かなり以前になるが、丸山真男の『「文明論之概略」を読む』が話題になっていた。難しそうなのでそのときは敬遠したが、元本の『文明論之概略』は気にはなっていて、古本屋の棚を探していたら、『新訂 福翁自伝』(福沢 諭吉 ワイド版 岩波文庫)を見つけた。300円也。
まだ読みはじめたばかりだが、文章がおもしろい、書かれていることがおもしろい、ずんずん読める。夏目漱石や森鴎外が言文一致体を確立する前は、こんな風に人は書いていたのかととても新鮮。
福沢諭吉という人は大分県中津の人かと思っていたら、大阪人だったんだねえ。父を亡くして帰国した中津へは悪口ばかり。長崎へ蘭学を学ぶために中津を出るときは、「二度と戻るものか」と後ろ足で土を掛け、唾を吐いたというくらい、因習固陋な故郷を嫌っていたらしい。
「門閥制度は親の敵(かたき)で御座る」という有名な言葉も、大所高所に立ったものではなく、中津藩に向けられたものなんだね。そういえば、いつか中津を訪れたとき、町の人々に福沢諭吉の話を向けても、どこか冷淡な感じを受けて意外な思いをしたが、ああも嫌えば嫌われるのも無理はないな。自分の家族をも含め(長兄は少しバカあつかい)、率直に悪口いってはばからない自伝も珍しい。
(敬称略)
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