Zooey's Diary

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「パピチャ 未来へのランウェイ」

2020年11月13日 | 映画
「パピチャ」とは、映画の舞台であるアルジェリアの俗語、「愉快で魅力的で常識にとらわれない自由な女性」のことだそうです。
主人公ネジュマはファッションデザイナーを夢見る女子大生で、夜な夜な大学の寮を友達と抜け出し、ナイトクラブで踊ります。
ダサい服装で寮を抜け出し、タクシーの中で派手なドレスに着替え、楽し気に化粧をする。
そこだけを見ていたら、渋谷辺りで遊んでいる女子高生と変わらないような気もします。
ところが車が検問で止められ、銃を構えた兵士に詰問されるところでハッとします。
無論彼女たちは慌ててヒジャブ(スカーフ)を被り、派手な衣装や化粧を隠すのですが。
そこは1990年代の、イスラム原理主義が台頭し、内戦が治まらないアルジェリアだったのです。



ナイトクラブでハイテンションで踊る一方、そのトイレで自分が作ったドレスを売ったり、注文を受けたりもしている。
そこはネジュマにとって遊ぶだけでなく、大事な仕事の場でもあったのです。
しかし、そうした進歩的な女性を好ましくなく思う向きも多く、実際ネジュマの姉は、ジャーナリストとして活躍しているというだけの理由で、いきなり射殺されてしまう。
ネジュマの親友たちもそれぞれに問題を抱えている。
兄の決めた結婚を目前にして、恋人の子を妊娠してしまい、兄に殺されると怯えるサミラ。
一目惚れした相手が、実は封建的、暴力的な男であり、殴られてしまうワシラ。

「女は家から出ずに信心深く暮らせ」
「外国語を学ぶ必要はない、ヒジャブをかぶれ」
「死にたくなければヒジャブをつけろ」
「女が正しい服装をすれば、何の問題もない」

ネジュマが好きになった相手も、一見理解があるように見えたが、実はその辺の男たちと変わらなかったのですね。
それを知ったネジュマが、涙を拭いて立ち上がり、何を始めたか。
それによってどれだけの犠牲が出てしまったか。



この作品、2019年カンヌ国際映画祭のある視点部門で上映されて称賛を集めるも、本国アルジェリアでは当局によって上映禁止となったのだそうです。
この映画の女性監督ムニア・メドゥール、ネジュマ役のリナ・クードリともにアルジェリア出身であり、動乱で国を出ざるを得なくなった身だと知って、益々作品の重みが感じられます。
アルジェリアでは90年代の話であるが、今この瞬間にもこうしたことがまかり通っている国もあるのですから…


「Papicha」フランス・アルジェリア・ベルギー・カタール合作


コメント (4)
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