極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

新三国志政経論Ⅱ

2010年12月11日 | 政策論



雨交じり 寒風突いて 辿り着く もこもこ雲に 陽射しの城山






【農業の現代化】

農業基本法の起草者である小倉武
一は次のように述懐している。「
基本法農政がうまく行かなかった
のには、2つの理由がある。或る
いは3つといってよい。第一は、
農業の国際化を殆ど無視したこと
である。(中略)第二に、農業基
本法は、スタート前後から悪運に
付き纏われた。そのうち1つは社
会党の反対であった。構造改善と
いうのは“貧農切り捨て”だと叫
ばれて、農林省の労働組合も反対
運動を行った。(中略)悪運のも
う1つは、農協系統が基本法農政
に同調しなかったことである。無
関心というよりも、たとえば“営
農団地”というような独自のスロ
ーガンを持ち出して構造政策の推
進に協力するような体制を取らな
かった。当時は地域間、業種間の
所得均衡が国政をリードするスロ
ーガンであったといってよいが、
その所得均衡は、農政においては
構造改善によってではなく、専ら
価格政策=価格支持政策に依存す
るようになった
」(小倉武一『あ
る門外漢の新農政試論』食料・農
業政策研究センター8~9頁参照)

これは山下一仁は『農業・食料問
題を考える』(経済産業研究所

で構造改革に抵抗する全国農業協
同組合中央会(全中)へこのよう
に反論している件だ。

「農業の構造問題と政策の基本
  原理」

これに向応するかのように神門善
久は『農業の“応援団”が日本農
業を潰す』(「週刊エコノミスト」
2010/12/14)で次のように疑問を
呈す。

 今年の稲作は全国的に倒伏(
 稲が倒れること)が多発した。
 直接の原因は今夏の猛暑であ
 るが、土作りの低下が深層に
 ある可能性を疑うべきである。
 日本は高関税に加え、財政支
 出で稲作を支援しているが、
 これは先進国が貿易歪曲的な
 国内農業保護漬してはいけな
 いというWTO(世界貿易機
 関)のルールにもとる。また、
 こ'のような過保護は耕作技
 術の悪化させかねない。国際
 的信認の喪失、財政政悪化、
 耕作技術の停滞という3つの
 リスクを負ってまで、コメの
 自給に固執する意味があるの
 か、厳しく問いただされるべ
 きである。TPPはじめ貿易
 自由化のなかで、日本にとっ
 てアジアヘの高価格農産物の
 輸出が活路だとも言われるが、
 それも一過性で終わりかねな
 い。アジアで膨脹するニュー
 リッチは、より高品質な農産
 物を求め始めている。これま
 でアジア諸国の農民は高級農
 産物をより安価で作り始める
 であろう。工業製品の場合、
 アジアの隣国が品質面でもあ
 っという間に日本に追いつき
 追い越したが農産物でも同じ
 ことが起こりうる。

そして、「日本農業の競争力を左
右するのは消費者だ」として「貿
易自由化時代に輸出できるのは耕
作技術だ」「補助金や規制の対象
を『人から土地へ』転換せよ」「
農地を限定し規制厳格化を」「就
農よりも『離農』プログラム」と
提案している。

この論調は素人のわたしとさほど
変わりないのだが(ブログ参照、
地球温暖下のTPP』『ドンキホ
ーテとクロミズム革命
』)、彼は
過去にも「
農家切り捨て論のウソ
(「日経ビジネス」2007/09/21)
でインタビューで同じ主旨で明快
に述べている。これで行くと自民
党も「×」、民主党(小沢一郎派)
も「×」、ソフト・スターリニズ
ム党派も「×」ということになる
が、韓国のような明確な国家戦略
や実行プログラムがない、いつも
ながらの‘鵺(ヌエ)’政治状態
で本当に力強い日本が再生できる
のか心許なく思うのはわたし一人
だけではない。

このままではこれまで培った気候
変動にも強い稲作耕作技術の‘立
ち枯れ’にならないとも限らない
し、『デジタル革命』(→その後
続の『微塵技術革命』(新弥生時
代))に支えられた「飢餓恐慌か
らの生活水準の一括的向上」をポ
テンシャルとした発展途上国の追
い上げがもたらす、優位性の平準
化に抗うことは出来ないことも自
明だ。



