんが出たとたん、最後のどんでん返しがすぐに予想がついてしまったけれどね。

パラリンピックの選手より、はるかに劣悪なTVドラマの制作現場で、仕事への真摯な姿勢を失わず、苦闘を続けているスタッフや俳優たちに乾杯を捧げ、高給を貪りながら無駄飯を食うばかりか足を引っ張る局の社員や幹部に唾棄を。

(敬称略)


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