コタツ評論

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ネコ缶が好物のエビに脱帽

2010-08-12 18:48:00 | レンタルDVD映画



笑える快作第9地区である。舞台は南アフリカの大都市ヨハネスブルグ。その郊外に飛来したUFOに乗っていたエイリアン130万人(?)の居住区がある。1、2人(人?)なら、「未知との遭遇」だが、130万人(?)ともなれば、スラムに棲み、ゴミ漁りで食いつなぐ、不潔と治安を脅かす、「エビの化け物130万匹」である。そこで、より内陸部の荒野に居住区第10区が設営され、強制移住がはじまった・・・。という予告編は観ていた。

ついこの間まで、アパルトヘイトが法律であった南アフリカで、いまも貧しい黒人たちがエイリアンに向かうわけだから、差別と迫害をアイロニカルに扱ったイヤな映画かと思っていたら、TVのドキュメンタリ番組を模した出だしは、その予想を裏切らなかったものの、おいおい、そっちへ行くの、えっ、感染物なの、あれっヒーロー物なの、あららこららの馬鹿馬鹿しさ一直線! 

その醜悪凶悪な外見に似合わず、キャットフードのネコ缶が好物で、ネコ缶一個のために、黒人ギャングから食い物にされ、役人から騙されたり、ちょっと頭の足りないエイリアンばかり、笑える笑える。こんなアホ映画を大予算で製作し、差別と迫害がテーマのようなシリアスな予告編をつくり、TVインタビューをコケにし、観客にエビを食えなくしたわけで、まことに人を食った映画である。

もうひとつ微笑むことができるのは、サッカーW杯の成功に続き、いまの南アフリカの人々には、この映画を観て笑うことができる、それだけ余裕があるってことだ。「インビクタス/負けざる者たち」は、かなり分が悪いことになった。