【不都合な超高齢社会】

日本の65歳以上人口比率は先進国
の中で最も高く、かつ急速に上昇
している。内需の低迷が続き、今
後高齢化で成長率がさらに押し下
げられる可能性がある日本にとっ
て、(1)変化する需要構造に対
していかに適した財やサービスを
供給するか、(2)就業状態や持
ち家比率、身体能力などの違いに
よる(3)定年後の高齢者は通勤
する必がなくなり、家で過ごす時
間や余暇に使う時間が増えるとい
った変化が起きる。社会保障制度
への不安が影響し「家計に眠る『
過剰貯蓄』」は百兆円以上。
社会
保障制度改革によって将不安が和
らげば
、高齢者のニーズを捉えた
財やサービスを供給することで

要が拡大
する余地が非常に大きい
(同上「週間エコノミスト」より
大和総研/神田慶司)。

ところで、
貯蓄の割には消費が少
ないのが高齢者の特徴
(「将来不
安と世代別消費行動
」)だが、そ
の前に解決すべきは介護分野の供
給不足だ。当事者だけでなくその
家族の生活不安にも直結する問題
で(共倒れなどの不経済性も含ま
れる)、社会福祉の観点か
景気
に左右されことなく
安定的に人材
を確保するには、低い賃金水準と
硬直性を改善
必要だ


それでは、労働力の安定確保する
にはどうすればいいのか? 政府
の介護職員処遇改善交付金は時限
措置で、期限を迎える11年以降は
介護報酬の引き上げで対応する方
針だが、仮に交付金や介護報酬の
引き上げで賃金水準改善されても
賃金の硬直性は残り、さらに、景
気が拡大すれば、相対的な賃金水
準が低下して人手不足が深刻にな
る可能性がある。 

介護保険の給付費は保険料と税金
で賄っており(利用者の自己負担
割合は1割)、介護報酬を引き上
げるには(1)自己負担割合の引
き上げ(2)保険料を引き上げる
つまり、政府負担分を増やすしか
なく、増加する給付費をどう賄っ
ていくかという厳しい議論が続く。

事態改善には、まず介護関連の賃
金を毎年見直す仕組みを作る必要
がある。例えば、交付金の趣旨を
一部変え、永続的な制度とする代
わりに、公務員給与のように民間
給与水準と連動させて労働力を確
保するなどの制度がいる。反面、
事業者の生産性を高めて自力で賃
上げを行えるような制度も必要
だ。

いずれにしろ、日本での介護制度
導入とサービスの試行錯誤は自国
の喫緊な課題であるだけでなく、
世界各国の注目の的でもあり、そ
の意味において培われた
介護に関
するノウハウや技術は必ず付加価
値を高める
ものと確信する。


【世界金融危機は再燃するか】

来年度の米国経済は、再び銀行の
不良債権問題に直面するという憶
測がある。片付いたかに見えたサ
ブプライムローン問題がより大き
く広範囲に表面化するという(東
海東京証券の斎藤満チーフエコノ
ミスト)。MBS(住宅ローン担
保証券)買い戻し請求に伴う金融
機関の損失は、最大約15兆円に達
する可能性があり、MBSは、F
RBも金融緩和政策の一環として
大量に購入。巨額の損失を出す可
能性のあるリスク資産を大量に抱
え込んでいる。

加えて、MBSはじめ証券化商品
を販売する上えで重要な役割を果
たしたモノライン(金融商品を保
証する保険会社)大手のアムバッ
クが償還不能となったMBSに対
する巨額の保険請求により11月8
日に破綻。このため他のモノライ
ンの保証付きで債券を発行してい
る地方債や金融商品は、金融緩和
が続く局面でも金利が上昇傾向に
ある。

