当初の名前はサルトルでした。貧相で醜い顔をしていたからでしたが、どこか思慮深い表情を見せたことも命名の理由でした。成長するにしたがい、ブギャー、ブギャーと悪声で啼きだし、ドアを開けるまで単調に続く騒音が、サッカーW杯南アフリカ大会でおなじみになったブブゼラによく似ていたので、以降、ブブゼラと呼ばれています。この♂猫が、貧弱な身体にデカ頭という見かけによらず、ハンターの才能を発揮し、ゴキブリ、バッタ、カナブン、そして最近は、死にかけのセミをくわえてくるのです。一晩に数匹も。ジジジとモーター仕掛けのように回転するセミを前にして、目くそがついた瞳で見上げるブブゼラに、「ノー、とる、ダメ、ネ、セミ、これ、ダメ、ネ、セミ」と、以前は、サルトルでしたから、片言の英仏語風に諭すのですが、もちろん彼にわかるわけもなく、他の猫も加わった深夜のセミサッカーに悩まされている次第。で、最近の綽名が、「ノートルダメのセミ死男」というわけです。ま、それだけの話ですが。
(敬称略)