ドラマのとびら

即興の劇や身体表現で学ぶ、教える、浮き沈みの日々とその後

ホームレスの問題を授業に

2011-05-07 08:46:51 | 授業・教育

香山リカさんが新聞(朝日新聞5月2日付京都版)に「どうして職を失い、不幸な家庭で過ごしているのか。早い話、たまたま何かの弾みでそうなったとしか言いようのない人がほとんどなんですよ」と書いています。

サンデル氏は、ハーバード大学の授業で学生たちに、ハーバード大学に入れたのは、努力だけではないと述べています。

先日、ホームレスの問題を総合演習の授業で取り上げました。

今回の地震・津波のような天災もあれば、原子力発電所の放射能被害という人災も含めて、本人の努力だけはどうにもならず、たまたま何かの弾みとしか言いようのないことで家を失ってしまう。ホームレスになるという事も、「本人の努力」の問題だけにしてしまえないと思います。

5月病ということばがありますが、なんとなく欝っぽいこのごろの私。「がんばれ」「努力が足りない」と言われても、なぜかパワーが湧いてこない。そんなことって、誰にでもあるのでは・・・と思うのです。

授業の内容は、以下の通り。

まず、ワークシートを宿題にしました。

想像力をテーマにふたつのアクティビティをしました。これは、演じるために体をほぐすと同時に、想像力を働かして、何かもしくは誰かになってみる練習でもあります。また、楽しんでやることで、仲間づくりにも繫がっています。

①歩く。教師の声掛けにしたがって、想像力を逞しくして歩く。例えば「都会の雑踏」「沖縄の海辺」「左足が50kgになってしまう」などなど 

②「浦島太郎」に登場する誰かまたは何かになる。3人グループで、Aは浦島太郎に登場する誰かまたは何かになって動作をし台詞をいう。自分が何になっているかは言わない。それを見てBが自分の役割を決めて応対する。Cは見てる。これを順に繰り返す。例えば、A:助けてくれてありがとうございます。竜宮上へ案内します。B:やあ、あのときのカメか。

こういうのもありました。A:ようこそ竜宮上へいらっしゃいました。B:おじゃまします。A:さあ、料理を持って来ておくれ。ここで見ていたCも加わって料理を運び、三人の芝居になっていました。

Aが「いじめないでくれ」と亀になり、BがたたいたりするフリをしているとCも加わっていじめるというシーンが登場したグループも。

そのあと、宿題のワークシートでホームレスの授業に入ったのですが、ワークシートをほとんどの人が忘れ、新たに配りなおし。ホームレスと話したことがある人が3人。一人は京都駅。後のふたりは外国で。

DVD「ホームレス」と出会う子どもたち」(30分)を観て、グループで話し合い。

そのあと、「もしホームレスになるとしたら、どういう状況でそうなるだろう」ということに想像をめぐらしました。

自分がホームレスになってしまったとして、なぜそうなったのか、寒い公園で話すシーンを演じました。私もホームレスで、それぞれに「なぜここにいるのか」と聞きます。それにそれぞれが答えるという方法です。グループ毎にやりました。一つのグループの話を他のグループは観ています。

怪我をして職を失い・・・、事業に失敗して借金を抱えて・・・、家族とうまくいかず家出をしてしまって戻れず・・・など、理由は様々でした。

全体で輪になって、ホームレス襲撃事件の資料を配りました。私の思いを説明し、質疑応答。ワークシート記入。授業前後で意識が変わったか。
計90分の授業でした。

このDVDは、ホームレスの問題を理解するのに、とてもすばらしいです。「ホームレス問題の授業づくり全国ネット」http://class-homeless.sakura.ne.jp/index.html のHPから申し込めます。

学生たちは、この授業を通して、「ホームレス」について非常に身近な問題となり、自分自身の認識が変わったと書いていました。中には、以前からこういう問題に関心がある学生もいました。

これをきっかけに、格差社会をテーマに学生がリサーチし、それを授業に組みあげるというのが今後の予定です。これまでは様々なテーマを取り上げてきましたが、今年はひとつのテーマを色々な角度から掘り下げようとしています。

こういうテーマは、きれい事ではすまないので、辛いなと思います。でも、学生たちがこのことを通して、何を考え、何を得ていくのか、そう思うとこれからの授業が楽しみです。リサーチは宿題になっているのですが、忘れてないかな?

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