コタツ評論

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厄介な本

2010-08-15 01:32:00 | ブックオフ本
積ん読が十冊以上もたまっているのに、ちょっとやっかいな本を買ってしまった。『世界大不況からの脱出』(ポール・クルーグマン 早川書房)のことではない。「第3章 日本がはまった罠」は読みやすい。日本の経済成長やその基盤について、かのノーベル経済学賞を受賞した学者から、私たちが俗説ではないかと疑っている言説が繰り返されるから、とても読みやすい。なにせ、入口が、ベストセラーになったエズラ・ボーゲルの「ジャパン・アズ・ナンバーワン」だからね。しかし、肝心の日本が陥ったとされる「流動性の罠」について、日本の事例を扱うのではなく、アメリカの協同組合を事例にしているのには、がっかり。久しぶりの経済の本で、クルーグマンという本命に振られた気がしたので、無印の『リスク -神々への反逆』(P・バーンスタイン 日経ビジネス文庫)を買ってしまった。原題は、<AGAINST THE GODS-THE REMARKABLE STORY OF RISK>。上下2巻。表紙カバーの紹介はこうだ。

人類は神々に逆らってリスクの謎に挑み、やがて科学やビジネスのあり方を一変させてきた・・・。一賭博師からノーベル賞学者まで、リスクに闘いを挑んだ歴史上の天才・異才たちの愕くべきドラマを壮大なスケールで再現した全米ベストセラー、待望の文庫化(上巻)。

古代ギリシャから筆を起こし、パチョーリ、パスカルらのパズル解明、確率論の発見、ルネッサンス、宗教改革による思想の自由化、保険の仕組みの考案など、数千年におよぶリスク探求の営みがここに蘇る! 全米の知識人・書評子に絶賛された現代人必読の名著(下巻)。


もっとも苦手な、数学を基礎とした統計論とか確立論が出てきそうで、俺には読み通すのが厄介そうだなと思ったが、「全米ベストセラー」「現代人必読の名著」が623頁もあって、たった400円というお得感が勝った。しかし、厄介そうだなあと億劫がりながら眺め回していると、気になるところが妙に目につく。なぜ、一神教なのに、<GODS>と複数形なんだろうとか、「神々への反逆」の神々とは八百万の「神々」なのになあとか、どうして医師と同じく賭博師には師がつくのだろうとか、かつて医師は賭博師なみに社会的地位が低かった時代があるのかなあ、とか、読みはじめず足踏みするところを探している始末。なんとか、今年中には読了したいものだ。

(敬称略)


この母子に限らず

2010-08-15 00:36:00 | ノンジャンル
http://news.livedoor.com/article/detail/4927689/

母親が風俗嬢だったおかげで、鬼畜のようにいわれているが、乳飲み子と幼児を抱えて女一人なら、つねに生き死にに直面していたであろう。「常在戦場」とか張り紙している会社で、生き残りをかけて死に物狂いで働け、と尻を叩かれている男の帰りを待つ妻が、いっそこの子を殺してしまおうかとふと考えたことがあるなど、おおかたは想像の外なのだろう。その想像力の欠如を埋めるのが、児童相談所ではないかと考える振りは止めたほうがよい。会社を首になったら、ハローワークがあると本気で考えているのなら別だが。死ぬも殺すも行く先は地獄。そして、板子一枚下は地獄なのである。漁師に限らず。