コタツ評論

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ホッカイローのケイコタン新宿に死す

2013-08-23 01:06:00 | ノンジャンル
TVで田原総一郎が「全共闘世代の若者を元気づけた!」とまたでたらめを。藤圭子に熱狂したのは、五木寛之など当時のオヤジ世代。全共闘底辺は、渡哲也の「東京流れ者」を歌っていた。全共闘周辺は、三上寛の「夢は夜ひらく」を聴いていた。俺は皆川おさむの「黒ネコのタンゴ」を口ずさんでいた。



藤圭子には一度会いにいったことがある。宇多田ヒカルが生まれた頃だ。コンサートのリハーサル中だった。藤圭子やスタッフが夫君の宇多田照實氏に、腫れ物にさわるようだったのが印象的だった。藤圭子はよく笑う明るい人だったが、幸せそうにはみえなかった。いまでは、「宇多田ヒカルのお母さん」が一般的な知名度かもしれないが、藤圭子が宇多田ヒカルに勝るとも劣らぬ、一世を風靡した凄い歌い手だったことは間違いない。

しかし、藤圭子のお母さんは、つまり宇多田ヒカルのお祖母さんになるが、もっと凄かった。たしか、「オールスター家族対抗歌合戦」だったと思う。藤圭子と三味線瞽女だった盲目のお母さんが出演した。藤圭子のお母さんが歌い出したとたん、会場は一瞬静まりかえった。芸能の奥深さをかいま見せる、それまで聴いたことのない声だった。俺にとっては、藤圭子から宇多田ヒカルに続く伝説は、あのお母さんにはじまる。ご冥福を祈る。

(敬称略)

コメント (1)
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