要するに、リーマン・ショックの
発端となったサブプライムローン
やMBS乱造(事件?)が引き起
こした不良債権問題の処理はまだ
終わっていないのだ。金融緩和や
財政出動という緩衝材で一度は封
じ込めたかに見えただけで、その
効果がないとなると、問題はより
大きくなって-ドル安による景気
刺激同時に、インフレ期待を酸成
し不動産市場を活性化させて米銀
の不良債権問題再燃を回避すると
いう目論見(11月3日の米連邦公
開市場委員会(FOMC)が決め
た量的緩和第2弾(QE2)の目
的はここにある)が外れ-表面化
するというわけだ。



【実体経済を動かすには】

しかし、米国の強力な金融緩和は
中央銀行が民間金融機関に対して
マネーを大量に供給(ベースマネ
ー増)すれば、貸し出しなどを通
じて信用創造(マネーサプライ=
現金通貨+預金通貨M2の増加)
が図られ、通常なら実体経済が活
性化する効果が期待されるが、試
算によると、リーマン・ショック
直前の08年8月、ベースマネーに
対するマネーサプライの増え方を
示す信用乗数は約9倍。これを単
純にQE2で供給するベースマネ
ー6千億ドルに当てはめると、日
本の名目国内総生産(GDP)に
ほぼ匹敵する5兆4千億ドル(約
450兆円)のマネーサプライの増
加となるが、現実には、FRBが
民間金融機関に供給したマネーが
準備預金となって再びFRBに舞
い一戻り、実体経済に向かわない
という。

米国では1957年の統計開始以来、
最低の伸び率となり、デフレ突入
寸前にあり、デフレに陥らないよ
うに目先のインフレ期待を持たせ
つつ、しかし、不良債権問題を再
燃させる長期金利は上昇させない
-そんな曲芸のような金融政策に
バーナンキ議長は乗り出している
が、そうしたFRBの思惑をよそ
に米国の長期金利が上昇し、日米
の潤沢な流動性の供給により、溢
れるマネーが高い成長が見込める
アジア新興国や国際商品市場に流
れ込みバブルを作る動きにある反
面、欧州の金融機関では信用不安
からドル資金を十分に調達できな
い「ドル不足」が生じているとい
う案配だ。

実体経済を動かすための解決方法
は、既にこのブログでも掲載して
きたから屋上屋を重ねないが「
民党と民主党がチキンレース
」を
興じている絶望的な状況をわたし
(たち)は暗澹たる思いで看てい
る構図が浮かび上がる。






【ヴァイラル・マーケティング】


来年度が注目度の高い国際的なイ
ベントが少ないのに対して、12年
は各国のトップ交代など目白押し
だ。ところで、2009年に米国の若
い地質質学者が大規模な太陽の炎
に含まれるニュートリノ(中性微
子)により地球の核の温度が上昇
していることを発見し天変地異が
起き、12年に地球上の人類は全滅
してしまうという筋書きのローラ
ンド・エメリッヒ監督の
映画「20
12」
は09年に封切りされ約
6.4兆
を売り上げ、史上34位の興行成
績を上げた(『
雲丹と2012+』)。

日本人には理解しづらいが、この
映画は単なるフィクションではな
く、12年12月21日に人類が本当に
滅亡すると信じる者が少なくない。
マヤ暦が示す「人類最後の年」「
12年が人類最後の年」という説の
根拠は、マヤの暦にあるとされ、
紀元前2千年頃が起源とされる中
米の古い文明の古代マヤ人たちは
高度な暦の技術を持っていたと伝
えられ、その長期暦が人類最後の
日を12年12月21日がそれが世界の
動きとは何の関係もないが、危機
を煽り、カネ儲けをたくらむ人が
世界にはたくさんいる。



それを「ヴァイラル・マーケティ
ング
」と呼ぶらしいが、これはウ
イルスが細胞内で自己複製されて
増殖していくように、ネットワー
クを使って商品の認知を広めてい
くというやり方。映画「2012」の
ヴァイラル・マーケティングは巧
妙で、IHC(人類継続研究所)
という架空の存在(=百%ウソ)。
それでもIHCのホームページに
は累積 2,700万件ものアクセスを
獲得したという。そこで、わたし
は? 全く信じてはいないのだ。 

           

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