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顔文一致

2015-04-16 23:59:00 | 3・11大震災
先日、福井県の高浜原発の再稼働について、福井地裁は被告の関西電力に対して、6人の市民原告が求めた運転差し止めを認める仮処分を出しました。http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150414/k10010047951000.html

樋口英明裁判長は、昨年5月にも、やはり福井県の大飯原発の運転差し止め判決を出しているため、この4月の異動で名古屋家裁判事に「左遷」が決まったように、再稼働賛成側からは忌避される一方、反対側からは英雄視されています。

樋口英明裁判長、厳めしい六法全書のお顔です


再稼働にゴーサインを出した原子力規制委員会の田中俊一委員長は、さっそく、「重大な事実誤認がある」「世界で最も厳しい規制を緩やかすぎるとは」というコメントを出しました。

しかし、大飯原発の耐震が1260ガルでも運転差し止めを出したのに、さらに低い700ガルの耐震の高浜原発の運転を認めるわけがなく、今回の差し止め仮処分はほとんど予測されていたはずなので、田中委員長の口調は冷めたものでした。

田中俊一委員長、原子炉規制法と同じく、融通が効くお顔です


原発と法律それぞれの専門家の判断と決定に、ここでは立ち入るつもりはありません。ただ、大飯原発の判決文と今回の高浜原発の仮処分決定文を読んでみると、樋口英明裁判長が論理的で明晰な文章の書き手であることがわかります。

というわけで、今回は名文鑑賞のお時間です。平明かつ達意の文章とはこういうものだと中学の教科書に載せたいくらいです。以下は、大飯原発の判決文から。http://blog.goo.ne.jp/mayumilehr/e/c23cee97b8aefb95b510b0505f9c6072

他方、被告(関西電力)は、本件原発の稼動が、電力供給の安定性、コストの低減につながると主張するが、当裁判所は、極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と、電気代の高い低いの問題等とを、並べて論じるような議論に加わったり、その議論の当否を判断すること自体、法的には許されないことである、と考えている。このコストの問題に関連して、国富の流出や喪失の議論があるが、たとえ本件原発の運転停止によって、多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土と、そこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが、国富の喪失であると、当裁判所は考えている。

ただし、高浜原発の再稼働はやがて認められると予測されます。被告の関西電力は、当然、この仮処分に即時抗告という不服申し立てを行うはずで、その際は「左遷」された樋口裁判長に代わり、べつの裁判官が担当するからです。

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