生まれて初めて(おおげさ)文芸誌を買いました。「小説新潮12月号」に、宝塚歌劇団演出家の上田久美子氏のインタビューが載っていたから。立ち読みで済ませるつもりが、ご贔屓ジェンヌさんの退団公演の話がほんの少しあるだけで買ってしまったという、ファンあるある…(演者についての話など、どこにもないのに)。
記事の冒頭から驚き! 氏いわく「つじつまなんてどうでもいい。ツッコミどころ満載なのに感動できるのが宝塚の面白さ」と。あら~、上田先生の作品はツッコミどころ少なめというか、つじつまが合わないのが気にならないから割と好きだったんだけど…(全作品を観劇したわけではありません。半分くらいは映像で)
私も「せせこましいことを言う」今の世の中にいそうな観客なのかなぁ。例えば劇中で日本語として変な台詞(あきらかな誤用)を聞くと、カチンと気に障って、劇団の中で台本をチェックする人がいないのかっと、イライラ…。そういえば、同じく宝塚歌劇団の演出家の小池修一郎氏が「ザ・タカラヅカⅦ 星組特集」というムックで、「ややもすると演者も客席も神経質になり過ぎてスケール感が失われがちな昨今」と書いていたっけ。
もう一つ驚いたのは、上田氏は私よりずっと若いのに昭和の高度経済成長期ごろの日本人の価値観、消えつつある価値観を惜しんでいるという記述でした。だから今回、菊田一夫氏が昭和38年に書いた「霧深きエルベのほとり」を潤色するのか。過去の上演ビデオを見るたびに号泣するって、えっそうなの?
私はそのころ物心が多少はつき始めたころだから、当時の風俗や子供ながらに感じていた大人の価値観などが懐かしく、でももう二度と戻らない、と当時の映画のDVD(「流れる」←宝塚と関係ないし、時期も微妙にずれているけれど)を観て自分でも驚くくらい号泣したことがありますが…。
ほかに、宝塚中華思想、とか、本拠地が関西地方都市だからこその魅力とか、ヅカファンでなくても「へぇ、そうなんだ」と思うだろうことなどが書いてあって、興味深く読みました。ちなみにほかのページはあまりにも文章量が多く(文芸誌だから当たり前)、中野翠さんの自伝風エッセイしか読んでいませ~ん